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更新日 2026-07-26 節税・経費

災害・盗難にあったら|事業用資産は必要経費、自宅と家財は雑損控除という分け方

台風で店舗が浸水した。事務所に空き巣が入った。地震で自宅が壊れた。

こうしたとき、税金の面でどう扱うのか。答えは「失ったものが事業用か、生活用か」で分かれます。

しかも生活用のほうは、雑損控除と災害減免法のどちらか有利なほうを選ぶという仕組みになっています。いざというときに調べる余裕はないので、先に構造だけ押さえておいてください。

この記事の結論
事業用資産の損失は必要経費(所法51条)。雑損控除ではない
自宅・家財・生活用の車は雑損控除(所法72条)
– 雑損控除の対象は災害・盗難・横領詐欺と恐喝は対象外
– 生活用資産には災害減免法という別ルートもあり、有利なほうを選べる
– 雑損控除は引ききれない分を3年繰り越せる。災害減免法はその年だけ
被災事業用資産の損失は、白色申告でも純損失を3年繰り越せる
– まず取るべきは罹災証明書被害の記録(写真)

大前提:資産の種類で道が分かれる

同じ災害でも、失ったものによって手続きがまったく違います。

失ったもの 扱い 根拠
店舗・事務所・機械・工具・事業用の車 必要経費(資産損失) 所得税法51条
商品・材料(棚卸資産) 売上原価に含まれる(自動的に損失になる) 所得税法47条
売掛金が回収不能になった 必要経費(貸倒損失) 所得税法51条2項
自宅・家財・生活用の車・現金 雑損控除(所得控除) 所得税法72条
別荘・書画骨董(一定額超)・貴金属 対象外(生活に通常必要でない資産) 所得税法72条かっこ書

「事業用は経費、生活用は控除」——ここだけ覚えておけば、あとは調べれば足ります。

自宅兼事務所のように両方に使っている資産は、事業使用割合で分けます。事業部分は必要経費、居住部分は雑損控除です。

棚卸資産が被災した場合、期末の棚卸で数量が減るため、自動的に売上原価が増えて損失が反映されます在庫なんてない、と思ってた——棚卸と売上原価の落とし穴)。別途の手続きは不要です。

雑損控除の中身

生活用資産のほうを見ていきます。

対象になる原因

原因 対象
震災・風水害・火災・雪害・落雷
害虫・害獣による異常な災害
盗難
横領
詐欺
恐喝
紛失・置き忘れ
自分の過失による破損

詐欺と恐喝が対象外なのは、条文が「災害又は盗難若しくは横領」に限定しているからです。振り込め詐欺やSNS型投資詐欺の被害は、どれだけ深刻でも雑損控除になりません。よく誤解される点なので、押さえておいてください。

控除額の計算

次のどちらか多いほうが控除額です。

① (損失額 + 災害関連支出)− 保険金など − 総所得金額等 × 10%
② 災害関連支出 − 5万円

損失額は、被災した資産の時価(または取得費から減価償却相当額を引いた金額)で計算します。買ったときの値段ではありません。

災害関連支出とは、取壊し費用・撤去費用・原状回復費用など、災害に関連して実際に払ったお金です。

保険金・共済金で補填された部分は必ず差し引きます。

3年間繰り越せる

その年の所得から引ききれない場合、翌年以後3年間繰り越せます。

これは大きな特徴です。被災した年は所得自体が減っていることが多く、控除を使い切れないケースが珍しくありません。

もうひとつの道:災害減免法

災害の場合に限り、雑損控除の代わりに「災害減免法」による所得税の軽減・免除を選べます。

雑損控除 災害減免法
対象の原因 災害・盗難・横領 災害のみ
対象の資産 生活に通常必要な資産 住宅または家財
使える条件 特になし 損害額が時価の1/2以上、かつその年の所得1,000万円以下
効き方 所得控除 所得税額を直接減免
繰越し 3年 なし(その年だけ)
住民税 対象 対象外(所得税のみ)

災害減免法の軽減割合は所得によって決まります。

その年の合計所得金額 所得税の軽減
500万円以下 全額免除
500万円超 750万円以下 2分の1
750万円超 1,000万円以下 4分の1

どちらが有利か

ざっくりした目安です。

状況 有利なほう
所得が低く、損害が住宅・家財に集中 災害減免法(全額免除になり得る)
損失が大きく、その年に引ききれない 雑損控除(3年繰り越せる)
盗難・横領の被害 雑損控除(災害減免法は災害のみ)
住民税も減らしたい 雑損控除
翌年以降も所得が見込める 雑損控除

選択は申告のときに1回だけです。あとから変更できないので、両方で試算してから決めてください。

被災事業用資産の損失は「白色でも繰り越せる」

事業をやっている人にとって、ここが重要です。

事業用資産の損失が大きく、その年が赤字(純損失)になった場合——

純損失の繰越し
青色申告 3年繰り越せる(すべての純損失)
白色申告(通常) 繰り越せない
白色申告で「被災事業用資産の損失」がある場合 その部分は3年繰り越せる

つまり災害による事業用資産の損失に限っては、白色申告でも繰越しが認められています(所得税法70条2項)。

とはいえ、通常の赤字は白色では繰り越せません。この点も含めて青色申告と白色申告どっちがいい?を確認してください。

いざというとき最初にやること

税務の手続きより先に、証拠を残すのが最優先です。

やること なぜ
被害状況の写真を撮る 片付ける前に。あとから撮れない
罹災証明書を申請する(市区町村) 損害の程度を公的に証明する書類。税務でも各種支援でも使う
警察に届け出る(盗難・横領) 被害届の受理番号が証拠になる
保険会社に連絡する 保険金額が確定しないと控除額が計算できない
撤去・修繕の領収書を保管 災害関連支出になる
失った資産のリストを作る 取得時期・取得価額・数量。帳簿と固定資産台帳が役に立つ

