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更新日 2026-07-25 起業時の知識第28回

電子帳簿保存法、個人事業主が“最低限やること”はこれで全部|義務は電子取引だけ

「電子帳簿保存法」を調べると、電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存という似た言葉が3つ出てきて、どれが義務でどれが任意なのか、自分の規模だと何が免除されるのかが分からなくなります。情報が多すぎて、結局「何をすればいいのか」が消えてしまう——よくある入口の詰まりです。

この記事は、そのモヤモヤを一枚の地図にします。結論だけ知りたい人向けの噛み砕き版はこちらの3分記事、この記事は要件まで押さえておきたい人向けのリファレンスです。

この記事の結論
– 電帳法は3つの制度の総称。義務は「電子取引データ保存」だけ、残り2つ(電子帳簿等保存・スキャナ保存)は任意
– 電子取引の要件は真実性可視性の2つ。個人事業主は真実性を事務処理規程(国税庁のサンプル無料)で満たすのが現実的
– 基準期間の売上が5,000万円以下なら、検索機能の確保が不要(ダウンロードの求めに応じることが条件)
– システムが間に合わなくても、「相当の理由」+データ提示で当面はセーフ

まず全体像:3つの制度、義務は1つだけ

電帳法という一つの名前の下に、性質の違う3制度が入っています。義務なのは③だけです。

制度 何の話か 義務/任意
① 電子帳簿等保存 会計ソフトで作った帳簿・決算書をデータのまま保存する 任意
② スキャナ保存 紙で受け取った請求書・領収書をスキャン/撮影して電子保存する 任意
③ 電子取引データ保存 電子で受け取った請求書・領収書をデータのまま保存する 義務

①②は「紙でやりたい人は紙のままでいい」という任意制度。やらなくても罰則はありません。義務は③の電子取引データ保存だけ。だから、まず向き合うべきは③一本です。

義務の中身:電子取引データ保存の2要件

③には「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの要件があります。

真実性の確保(改ざんされていないこと)

次のいずれか一つを満たせばOKです。

  1. タイムスタンプが付与されたデータを受け取る
  2. 訂正・削除の履歴が残る(または訂正削除できない)システムで授受・保存する
  3. 改ざん防止の事務処理規程を定めて運用する

個人事業主にいちばん現実的なのは3の事務処理規程。国税庁がサンプルを無料で公開していて、それを自分用に整えて運用すればよく、費用ゼロで真実性の要件を満たせます。

可視性の確保(すぐ見られること)

  • ディスプレイ・プリンタ等で速やかに出力できる状態にしておく
  • 検索機能(取引年月日・取引金額・取引先で検索できる)を確保する

検索機能は、ファイル名を日付_取引先_金額で統一しておけば、フォルダ検索で実質的に満たせます。会計ソフトに取り込めば自動で検索対象になります。

規模による緩和:売上5,000万円以下なら検索要件が不要

ここが個人事業主にとって大きい緩和です。基準期間(その年の2年前)の課税売上高が5,000万円以下なら、税務調査等の際にデータのダウンロードの求めに応じることを条件に、検索機能の確保が不要になります。

開業まもない多くの個人事業主はこの範囲に収まるので、「検索システムを整えなきゃ」と気負う必要はありません。元データをきちんと残し、求められたら出せる——それで足ります。

間に合わないとき:2024年からの猶予措置

システム対応の「相当の理由」が認められ、かつ税務調査等で

  1. データのダウンロードの求めに応じられる
  2. 出力書面(整然・明瞭)の提示・提出に応じられる

この2つに応じられれば、真実性・可視性の要件を完全に満たしていなくてもデータ保存だけでセーフとされます。ただし繰り返しの通り、データ自体を残していることが絶対条件です。「印刷して原本データを削除」は、この措置を使ってもアウトになります。

任意の2制度は「やると得することがある」だけ

  • ① 電子帳簿等保存:一定の要件を満たして帳簿を電子保存し届け出ると、青色申告特別控除の65万円の要件の一つを満たせます(e-Taxでの申告でも可)。会計ソフトを使っていれば自然とクリアしやすい部分です。
  • ② スキャナ保存:紙のレシートを撮影して原本を捨てたいときに使う制度。要件(タイムスタンプ等)があるので、こだわりがなければ紙のまま保管で十分です。

どちらも「やらないと罰則」ではなく、「やると身軽になる/控除に効く」任意オプションと捉えてください。

最低限やることチェックリスト

  • [ ] 電子で受け取った請求書・領収書を、専用フォルダにデータで保存している
  • [ ] ファイル名を日付_取引先_金額で統一している(または会計ソフトに取り込んでいる)
  • [ ] 改ざん防止の事務処理規程を用意した(国税庁サンプルを流用)
  • [ ] 紙で受け取ったものは紙のまま保管している
  • [ ] 原本データを削除していない

この5つが埋まっていれば、個人事業主として電帳法の“最低限”はクリアです。

よくある質問(FAQ)

Q. 事務処理規程って必ず要る?
真実性の要件を「規程」で満たす場合に必要です。タイムスタンプ機能や訂正削除履歴が残る会計ソフト・クラウドで受け渡し・保存しているなら、規程がなくても真実性を満たせます。迷ったら、無料の国税庁サンプルで規程を1枚用意しておくと安心です。

Q. 保存期間は何年?
帳簿書類と同じく、原則7年間(青色で欠損金がある年などは最長10年)。電子取引データもこの期間、消さずに保存します。

Q. LINEやチャットで受け取った請求書は?
それも「電子取引」です。スクリーンショットやファイルをデータで保存しておきましょう。

まとめ

  • 電帳法の義務は「電子取引データ保存」だけ。ほか2つ(電子帳簿等保存・スキャナ保存)は任意
  • 電子取引の要件は真実性(事務処理規程でOK・無料)可視性(検索)
  • 売上5,000万円以下なら検索要件が不要
  • 間に合わなくても「相当の理由」+データ提示で当面セーフ。ただしデータを消さないことが絶対
  • 会計ソフトを使えば、記帳・保存・検索・65万円控除の要件まで一気にカバーできる
この記事の主な根拠(出典)

  • 電子帳簿保存法4条・5条(電子帳簿等保存・スキャナ保存)、7条(電子取引データ保存)
  • 電子帳簿保存法施行規則2条〜4条(各制度の保存要件・検索要件の緩和・猶予措置)
  • 国税庁「電子帳簿保存法一問一答」「事務処理規程(サンプル)」
  • 租税特別措置法25条の2・国税庁タックスアンサー No.2072(青色申告特別控除)
  • ※2026年時点の制度に基づく

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