法人成りしても消費税が2年免税になるとは限らない──それを潰す5つの事情と、設立日から登録する手続
「法人にすれば消費税が2年かからない」
この理解は、条件つきで正しいという程度です。★それを潰す事情が5つあり、そのうちの1つは自分で選んで踏むことになります。
この記事の結論
- 法人は別人格なので基準期間がなく、設立1期目・2期目は原則免税
- ★それを潰す5つ=①インボイス登録 ②資本金1,000万円以上 ③設立2期目の特定期間 ④特定新規設立法人 ⑤課税事業者選択届出書
- ★資本金は「期首」で見る。1期目の途中で増資すると2期目が課税事業者になる
- ★★前事業年度が7か月以下なら、その前事業年度は特定期間にならない。決算期の決め方で③を外せる
- ★設立日から登録したいなら、事業を開始した日の属する課税期間の末日までに登録申請書を出し、「課税期間の初日から登録を受けようとする旨」を記載する
- ★この末日は、土日祝・12月29日〜31日でも延びない
- ★個人側では事業廃止届出書が要る。棚卸資産や事業用資産の法人への引継ぎは個人の課税売上げ
1. なぜ2年免税になるのか
消費税の納税義務は、基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えるかで決まります。
新しく設立した法人には、設立1期目・2期目に基準期間がありません。だから原則として納税義務が免除されます。個人事業のときの売上がいくらであっても、法人は別人格なので引き継ぎません。
これが「法人成りで2年免税」と言われるものの中身です。
2. ★それを潰す5つ
| # | 事情 | 内容 |
|---|---|---|
| ① | ★インボイス登録 | 適格請求書発行事業者は、基準期間の課税売上高や基準期間がない法人の特例にかかわらず、★納税義務が免除されない |
| ② | 資本金1,000万円以上 | 事業年度開始の日の資本金または出資の金額が1,000万円以上なら新設法人として課税事業者 |
| ③ | 設立2期目の特定期間 | 設立1期目に特定期間が生じている場合、その課税売上高等が1,000万円を超えると2期目は課税事業者 |
| ④ | 特定新規設立法人 | 資本金1,000万円未満でも、他の者に50%超支配されるなどの特定要件に該当し、判定対象者の課税売上高が5億円超(★令和6年10月1日以後開始課税期間からは収益の額の合計50億円超も)なら課税事業者 |
| ⑤ | 課税事業者選択届出書 | 自分で出した場合。設備投資の還付を狙う場合など |
★①は「潰される」のではなく「自分で選ぶ」ものです。取引先が本則課税の事業者中心なら、登録しないという選択肢が実質的に取れません。その場合、★法人成りによる消費税のメリットは初年度から消えます。
3. ★資本金は「期首」で見る
②でよくある誤解です。
- 1,000万円未満で設立 → 1期目の途中で増資して1,000万円以上 … ★1期目は免税、2期目は課税事業者
- 1,000万円以上で設立 → 期中に減資 … ★意味がない。その事業年度の期首で判定するため
資本金1,000万円は、設立時に決めたら2年間はそのままと考えるのが安全です。
4. ★★決算期の決め方で、3つ目は外せる
③の特定期間は、原則として前事業年度開始の日以後6か月の期間です。
ただし★前事業年度が7か月以下である場合(短期事業年度)、その前事業年度は特定期間になりません(消法9の2④二)。前々事業年度もないので、設立2期目は特定期間の判定そのものが不要になります。
| 設立日 | 決算期 | 1期目の長さ | 2期目の特定期間 |
|---|---|---|---|
| 4月1日 | 3月31日 | 12か月 | ★あり(4/1〜9/30で判定) |
| 4月1日 | 10月31日 | 7か月 | ★なし(短期事業年度) |
| 11月1日 | 3月31日 | 5か月 | ★なし(短期事業年度) |
★設立日から決算月までを7か月以下にすると、2期目は特定期間の判定が要らなくなります。決算期は設立のときにしか自由に決められないので、ここは後回しにしないほうがいい部分です。
もっとも、★1期目を短くすると、その分だけ免税でいられる月数も減ります。「2期分=24か月」を狙うのか「判定を確実に外す」のかは、初年度の売上見込みで決めることになります。
特定期間の1,000万円判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額でもできます(どちらで判定するかは任意)。★ただし国外事業者は給与基準を使えません(令和6年10月1日以後開始課税期間から)。
5. ★設立日から登録するときの手続
法人設立と同時にインボイスの登録を受けたい場合の話です。
