電子帳簿保存法、個人事業主が「最低限やること」はこれで全部|義務は電子取引だけ
「電子帳簿保存法」を調べると、電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存という似た言葉が3つ出てきて、どれが義務でどれが任意なのか、自分の規模だと何が免除されるのかが分からなくなります。情報が多すぎて、結局「何をすればいいのか」が消えてしまいます。よくある入口の詰まりです。
この記事は、そのモヤモヤを一枚の地図にします。結論だけ知りたい人向けの噛み砕き版はこちらの3分記事、この記事は要件まで押さえておきたい人向けのリファレンスです。
この記事の結論
– 電帳法は3つの制度の総称。義務は「電子取引データ保存」だけ、残り2つ(電子帳簿等保存・スキャナ保存)は任意
– 電子取引の要件は真実性と可視性の2つ。個人事業主は真実性を事務処理規程(国税庁のサンプル無料)で満たすのが現実的
– 基準期間の売上が5,000万円以下なら、検索機能の確保が不要(ダウンロードの求めに応じることが条件)
– システムが間に合わなくても、「相当の理由」+データ提示で当面はセーフ
まず全体像:3つの制度、義務は1つだけ
電帳法という一つの名前の下に、性質の違う3制度が入っています。義務は③だけです。
| 制度 | 何の話か | 義務/任意 |
|---|---|---|
| ① 電子帳簿等保存 | 会計ソフトで作った帳簿・決算書をデータのまま保存する | 任意 |
| ② スキャナ保存 | 紙で受け取った請求書・領収書をスキャン/撮影して電子保存する | 任意 |
| ③ 電子取引データ保存 | 電子で受け取った請求書・領収書をデータのまま保存する | 義務 |
①②は「紙でやりたい人は紙のままでいい」という任意制度です。やらなくても罰則はありません。義務は③の電子取引データ保存だけです。だから、まず向き合うべきは③一本です。
義務の中身:電子取引データ保存の2要件
③には「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの要件があります。
真実性の確保(改ざんされていないこと)
次のいずれか一つを満たせばOKです。
- タイムスタンプが付与されたデータを受け取る
- 訂正・削除の履歴が残る(または訂正削除できない)システムで授受・保存する
- 改ざん防止の事務処理規程を定めて運用する
個人事業主にいちばん現実的なのは3の事務処理規程。国税庁がサンプルを無料で公開していて、それを自分用に整えて運用すればよく、費用ゼロで真実性の要件を満たせます。
可視性の確保(すぐ見られること)
- ディスプレイ・プリンタ等で速やかに出力できる状態にしておく
- 検索機能(取引年月日・取引金額・取引先で検索できる)を確保する
検索機能は、ファイル名を日付_取引先_金額で統一しておけば、フォルダ検索で実質的に満たせます。会計ソフトに取り込めば自動で検索対象になります。
規模による緩和:売上5,000万円以下なら検索要件が不要
ここが個人事業主にとって大きい緩和です。基準期間(その年の2年前)の課税売上高が5,000万円以下なら、税務調査等の際にデータのダウンロードの求めに応じることを条件に、検索機能の確保が不要になります。
開業まもない多くの個人事業主はこの範囲に収まるので、「検索システムを整えなきゃ」と気負う必要はありません。元データをきちんと残し、求められたら出せます。それで足ります。
間に合わないとき:2024年からの猶予措置
システム対応の「相当の理由」が認められ、かつ税務調査等で
- データのダウンロードの求めに応じられる
- 出力書面(整然・明瞭)の提示・提出に応じられる
この2つに応じられれば、真実性・可視性の要件を完全に満たしていなくてもデータ保存だけでセーフです。ただし繰り返しの通り、データ自体を残していることが絶対条件です。「印刷して原本データを削除」は、この措置を使ってもアウトになります。
任意の2制度は「やると得することがある」だけ
- ① 電子帳簿等保存:一定の要件を満たして帳簿を電子保存し届け出ると、青色申告特別控除の65万円の要件の一つを満たせます(e-Taxでの申告でも可)。会計ソフトを使っていれば自然とクリアしやすい部分です。
- ② スキャナ保存:紙のレシートを撮影して原本を捨てたいときに使う制度。要件(タイムスタンプ等)があるので、こだわりがなければ紙のまま保管で十分です。
どちらも「やらないと罰則」ではなく、「やると身軽になる/控除に効く」任意オプションと捉えてください。
最低限やることチェックリスト
- [ ] 電子で受け取った請求書・領収書を、専用フォルダにデータで保存している
- [ ] ファイル名を日付_取引先_金額で統一している(または会計ソフトに取り込んでいる)
- [ ] 改ざん防止の事務処理規程を用意した(国税庁サンプルを流用)
- [ ] 紙で受け取ったものは紙のまま保管している
- [ ] 原本データを削除していない
この5つが埋まっていれば、個人事業主として電帳法の「最低限」はクリアです。
よくある質問(FAQ)
Q. 事務処理規程って必ず要る?
真実性の要件を「規程」で満たす場合に必要です。タイムスタンプ機能や訂正削除履歴が残る会計ソフト・クラウドで受け渡し・保存しているなら、規程がなくても真実性を満たせます。迷ったら、無料の国税庁サンプルで規程を1枚用意しておくと安心です。
Q. 保存期間は何年?
帳簿書類と同じく、原則7年間(「欠損金が出た年は10年」という話は法人のルールで、個人事業主にはあてはまりません)。電子取引データもこの期間、消さずに保存します。
Q. LINEやチャットで受け取った請求書は?
それも「電子取引」です。スクリーンショットやファイルをデータで保存しておきましょう。
まとめ
- 電帳法の義務は「電子取引データ保存」だけ。ほか2つ(電子帳簿等保存・スキャナ保存)は任意
- 電子取引の要件は真実性(事務処理規程でOK・無料)と可視性(検索)
- 売上5,000万円以下なら検索要件が不要
- 間に合わなくても「相当の理由」+データ提示で当面セーフ。ただしデータを消さないことが絶対
- 会計ソフトを使えば、記帳・保存・検索・65万円控除の要件まで一気にカバーできます
この記事の主な根拠(出典)
- 電子帳簿保存法4条・5条(電子帳簿等保存・スキャナ保存)、7条(電子取引データ保存)
- 電子帳簿保存法施行規則2条〜4条(各制度の保存要件・検索要件の緩和・猶予措置)
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答」「事務処理規程(サンプル)」
- 租税特別措置法25条の2・国税庁タックスアンサー No.2072(青色申告特別控除)
- ※出典の各ページは2026年8月7日に確認しました。制度は改正されることがあります
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