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更新日 2026-07-25 起業時の知識第41回

電子取引の「検索要件」は個人事業主はどこまで?無料で満たす3ステップ(命名ルール+規程)

「電子取引のデータはデータで保存」——ここまでは分かった。でも調べ進めるとタイムスタンプ訂正削除履歴が残るシステム索引簿検索要件と専門用語が並び、専用サービスの広告ばかり出てくる。結局いくらかかるのか分からない。

結論から言うと、個人事業主なら追加費用ゼロで要件を満たせます。 必要なのは、ファイル名のルールを1つ決めること、フォルダを1つ作ること、国税庁が配っている規程を1枚保存すること。それだけです。

この記事では、要件の全体像を整理したうえで、無料の最短ルートを手順にします。

この記事の結論
– 要件は「真実性の確保」と「可視性の確保(検索・見読)」の2系統だけ
– 真実性は国税庁のサンプル事務処理規程を1枚置くで満たせる(タイムスタンプ不要)
– 検索要件はファイル名を「日付_取引先_金額」に統一+専用フォルダで実質クリア
判定期間(個人は前々年)の売上高が5,000万円以下で、求めに応じてデータを渡せるなら検索機能そのものが不要

そもそも何を保存する話なのか

対象は電子取引、つまり最初からデータでやり取りした取引情報です。紙でもらったレシートの話ではありません。

これは電子取引(データ保存が必要) これは電子取引ではない
メール添付のPDF請求書・領収書 店で受け取った紙のレシート
Web上からダウンロードした領収書(Amazon・楽天・ASPなど) 郵送されてきた紙の請求書
ECサイトの購入明細・注文確認メール 手書きの領収書
クレジットカードやキャッシュレス決済のWeb・アプリ明細 紙の契約書
電子契約サービスで締結した契約書

紙で受け取ったものをスキャンしてデータにするのはスキャナ保存という別の(任意の)制度です。混ざりやすいので、スキャンしたら紙は捨てていい?で切り分けを確認してください。制度全体の位置づけは電子取引データの保存とは、個人事業主の最低ラインは電帳法・個人事業主の最低限にまとめています。

なお、紙に印刷して保存するだけでは要件を満たしません。ここが一番よく誤解されるところです。データはデータのまま残す。紙はあくまで自分用の控えです。

要件は2系統しかない

条文を並べると複雑に見えますが、求められているのは「あとから書き換えていないと言えること(真実性)」「求められたときにすぐ出せること(可視性)」の2つです。

系統 求められること 無料で満たす方法
真実性の確保 タイムスタンプ/訂正削除の履歴が残るシステム/訂正削除できないシステム/事務処理規程を定めて運用のいずれか 国税庁のサンプル規程を1枚用意して守る
可視性(見読) ディスプレイ・プリンタで速やかに出力できる。市販ソフトなら操作説明書を備え付け 手持ちのPC・モニタ・プリンタでOK
可視性(検索) ①取引年月日・取引金額・取引先で検索 ②日付・金額の範囲指定 ③2以上の項目の組合せ ファイル名の統一+フォルダ集約(+後述の緩和)

真実性の4択のうち、費用がかかるのは上の3つだけです。4つ目の「事務処理規程」は自分で定めればよく、しかも国税庁がサンプル(Word)を公開しています。個人事業主が選ぶべきはこれです。

検索要件は、多くの人が「不要」になる

ここが一番大事な緩和です。

  • 税務職員のダウンロードの求めに応じられるなら → ②範囲指定と③組合せは不要(①だけでよい)
  • さらに、判定期間の売上高が5,000万円以下で、ダウンロードの求めに応じられるなら → 検索要件のすべてが不要
  • 売上が5,000万円を超えていても、出力書面を取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理して提示・提出できるなら → 同じく検索要件のすべてが不要

判定期間は、個人事業主ならその年の前々年(1月1日〜12月31日)の売上高です。売上5,000万円は決して低いラインではないので、多くの個人事業主は検索機能そのものが不要になります。

ただし誤解しないでください。検索要件が不要になっても、データを保存すること自体と真実性の確保(規程など)は必要です。「5,000万円以下だから何もしなくていい」ではありません。

さらに、保存要件に従えない相当の理由が所轄税務署長に認められる場合には、ダウンロードと出力書面の提示に応じられれば保存要件に従わなくてよい、という猶予措置もあります(電子帳簿保存法施行規則4条3項)。とはいえこれは救済であって、狙って使うものではありません。下の3ステップなら無料なので、素直に整えてしまうほうが早いです。

無料の最短ルート:3ステップ

ステップ1:ファイル名を「日付_取引先_金額」で統一する

これだけで、OSの検索窓が索引簿の代わりになります。

元のファイル名 変更後
invoice_20260710.pdf 20260710_○○商事_33000.pdf
receipt (3).pdf 20260712_アマゾン_4980.pdf
領収書.pdf 20260715_△△印刷_12100.pdf

ルールは3つだけ決めておきます。

  1. 日付は8桁20260710)。ハイフンなしにすると範囲での並び替えが効きます
  2. 金額は税込・カンマなし33000
  3. 取引先は表記を固定(「アマゾン」「Amazon」を混ぜない)