★事業を開始した日の属する課税期間の末日までに、「課税期間の初日から登録を受けようとする旨」を記載した登録申請書を提出すれば、登録簿への登載が行われたときにその課税期間の初日に登録を受けたものとみなされます。
- 設立した法人が免税事業者の場合、令和11年9月30日までの日の属する課税期間中なら、★課税事業者選択届出書は要りません(登録に係る経過措置)。登録申請書に登録希望日ではなく「課税期間の初日から登録を受けようとする旨」を書きます
- 設立した法人が課税事業者(資本金1,000万円以上など)の場合も、同じ特例が使えます
- ★この「末日」は、日曜日・国民の祝日・その他一般の休日・土曜日・12月29日〜31日に当たっても延びません
★登録通知が届くまでには審査の時間がかかります。設立直後から請求書を出すなら、早めに申請してください。通知前の請求書の扱いは、後から登録番号を通知する方法などが認められています。
そして★この経過措置で登録すると、登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までは、登録をやめても免税事業者に戻れません(インボイス登録をやめたい)。
6. ★個人側でやることが残る
法人成りは「法人を作る」だけでは終わりません。
- ★個人事業者としての「事業廃止届出書」の提出が必要です(引き続き個人事業を続ける場合を除く)
- ★★棚卸資産や事業用資産を法人へ引き継ぐと、個人側の課税売上げになります。廃業年の課税売上高が増え、その年を基準期間とする年の判定に影響します
- 個人が登録していた場合、その登録は法人には引き継がれません
事業廃止届出書には★他の届出(課税事業者選択不適用・簡易課税制度選択不適用・課税期間特例選択不適用など)をまとめて消す効果があります。廃業まわりの手続は事業をやめるとき|廃業届・青色の取りやめ・棚卸資産の家事消費にまとめました。
7. 決める順番
- 取引先の内訳を出す。★インボイスを必要とするのは本則課税の課税事業者だけ
- 登録が要るなら、★法人成りの消費税メリットはないものとして損益で判断する(売上いくらから法人化がトク?)
- 登録が要らないなら、資本金を1,000万円未満にし、設立1期目を7か月以下にするかを検討する
- 設立2期目に大きな設備投資があるなら、あえて課税事業者を選ぶ判断もある。ただし★2年継続と3年縛りがセット(1,000万円以上の資産を買うと3年しばられる)
- 個人側の廃業手続と、資産の引継ぎによる課税売上げを忘れない
範囲注記:この記事は法人成りに伴う消費税の取扱いを扱っています。会社設立の登記手続(定款作成・商業登記の代理)は司法書士・行政書士の業務範囲、社会保険の適用判断と加入手続は年金事務所・社会保険労務士の領域です。この記事は2026年8月時点の制度に基づきます。
まとめ
- 法人は別人格。基準期間がないので設立1期目・2期目は原則免税
- ★潰す5つ=インボイス登録/資本金1,000万円/2期目の特定期間/特定新規設立法人/課税事業者選択
- ★資本金は期首判定。期中増資は2期目から効き、期中減資は意味がない
- ★★前事業年度が7か月以下なら特定期間にならない。決算期の決め方で外せる
- 特定期間は給与等支払額でも判定できる(国外事業者を除く)
- ★設立日から登録するなら、その課税期間の末日までに「初日から登録を受けようとする旨」を記載して申請
- ★この末日は休日でも延びない
- ★個人側は事業廃止届出書。資産の引継ぎは個人の課税売上げになる
- 消費税法9条1項(納税義務の免除)/9条の2(特定期間の課税売上高)/同4項2号(短期事業年度)/12条の2(新設法人)/12条の3(特定新規設立法人)/57条2項(新設法人に該当する旨の届出)
- 国税庁タックスアンサー No.6503(基準期間がない法人の納税義務の免除の特例。適格請求書発行事業者は納税義務が免除されない旨、期首の資本金で判定する旨、設立1期目の途中の増資により設立2期目が課税事業者となる旨、令和6年10月1日以後の50億円基準)/No.6501(納税義務の免除。国外事業者は給与等支払額による判定ができない旨)
- 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問11(新たに設立された法人等の登録時期の特例。令和7年4月改訂。課税期間の初日から登録を受けようとする旨の記載、末日が休日等でも延長されない旨、個人事業者が法人を設立する場合の事業廃止届出書)/問7(免税事業者の登録に係る経過措置)
- 消費税法施行令70条の4、消費税法基本通達1-4-7・1-4-8(新たに設立された法人等の登録時期の特例)/消費税法基本通達1-4-15(事業廃止届出書の一体的な取扱い)
- ※2026年時点の制度に基づく記事です
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