ホーム起業時の知識 › 持ち家でも家賃みたいに経…
更新日 2026-09-07 起業時の知識

持ち家でも家賃みたいに経費にできる?持ち家の家事按分と住宅ローン控除の「両取り」注意点

家事按分の記事は、たいてい賃貸を前提に書かれています。「家賃の30%を経費に」という説明です。

では持ち家はどうなるのか。家賃を払っていないから、経費はゼロなのか。

そんなことはありません。ただし賃貸とは考え方がまったく違いますし、住宅ローン控除を使っている人は、按分を増やすと損をすることがあります。住宅ローン控除との兼ね合いが、持ち家いちばんの落とし穴です。

この記事の結論
– 持ち家でも建物の減価償却費・借入金の利息・固定資産税・火災保険料などは按分して経費にできる
ローンの元本返済は経費にならない。経費になるのは利息部分だけ
– 住宅ローン控除は居住用割合で按分される。事業用が10%以下なら控除は満額
事業用が50%を超えると、住宅ローン控除そのものが使えない
– 按分を増やすと経費は増えるが控除は減る。税率が低い人ほど、増やすと損になりやすい
– 控除の期間が終わったら、按分を見直す価値がある

持ち家で按分できるもの・できないもの

まず全体像です。賃貸の「家賃」に相当するものが、持ち家では複数の費目に分かれます。

費目 按分して経費に 補足
建物の減価償却費 持ち家で最も大きい。土地は対象外
借入金の利息 事業使用割合に対応する部分
借入金の元本返済 × 借金を返しているだけ。経費ではない
固定資産税・都市計画税 通知書の金額を按分
火災保険料・地震保険料 事業用部分は経費、居住用部分は地震保険料控除へ
マンションの管理費 按分して経費
修繕積立金 取扱いが分かれる。金額が大きい場合は個別に確認
修繕費 事業スペースだけの工事なら全額のことも
水道光熱費・通信費 賃貸と同じ考え方
土地の減価償却 × 土地は減価しない

元本と利息を分ける。ここだけは間違えないでください。返済額が月10万円で、そのうち利息が2万円なら、按分の対象は2万円のほうです。返済予定表(償還予定表)に内訳が載っています。

経費の線引き全体は経費にできるもの・できないもの一覧にまとめています。

建物の減価償却の出し方

持ち家の按分で金額が一番大きく、そして一番ややこしいのがここです。

手順は次のとおりです。

① 建物部分の取得価額を出す
売買契約書に土地と建物の内訳が書いてあればそれを使います。書いていない場合は、消費税額から逆算する方法(消費税は建物にだけかかる)や、固定資産税評価額の比で按分する方法があります。

② 住んでいた期間の減価を差し引く
ここが見落とされがちです。買ってすぐ事業に使い始めた場合を除き、それまで住んでいた期間の分だけ価値が減ったものとして計算します(所得税法施行令135条)。

計算は、法定耐用年数を1.5倍した年数の旧定額法で行います。木造住宅なら22年 × 1.5 = 33年です。

③ 事業に使い始めた後は、通常の耐用年数で償却する

具体例で見ます。

項目 金額・条件
建物の取得価額(木造住宅) 2,000万円
住んでいた期間 5年
非業務期間の減価(2,000万 × 0.9 × 0.031 × 5年) 279万円
事業に使い始めた時点の未償却残高 1,721万円
事業供用後の償却費(2,000万 × 0.046) 年92万円
事業使用割合10%なら経費 年9万2,000円

年に9万円。家賃の按分に比べると地味に見えますが、これが13年、22年と続きます。しかも現金は1円も出ていきません。

減価償却の基本的な考え方は10万円のパソコンは一括経費?減価償却?も参考にしてください。

本題:住宅ローン控除との関係

ここからが持ち家特有の話です。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、居住用の家に対する制度です。事業に使っている部分は居住用ではないので、控除の対象から外れます。

事業使用割合 住宅ローン控除
10%以下 満額使える(居住用割合が90%以上なら全部を居住用として扱ってよい)
10%超〜50%以下 居住用割合の分だけに減る(事業30%なら控除は70%)
50%超 控除そのものが使えない(床面積の2分の1以上が専ら居住用であることが要件)

3つめは特に重要です。「経費を増やしたい」と考えて事業用スペースを広く取ると、住宅ローン控除がまるごと消えます。年10万円を超える控除が消えるのですから、按分で取り戻せる範囲を超えています。