同じ日・同じ取引先・同じ金額が複数ある場合は末尾に _1 _2 を足します。

ステップ2:専用フォルダに集約する

2026_電子取引 のように年ごとのフォルダを1つ作り、その中に全部入れます。取引先別・月別に細かく分けたい気持ちは分かりますが、階層を深くすると入れ忘れが増えます。フラットに放り込むほうが続きます。

クラウドストレージ(Dropbox・Google Drive等)に置いても問題ありません。むしろバックアップになるので安全です。保存期間は原則7年なので、消えない場所を選んでください。

ステップ3:事務処理規程を1枚用意する

国税庁のサイトに「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」のサンプルが法人用・個人事業者用それぞれ公開されています。個人事業者用は1ページ程度のシンプルなものです。

やることは、ダウンロードして自分の名前と適用開始日を入れ、印刷またはPDFで保存しておくだけ。そして中身(訂正・削除は原則しない、必要な場合は記録を残す等)を実際に守ります。

これで真実性の確保はクリアです。タイムスタンプも有料サービスも要りません。

運用を続けるコツ

要件を満たす仕組みより、続く仕組みのほうが難しいです。実際につまずくのはここです。

  • 落とすタイミングを固定する:Amazonやサブスクの領収書は自動では手元に来ません。「毎月1日にカード明細を見ながらまとめて落とす」など、日付とセットで決める
  • メールは添付を取り出す:メール本文に取引情報がある場合はメール自体が保存対象になりますが、実務では添付PDFをフォルダに移し、本文が必要ならPDF化して同じフォルダへが安全です。メールボックスの中だけに置いておくと、退会や乗り換えで消えます
  • 会計ソフトの証憑添付を使う:多くの会計ソフトは仕訳にファイルを添付できます。電帳法対応をうたうソフトなら検索要件も満たせるので、フォルダ運用を卒業したくなったら移行すればいい(会計ソフト比較
  • 紙とデータの二重管理をしない:同じ取引をフォルダと紙の両方で管理すると必ず片方が抜けます。紙はレシート保管のコツ、データはこの記事のフォルダ、と入口を分けてください

よくある質問(FAQ)

Q. 全部印刷してファイリングしてはいけないのですか?
印刷して手元に置くのは自由ですが、それだけでは要件を満たしません。電子取引はデータでの保存が必要です。逆に、データを保存してあれば紙は不要です。

Q. スクリーンショットでもいいですか?
ECサイトの購入履歴画面などをダウンロードできない場合、表示画面をスクリーンショットして保存する方法も認められています。取引年月日・取引先・金額が読み取れる状態で保存してください。

Q. 判定期間がない開業初年度はどうなりますか?
個人事業主の判定期間は前々年なので、開業して間もない年は判定期間の売上高がありません。取扱いは国税庁の「電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)」に示されているので、そちらで確認してください。いずれにしても、上の3ステップを実行しておけば売上規模に関係なく成立します

Q. 要件を守れていないと青色申告が取り消されますか?
国税庁は、要件を満たしていないことのみを理由に直ちに青色申告の承認を取り消すことはしない旨を示しています。ただし、そもそも証憑がなければ経費の裏付けがないという別の問題が残ります。取消しの心配より、経費が否認されるリスクを気にすべきです。

Q. 索引簿(Excelの一覧表)を作る方式もあると聞きました。
検索要件を満たす手段としてExcelの索引簿を使う方法もあります。ただしファイル名を統一すればOSの検索で足りるので、二重管理になる索引簿はおすすめしません。作るなら記帳と一体化させるべきで、それは結局会計ソフトの役割です。

Q. 保存期間は何年ですか?
原則7年です。フォルダを年単位で作っておけば、8年目のフォルダを削除するだけで管理できます。

まとめ

  • 対象は最初からデータでやり取りしたもの。紙のレシートはスキャナ保存の話
  • 要件は真実性可視性(見読・検索)の2系統だけ
  • 真実性は国税庁のサンプル事務処理規程1枚で足りる。タイムスタンプ不要
  • 検索要件は「日付_取引先_金額」の命名+年別フォルダ売上5,000万円以下なら検索機能そのものが不要
  • ただしデータの保存自体と真実性の確保は免除されない。落とす日を決めて習慣にする
この記事の主な根拠(出典)

  • 電子帳簿保存法7条(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
  • 電子帳簿保存法施行規則4条1項(真実性の確保/タイムスタンプ・訂正削除履歴・事務処理規程)
  • 電子帳簿保存法施行規則4条3項(猶予措置/相当の理由がある場合)
  • 電子帳簿保存法施行規則2条6項(検索要件および売上高5,000万円以下等の緩和)
  • 国税庁「電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)」
  • 国税庁「参考資料(各種規程等のサンプル)」電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(個人事業者用)
  • ※2026年時点の制度に基づく

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👉 電子取引データの保存とは?何がデータ保存の対象になるか
👉 電子帳簿保存法、個人事業主の最低限はここまで
👉 スキャンしたら紙のレシートは捨てていい?
👉 領収書をなくした経費、出金伝票で残す方法
👉 レシート・領収書の保管を仕組みにするコツ

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