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更新日 2026-07-26 節税・経費

使っていない機械・パソコンを経費で落とす|除却損と有姿除却、証拠の残し方

固定資産台帳を開いて、上から順に「これは今どこにありますか?」と聞かれたら、全部答えられるでしょうか。

3年前に壊れて捨てたプリンタ。倉庫の奥で埃をかぶっている機械。買い替えて引き取ってもらった車。帳簿には残っているのに、実物が無い資産は珍しくありません。

これらの未償却残高は、経費で落とせます。しかも現金は1円も出ていきません。

この記事の結論
– 廃棄・取壊し・滅失した事業用資産の未償却残高は必要経費(所得税法51条1項)
– 経費にする年は廃棄した年。「気づいた年」ではない
– まだ捨てていなくても、今後使う見込みがないなら有姿除却という考え方がある
– ただし所得税には有姿除却の明文の通達がなく、法人税基本通達7-7-2の考え方に準じるのが実務
証拠が命。廃棄証明書・マニフェスト・写真・廃棄申請書を残す
一括償却資産(3年均等)は除却しても残額を一時に落とせない——最大の落とし穴
売却は除却ではない。譲渡所得になる(事業用の車・機械を売ったとき
– 除却した年の償却費は月割で計上できる

除却損とは

事業用の固定資産を捨てた(取り壊した・滅失した)とき、帳簿に残っている未償却残高がそのまま経費になります。

例:3年前に80万円で買った機械(未償却残高32万円)を廃棄
仕訳:固定資産除却損 320,000 / 機械装置 320,000
その年の必要経費に 32万円

根拠は所得税法51条1項です。事業の用に供している固定資産について、取壊し・除却・滅失その他の事由により生じた損失の金額を、事業所得の必要経費に算入します。

除却した年の償却費も忘れずに

12月に廃棄したなら、1月〜12月の12か月分の減価償却費を先に計上し、その後の残高を除却損にします。年の途中なら月割です。

金額
年初の未償却残高 400,000円
8月まで(8か月分)の償却費 80,000円 ← 経費
除却時の残高 320,000円 ← 除却損として経費
合計 400,000円

償却費を飛ばして全額を除却損にしても合計は同じですが、青色申告決算書の記載が変わります。減価償却費の内訳表に除却の事実を記載してください。

有姿除却——まだ捨てていないが、もう使わない

現物がまだ手元にあっても、今後通常の方法で事業に使う可能性がない場合には、処分見込価額を残して除却損を計上する、という考え方があります。これを有姿除却と呼びます。

認められやすい例 認められにくい例
生産ラインの変更で二度と使わない専用機械 「当面使わない」だけの汎用設備
対応するソフトウェアのサポートが終了した機器 保管しているだけで、繁忙期には使う設備
同型の後継機を導入し、旧機は部品取りにもしない 予備機として置いてある設備

重要な注意があります。有姿除却を正面から定めているのは法人税基本通達7-7-2であり、所得税には対応する明文の通達がありません。所得税でも同じ考え方で処理するのが実務ですが、法人ほど根拠が明確ではない、というのが正直なところです。

したがって個人事業では、可能なかぎり実際に廃棄して除却するほうが安全です。有姿除却に頼るのは、大型設備で撤去費用が高額といった、捨てたくても捨てられない事情がある場合に限るのが現実的です。

一括償却資産という落とし穴

ここがいちばん間違えやすいところです。

取得価額が10万円以上20万円未満の資産について「一括償却資産」を選んだ場合、3年間で均等に償却します。この資産は、廃棄しても残りを一時に経費にできません。

30万円のパソコン3台を一括償却資産にした(年10万円ずつ償却)
2年目に全部廃棄した
3年目も10万円を償却し続ける。除却損は計上できない

一括償却資産は「個々の資産」ではなく「その年に取得した一括償却資産の合計」を1つの単位として3年で償却する制度だからです。除却・売却があっても、3年間の均等償却は変わりません

