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更新日 2026-07-25 起業時の知識第30回

家賃・電気・ネット・スマホは“何割”経費に?家事按分の割合をゼロから決める手順

自宅の一室で仕事を始めると、必ずぶつかるのが家事按分。家賃・電気・ネット・スマホは「仕事にも生活にも使う」ので、事業ぶんだけを経費にします。でも、いざやろうとすると手が止まる。「面積で出すの?時間で出すの?」「何%なら税務署に怒られないの?」——ここが最大の不安です。

先に安心してほしいのは、開業したてに“自分のルール”を一度決めてしまえば、翌年からはコピペで済むということ。この記事は、そのルールをゼロから作るための、そのままなぞれる手順です。

この記事の結論
– 割合を出す物差しは主に2つ。面積按分(家賃など場所の費用)と時間按分(電気・通信など使用量の費用)
– 「正解の割合」は制度上存在しない。あるのは「合理的な根拠で説明できるか」だけ(施行令96条)
– 通信費は仕事用の回線・番号を分けると按分不要になり、いちばん強い
– 手順は4つ:測る → 割合を出す → 根拠メモを残す → 会計ソフトに設定
– 迷ったら控えめに。説明できない高い割合より、説明できる妥当な割合

ℹ️ この記事は「開業時にルールをゼロから決める」ための実践ガイドです。確定申告のときの入力の仕方は家事按分の“割合の決め方”入門、税務調査で説明する深掘りは“盛りすぎ否認”を避ける割合の決め方にまとめています。

2つの物差し:面積按分と時間按分

家事按分の割合は、その支出の性質に合った物差しで出します。まずはこの2つを押さえれば十分です。

  • 面積按分……「場所」にかかる費用に使う。仕事に使う床面積 ÷ 家全体の床面積
  • 時間按分……「使用量」にかかる費用に使う。事業で使う時間 ÷ 全体の時間

費目ごとに、どちらが自然かを整理すると次のようになります。

費目 向いている物差し 割合の出し方 ざっくりの目安※
家賃・地代 面積按分 仕事部屋の床面積 ÷ 全体の床面積 20〜30%
電気代 時間按分 業務時間 ÷ 24時間(実態で調整) 20〜40%
水道・ガス 業務実態 在宅仕事なら低め、業務で使うなら実態で 0〜20%
ネット・スマホ 時間按分/回線分け 平日の業務利用時間の割合 30〜60%
車(ガソリン・保険等) 走行距離按分 事業の走行距離 ÷ 総走行距離 実態による

※目安はあくまで“よくある落としどころ”。自分の働き方の実態で説明できる数字が正解で、目安に合わせるものではありません。

そのままなぞれる4ステップ

ステップ1:測る

  • 面積:間取り図を用意し、仕事部屋(またはデスク+作業スペース)の面積と、家全体の面積をメモする
  • 時間:平日の平均的な1日の業務時間をメモする(例:8時間)
  • 距離:車を使うなら、数週間だけ運転日報(日付・目的・距離)をつけて平均を出す

ステップ2:割合を出す

計算例①(家賃):60㎡の賃貸のうち、12㎡を仕事部屋にしている
→ 12 ÷ 60 = 20%。家賃10万円なら、月2万円が経費。

計算例②(電気代):1日の業務時間が8時間、部屋の使用実態から3割程度
→ 電気代1万円なら、30%の3,000円を目安に。エアコンや照明を仕事中つけっぱなしなら実態で上げてよい。

計算例③(スマホ):平日の業務利用がだいたい半分
50%。ただし後述のとおり、回線を分ければこの議論は不要。

ステップ3:根拠メモを残す

割合そのものより、「なぜその割合か」を後で説明できる状態が大切です。次を1枚ずつ残しておきましょう(提出義務はなく、手元保管でOK)。

  • 間取り図に面積を書き込んだもの(面積按分の根拠)
  • 按分計算メモ:「家賃10万円 × 事業割合20% = 2万円」を費目ごとに1行
  • 業務時間・走行距離の記録(数週間分でも“標本”として有効)

ステップ4:会計ソフトに設定する

freeeやマネーフォワードには家事按分の自動計算機能があります。費目ごとに割合を登録しておけば、毎月の支払いを入れるだけで事業ぶんだけが自動で経費計上されます。最初に一度設定すれば、あとは放っておいてOKです。

「何%なら怒られない?」への答え

結論から言うと、「この割合なら絶対安全」という数字は制度上ありません。税務署が見るのは割合の高低そのものではなく、その割合に合理的な根拠があるかです。

だから、

  • 根拠がある25%は通り、根拠がない50%は否認され得る
  • 迷ったら控えめに。説明できない高い割合を攻めるより、説明できる妥当な割合のほうが強い

これが実務の鉄則です。「怒られない割合」を探すより、「説明できる割合」を作る、と発想を変えると一気にラクになります。

いちばん強い一手:通信費は回線を分ける

スマホ・ネットの按分でいつも悩むなら、仕事用の回線・番号・契約を分けてしまうのが最強です。分ければ按分の議論そのものが消え、全額を通信費として経費にできます。格安SIMのサブ回線でも、事業用クレジットカードで支払えば経費と資金の流れも明確。開業のタイミングは、こうした「分ける」仕組みを作る絶好の機会です。

よくある質問(FAQ)

Q. 割合は毎年変えないといけない?
働き方が変わらなければ、合理的に決めた割合を継続して構いません。引っ越し・在宅比率の変化・車の使い方が変わったときだけ見直します。

Q. 持ち家だと家賃がないけど何を按分する?
建物の減価償却費・固定資産税・火災保険・住宅ローンの利息を面積比で按分します(ローンの元本はNG)。ただし住宅ローン控除に影響することがあるので、割合が大きい場合は要確認です。

Q. ワンルームで仕事部屋がない。面積按分できる?
できます。「デスク+作業スペース」が占める面積で出すか、この場合は時間按分(1日のうち業務に使う時間の割合)で説明する方法もあります。

Q. 白色申告でも家事按分できる?
できます。考え方は青色と同じで、業務に必要な部分を合理的に区分できることが条件です(施行令96条)。

まとめ

  • 物差しは面積按分(場所)と時間按分(使用量)の2つ
  • 手順は測る→割合を出す→根拠メモ→会計ソフトに設定の4つ
  • 「正解の割合」はない。あるのは説明できる根拠
  • 通信費は回線を分ければ按分不要でいちばん強い
  • 迷ったら控えめに。作業は開業初年度の1回、翌年からは使い回せる
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法45条1項1号(家事上の経費は必要経費に算入しない)
  • 所得税法施行令96条(家事関連費のうち必要経費に算入できる部分=業務の遂行上必要な部分を明らかに区分できるもの)
  • 国税庁タックスアンサー No.2210(やさしい必要経費の知識)
  • ※2026年時点の制度に基づく

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