最後の行が効いてきます。日頃から固定資産台帳と帳簿が整っていれば、損失額の計算がすぐできます。帳簿・証憑の保存については領収書・帳簿は何年とっておく?を参照してください。

この記事で扱う範囲について
罹災証明書の申請・判定(全壊/半壊等の区分)は市区町村被災者生活再建支援金・災害弔慰金などの支援制度は内閣府および都道府県・市区町村保険金・共済金の支払可否と金額は保険会社・共済団体の所管です。また、災害時には別途申告・納付期限の延長(国税通則法11条)や、予定納税・源泉徴収の減額・徴収猶予といった措置が講じられることがあり、内容は災害ごとに国税庁が公表します。この記事は所得税の取扱いの枠組みを示すものです。実際の被災時は、所轄の税務署と市区町村に必ず確認してください。

申告のしかた

雑損控除・災害減免法のどちらも、確定申告が必要です。

用意するもの
雑損控除 災害関連支出の領収書、保険金の額が分かるもの、罹災証明書、損失額の計算資料
災害減免法 罹災証明書、損害額が時価の1/2以上であることが分かる資料
盗難・横領 警察への届出の記録、被害品のリストと取得価額

確定申告で使う控除の全体像は控除チェックリスト入れ忘れると損する所得控除 最終チェックリストにまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q. 火災保険で全額補填されました。控除は使えますか。
使えません。保険金で補填された部分は損失額から差し引くため、全額補填なら損失はゼロです。ただし保険金でカバーされない撤去費用などがあれば、災害関連支出として残ります。

Q. 空き巣に現金を盗まれました。
生活用の現金であれば雑損控除の対象です(盗難)。事業用の現金であれば、事業の資産損失として必要経費になります。どちらも警察への届出が前提です。

Q. 投資詐欺で大きな損をしました。
残念ながら雑損控除の対象になりません。条文が「災害・盗難・横領」に限定しているためです。

Q. 車が水没しました。
生活用の車なら雑損控除事業用なら必要経費です。私用と兼用なら按分します。なお「生活に通常必要でない資産」(趣味・娯楽目的の高級車など)は雑損控除の対象外とされる場合があります。

Q. 別荘が被災しました。
別荘は「生活に通常必要でない資産」なので雑損控除の対象外です。ただし災害による損失について、その年と翌年の譲渡所得から控除できる別の規定があります(所得税法62条)。

Q. 損失額はいくらで計算しますか。
原則として被災直前の時価です。国税庁は、取得価額から減価償却費相当額を控除して計算する方法も認めています。10年前に買った200万円の家財が、そのまま200万円の損失にはなりません。

Q. 申告期限に間に合いそうにありません。
災害の場合、申告・納付の期限が延長されることがあります(地域指定または個別申請)。所轄の税務署に相談してください。放置するのがいちばんよくありません。

Q. 事業をやっていますが、雑損控除も使えますか。
使えます。事業用資産は必要経費、自宅・家財は雑損控除と、両方を同時に適用できます。片方しか使えないわけではありません。

まとめ

  • 事業用資産の損失は必要経費自宅・家財は雑損控除。両方を同時に使える
  • 棚卸資産の被災は売上原価に自動で反映される
  • 雑損控除の対象は災害・盗難・横領詐欺・恐喝は対象外
  • 控除額は「(損失+災害関連支出)−保険金−所得の10%」と「災害関連支出−5万円」の多いほう
  • 雑損控除は3年繰越し可、災害減免法はその年だけ・所得1,000万円以下が条件
  • 住民税も減らしたいなら雑損控除(災害減免法は所得税のみ)
  • 被災事業用資産の損失は、白色申告でも純損失を3年繰り越せる
  • まずやるのは写真・罹災証明書・警察への届出・保険会社への連絡
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法51条(資産損失の必要経費算入)/47条(棚卸資産の売上原価の計算)/62条(生活に通常必要でない資産の災害による損失)/70条2項(被災事業用資産の損失に係る純損失の繰越控除。白色申告でも適用)/71条(雑損失の繰越控除)/72条(雑損控除)
  • 所得税法施行令178条(生活に通常必要でない資産の範囲)/206条(雑損控除の対象となる災害関連支出)
  • 災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律2条(災害減免法。住宅・家財の損害額が時価の2分の1以上、合計所得金額1,000万円以下。所得500万円以下は全額、750万円以下は2分の1、1,000万円以下は4分の1を軽減)
  • 国税通則法11条(災害等による期限の延長)
  • 国税庁タックスアンサー「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」「災害減免法による所得税の軽減免除」
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です。災害ごとに個別の特例措置が講じられることがあります

次に読む

👉 経費にできるもの・できないもの一覧
👉 入れ忘れると損する所得控除 最終チェックリスト
👉 青色申告と白色申告どっちがいい?
👉 領収書・帳簿は何年とっておく?
👉 在庫なんてない、と思ってた——棚卸と売上原価の落とし穴

相談したいとき

👉 税理士の宍倉に相談する(LINE)

この記事の位置づけ

この記事は「4 年末から申告までに拾える経費」の詳細です。

節税は、やる順番で結果が変わります——コース全体のどこにあたるかは、全体像のページで確認できます。

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