そして1つめ、10%以下なら満額というルール。これが実務上の分岐点になります。

家の名義が配偶者や親でも、この表はそのまま効いてきます。名義人がその家で住宅ローン控除を受けているなら、あなたが事業に使っている部分は名義人の控除からも外れるからです。事業用が10%以下なら、名義人の控除は満額のままです。10%を超えると名義人の控除はその分だけ減り、50%を超えると名義人の控除そのものが使えなくなります(租税特別措置法施行令26条)。自分の経費を増やしたつもりが、家族の控除を削っていた、という取り違えが起きやすいところです。

数字で比べる:按分10%と30%、どちらが得か

同じ家で、按分割合だけを変えて比べます。

前提:按分できる年間費用の合計が136万円(減価償却92万+ローン利息30万+固定資産税12万+火災保険2万)。住宅ローンの年末残高2,500万円、控除率0.7%で年17万5,000円の控除。

事業10% 事業30%
経費になる金額 13.6万円 40.8万円 +27.2万円
住宅ローン控除 17.5万円(満額) 12.25万円 −5.25万円

経費が27.2万円増えます。この経費が減らしてくれる税金は、その人の税率次第です。

所得税率 経費増による節税(住民税10%込み) 控除の減少 差引
5% 27.2万 × 15% = 4.08万円 −5.25万円 −1.17万円(損)
10% 27.2万 × 20% = 5.44万円 −5.25万円 +0.19万円(ほぼ互角)
20% 27.2万 × 30% = 8.16万円 −5.25万円 +2.91万円(得)
33% 27.2万 × 43% = 11.7万円 −5.25万円 +6.45万円(得)

税率が低い人ほど、按分を増やすと損になります。

理由は単純です。住宅ローン控除は税額から直接引く制度(税額控除)で、経費は所得を減らすだけ(所得控除に近い効き方)だからです。所得税率5%の人にとって、1万円の経費は1,500円の節税になるだけです。一方、控除は1万円がそのまま1万円です。

所得控除と税額控除の違いは入れ忘れると損する所得控除 最終チェックリストでも整理しています。

判断の順番

以上をふまえると、順番はこうなります。

  1. まず「事業10%以内」で説明がつくかを考えます。つくなら、控除は満額のまま経費も取れます
  2. 10%を超えるなら、上の表で試算します。税率が20%以上なら按分を増やす価値があります
  3. 50%は超えません。控除が全部消えます
  4. 控除の期間(13年など)が終わったら、按分を見直す。ここからは経費を増やすほうが有利

4つめを忘れる人が非常に多いです。控除が終わった年から、按分割合を実態に合わせて引き上げられないか検討してください。ただし割合を変える年には、変えた理由(部屋の使い方が変わった等)を説明できる状態にしておくことが前提です。

根拠の残し方は賃貸と同じ

按分割合の作り方そのものは、賃貸でも持ち家でも変わりません。面積按分が基本で、時間按分を併用します。

  • 間取り図に事業スペースを書き込み、面積を測って割合を出す
  • その紙(またはPDF)を保存しておく
  • 割合を変えた年は、変えた理由をメモに残す

割合の決め方は家事按分の割合をゼロから決める手順、盛りすぎを避ける考え方は家事按分の根拠の残し方、はじめての人は家事按分の物差しは3つだけを参照してください。車も同じ発想で按分します(車の経費はどこまで?)。

よくある質問(FAQ)

Q. 家は配偶者の名義です。私は按分できますか。
配偶者と生計を一にしている(生活費の財布が一つ)なら、按分して経費にできます。生計を一にする親族に家賃を払っても、その家賃は経費になりません(所得税法56条)。そのかわり、配偶者側で必要経費になるはずの金額(建物の減価償却費、ローンの利息、固定資産税、火災保険料)を、あなたの経費に振り替えます(所得税基本通達56-1)。経費にできるのは事業に使っている割合の分だけで、そこは自分名義のときと同じです。建物の減価償却費の出し方も同じで、この記事の「建物の減価償却の出し方」のとおりに計算します。名義人が住んでいた期間の減価を差し引いてから、事業に使っている割合をかけます。配偶者と生計が別なら扱いは逆で、適正な家賃を払えばその家賃が経費になるかわり、建物の減価償却費は経費にできません。このほか、その家にかかる水道光熱費などは、実際に負担していれば按分できます