経費にした方法 廃棄したときの扱い
10万円未満で全額経費 すでに簿価0。何もしない
一括償却資産(3年均等) 除却損は計上できない。3年間償却を続ける
少額減価償却資産の特例(40万円未満 すでに簿価0。何もしない
通常の減価償却 未償却残高を除却損に

「20万円未満だから一括償却資産にしておこう」という判断は、短期で入れ替える資産では不利になり得るということです。制度の使い分けは30万円未満なら一括で経費にできる特例少額減価償却資産が40万円未満にを確認してください。

証拠の残し方

除却損は「本当に捨てたのか」が争点になります。現物が無いことを、後から証明する準備が要ります。

資産 残すもの
パソコン・OA機器 回収業者の引取証明書・領収書、廃棄前後の写真
機械・設備 産業廃棄物管理票(マニフェスト)のE票、撤去工事の請求書
車両 抹消登録の記録事項等証明書、リサイクル券、引取証明
建物・構築物 解体工事の請負契約書・請求書、建物滅失登記の完了証明
ソフトウェア 利用停止の記録、サーバーからの削除記録、契約解除の通知
有姿除却 使用停止を決めた社内の記録(日付入り)、現況写真、後継設備の導入資料

写真は日付が入るもの(スマートフォンの撮影日時が残るファイルのまま保存)が有効です。廃棄した資産の固定資産台帳の該当行に、廃棄日と処分方法をメモしておくと、翌年以降の確認が楽になります。

除却と売却と災害は、全部処理が違う

同じ「資産が無くなる」でも、税務上の箱が変わります。

何が起きたか 税務上の扱い
捨てた・壊した 除却損 → 事業所得の必要経費
売った・下取りに出した 譲渡所得(総合課税・50万円特別控除) → 事業用の車・機械を売ったとき
災害・盗難でなくなった 事業用なら資産損失(必要経費)、自宅なら雑損控除 → 災害・盗難にあったとき
買い替えで下取り 下取価額で売却したものとして処理(除却ではない)

下取りを「除却」で処理してしまうミスが非常に多いです。下取価額は売却代金なので、譲渡所得の計算に入ります。新しい資産の取得価額から差し引くのではありません。

家事按分している資産の場合

自家用と兼用の車やパソコンを廃棄したとき、除却損の全額が経費になるわけではありません。事業使用割合を掛けた金額が必要経費です。

未償却残高60万円の車(事業割合60%)を廃棄
除却損 60万円 × 60% = 36万円 が必要経費
残り24万円は家事上の損失(経費にならない)

車の按分は車を経費にするを参照してください。

この記事で扱う範囲について
この記事は固定資産を廃棄したときの所得税の取扱いを扱っています。産業廃棄物の適正な処理(委託契約書、マニフェストの交付・保存義務、許可業者の確認)は廃棄物処理法の領域で、違反には罰則があります。パソコン・サーバーの廃棄にあたっては、顧客情報等のデータ消去も別途必要です。自動車の永久抹消登録・一時抹消登録の手続は運輸支局、建物滅失登記は法務局(司法書士・土地家屋調査士の業務)です。有姿除却については、所得税に明文の通達がないため、金額が大きい場合は事前に個別の判断を仰ぐことをおすすめします。

実際にやる手順(年末の棚卸し)

  1. 固定資産台帳を印刷する——青色申告決算書の3ページ目「減価償却費の計算」を見る
  2. 1行ずつ現物を確認する——「今どこにあるか」を答えられない資産に印をつける
  3. いつ処分したかを特定する——過去の年なら、その年分の更正の請求(原則5年以内)を検討
  4. 証拠を集める——引取証明、写真、廃棄業者への支払記録、抹消登録
  5. 除却した年までの償却費を月割で計上してから、残高を除却損へ
  6. 一括償却資産に該当しないか確認——該当すれば除却損は計上しない
  7. 売却・下取りが混ざっていないか確認——混ざっていれば譲渡所得へ

決算整理の全体像は決算整理はなぜ必要?にまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q. 5年前に捨てた資産が台帳に残っています。今年の除却損にできますか。
本来は捨てた年の経費です。厳密には、その年分の更正の請求(原則5年以内)で処理します。金額が小さく、償却を続けていた(=経費に入っていた)場合は、残高を今年落とすことで実務上は落ち着くこともありますが、正しい処理は捨てた年です。金額が大きいときは個別に相談してください。

Q. 有姿除却は税務調査で否認されやすいですか。
「本当に使う可能性がないのか」が争点になります。同じ場所に置いたままで、いつでも動かせる状態だと、否認リスクは高いです。使用停止を決めた日付入りの記録、後継設備の導入資料、可能なら主要部分を撤去して使えなくするといった対応が有効です。

Q. 除却損で赤字になったらどうなりますか。
青色申告なら、その赤字(純損失)を翌年以後3年間繰り越せます。前年も青色申告なら前年の所得税を取り戻す繰戻し還付も選べます(純損失の繰越控除と繰戻し還付)。

Q. 消費税はどうなりますか。
廃棄(除却)は対価がないので課税取引になりません。仕入税額控除も、取得したときに済んでいるので調整は不要です(調整対象固定資産・高額特定資産に該当する場合の3年縛りの調整は別途あります)。下取り・売却は課税売上になるので、そちらは注意してください。

Q. 建物を取り壊して新しい建物を建てます。取壊し費用は経費ですか。
既存の建物を引き続き使うつもりで取り壊したなら、除却損と取壊し費用は必要経費です。一方、土地を利用するために建物を取得してすぐ取り壊した場合は、取得価額と取壊し費用が土地の取得価額に算入され、経費になりません。目的によって結論が変わります。

Q. スマートフォンを機種変更しました。旧端末は除却ですか。
取得価額が10万円未満で全額経費にしていれば、簿価が0なので何もしません。分割払いで20万円台の端末を減価償却していた場合は、下取りに出したなら売却、手元に残すなら家事転用、捨てたなら除却です。

Q. 帳簿から消したら、税務署に何か届け出が要りますか。
届出は不要です。青色申告決算書の減価償却費の内訳に、除却した旨と月数を記載します。

まとめ

  • 廃棄した事業用資産の未償却残高は必要経費(所法51条1項)
  • 経費にする年は廃棄した年。過去の分は更正の請求
  • 除却した年の償却費を月割で先に計上してから残高を除却損へ
  • 有姿除却は所得税に明文の通達がない。実際に捨てるほうが安全
  • 一括償却資産(3年均等)は除却しても落とせない
  • 証拠が命——引取証明・マニフェスト・写真・抹消登録
  • 下取り・売却は除却ではなく譲渡所得
  • 家事按分している資産は事業割合分だけ
  • 現金が出ていかない節税なので、優先順位は高い
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法51条1項(事業用固定資産の取壊し・除却・滅失その他の事由により生じた損失の必要経費算入)
  • 所得税法49条・所得税法施行令120条の2ほか(減価償却費の計算。年の中途で除却した場合の月割)
  • 所得税法施行令139条(一括償却資産の必要経費算入。3年間の均等償却。除却があっても償却を継続する)
  • 法人税基本通達7-7-2(有姿除却。使用を廃止し今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産。所得税に明文の通達はなく、実務上この考え方に準じて処理される)
  • 所得税基本通達38-1(土地とともに取得した建物を取り壊した場合の取得費算入)
  • 所得税法33条・所得税法施行令81条(事業用資産の譲渡は譲渡所得。ただし少額減価償却資産・一括償却資産等の譲渡は事業所得等)
  • ※2026年時点の取扱いです

次に読む

👉 事業用の車・機械を売ったとき——総合譲渡所得と50万円特別控除
👉 少額減価償却資産が30万円未満から40万円未満へ
👉 中古資産の耐用年数——簡便法の計算
👉 決算整理はなぜ必要?
👉 災害・盗難にあったとき——事業用と自宅で処理が違う

相談したいとき

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この記事の位置づけ

この記事は「3 高いものを買ったとき・売ったとき」の詳細です。

節税は、やる順番で結果が変わります——コース全体のどこにあたるかは、全体像のページで確認できます。

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