Q. 親名義の実家で開業しました。
親と生計を一にしているか(生活費の財布が一つかどうか)で分かれます。生計を一にしているなら配偶者名義の場合と同じで、建物の減価償却費・固定資産税・火災保険料・ローンの利息のうち、事業に使っている割合の分をあなたの経費にできます(所得税法56条、所得税基本通達56-1)。実際に払っているのが親でも同じです。生計が別なら建物にかかる費用は経費にできず、そのかわり適正な家賃を払えばその家賃が経費になります。判断に迷うときや、自分が実際に負担している金額が大きいときは、個別に確認してください。

Q. 住宅ローン控除の初年度は確定申告が必要ですか。
必要です。個人事業主は年末調整がないので、2年目以降も毎年、確定申告で適用します。必要書類は控除チェックリストにまとめています。

Q. これまで按分していませんでした。今年からやっていいですか。
問題ありません。実態に合った割合で今年から計上してください。過去の分をさかのぼりたい場合は、更正の請求という手続きがあります(原則5年)。

Q. 減価償却をせずに何年か過ぎてしまいました。
個人の減価償却は強制償却です。計上しなかった年の分をあとの年にまとめて計上することはできません。気づいた年から正しく計算し、未償却残高は本来の計算どおりに管理します。

Q. 将来この家を売ったとき、影響はありますか。
あります。マイホームを売ったときの3,000万円特別控除は居住用部分だけが対象です。ただし居住用の割合が90%以上であれば、全部を居住用として扱ってよいとされています。この特別控除でも「10%」がひとつの目安になります。

Q. 賃貸から持ち家に引っ越しました。経費はどう変わりますか。
家賃の按分が無くなり、代わりに減価償却・ローン利息・固定資産税の按分に置き換わります。金額の出し方は変わりますが、割合の考え方(面積按分)は同じです。

まとめ

  • 持ち家でも減価償却費・ローン利息・固定資産税・火災保険料・管理費は按分して経費にできます
  • 元本返済は経費にならない。返済予定表で利息だけを抜き出します
  • 建物の減価償却は、住んでいた期間の減価(耐用年数1.5倍の旧定額法)を差し引いてから始めます
  • 住宅ローン控除は事業用10%以下なら満額50%を超えると使えません
  • 按分を増やすと経費は増えるが控除は減る。所得税率5%〜10%の人は、増やすとむしろ損
  • 控除の期間が終わったら按分を見直す。ここからは経費を取るほうが有利になります

この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法45条(家事関連費)/49条(減価償却費)/56条(事業から対価を受ける親族がある場合)/所得税基本通達56-1(親族の資産を無償で事業の用に供している場合)
  • 所得税法施行令96条(家事関連費)/135条(非業務用資産を業務の用に供した場合の減価の額)
  • 租税特別措置法41条(住宅借入金等特別控除。床面積の2分の1以上が居住用であること等の要件)/同施行令26条(居住の用以外の用に供される部分がある場合は床面積割合で按分)/同通達41-29(居住用部分の割合が90%以上である場合の取扱い)
  • 租税特別措置法35条(居住用財産の3,000万円特別控除)/同通達31の3-8
  • 国税庁タックスアンサー「住宅借入金等特別控除」「減価償却のあらまし」「やさしい必要経費の知識」
  • ※住宅ローン控除の控除率・控除期間・借入限度額は、住宅の種類と入居年により異なります
  • ※出典の各ページは2026年8月7日に確認しました。制度は改正されることがあります

次に読む

家事按分の割合をゼロから決める手順
家事按分の根拠の残し方
経費にできるもの・できないもの一覧
10万円のパソコンは一括経費?減価償却?
入れ忘れると損する所得控除 最終チェックリスト

MONITOR 無料モニターを募集しています

筆者(宍倉)が、経理・業務のAI自動化を一緒に試す90分のオンラインモニターを募集中です。かんたんな業務を1つ選んで、その場でAIに任せてみます。参加費は無料です。

業務・経理のAI自動化 モニター中小企業の経理担当・社長向け | オンライン90分×1回 | 枠が埋まり次第終了

不動産をお持ちの方向けに、不動産の法人化相続対策の枠もあります。

CONSULT

記事を読んでも判断に迷うときは

個別のご相談は、事務所サイトの単発相談で承っています。

個別相談について(事務所サイト)