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更新日 2026-07-26 経理と確定申告

外注費に源泉徴収は必要?ライター・デザイナー・士業に払うときの判断と納付

仕事が増えて、外注を使うようになった。請求書が届いた。ここで手が止まります。

「これ、源泉徴収して払うんだっけ?」

引かずに払って後から指摘されるのも怖いし、引かなくていいものを引いて相手に嫌がられるのも避けたい。判断の順番を決めておけば、毎回悩まずに済みます。

そして最初に、多くの人が知らない前提をひとつ。

従業員も専従者もいない個人事業主には、そもそも報酬の源泉徴収義務がありません。

この記事の結論
給与を払っていない個人事業主は、報酬を払っても源泉徴収しなくてよい(所得税法204条2項2号)
相手が法人なら原則不要(デザイン会社・制作会社への発注は引かない)
– 対象は所得税法204条に列挙された報酬だけ。原稿料・デザイン料・講演料・士業報酬など
Web制作・システム開発・動画編集・運送・清掃は原則対象外
– 税率は10.21%。1回の支払が100万円を超える部分は20.42%
– 納付は翌月10日納期の特例が使えるのは士業等の報酬だけで、原稿料やデザイン料は毎月納付

まず判断の順番

上から順に見ていけば、迷いません。

Step 見るところ 判定
1 自分は源泉徴収義務者か(給与を払っているか) 払っていなければここで終了。徴収不要
2 相手は個人か法人か 法人なら原則不要
3 204条の報酬に当たるか 当たらなければ不要
4 請求書で本体と消費税が分かれているか 分かれていれば本体だけで計算
5 1回の支払が100万円を超えるか 超える部分は20.42%

Step1がいちばん大事です。順に見ていきます。

Step1:自分に義務があるのか

源泉徴収義務者になるのは「給与等の支払をする者」です。そして所得税法204条2項2号に、はっきり例外が書かれています。

給与等の支払をする者でない者、および常時2人以下の家事使用人のみに給与を払う者が支払う報酬・料金等については、源泉徴収を要しない。

これを裏返すと——

あなたの状況 報酬の源泉徴収
従業員なし・専従者給与なし(一人でやっている 不要
アルバイトを1人でも雇っている 必要
家族に青色事業専従者給与を払っている 必要
法人(会社を作った) 必要

つまり、ひとりでやっているフリーランスが、別のフリーランスに原稿料を払う場合、源泉徴収は不要です。相手から「引いてください」と言われても、義務はありません。

逆に、人を雇い始めた月から義務が発生します。人を雇うときの手続き全体は初めて人を雇うときの手続き一覧、家族への専従者給与は家族に給料を払って節税したいにまとめています。

ここを知らずに、義務がないのに源泉徴収して納付してしまうケースがあります。 相手の手取りを減らしたうえで、自分の事務負担も増やすことになるので、まず自分の立場を確認してください。

Step2〜3:対象になる報酬・ならない報酬

Step1をクリアした(=給与を払っている)場合に進みます。

まず相手が法人なら原則不要です。株式会社・合同会社への発注では引きません(例外は馬主である法人など、実務ではまず出会いません)。

相手が個人の場合、次の表で判定します。

支払う内容 源泉徴収 根拠の号
原稿料・記事執筆料 必要 1号
デザイン料(ロゴ・グラフィック・装丁) 必要 1号
イラスト・写真・作曲・作詞 必要 1号
翻訳・通訳料 必要 1号
講演料・研修講師料 必要 1号
弁護士・税理士・公認会計士・社労士・弁理士等の報酬 必要 2号
司法書士・土地家屋調査士・海事代理士の報酬 必要(計算方法が違う) 2号
外交員・集金人の報酬 必要 4号
モデル・芸能人・プロスポーツ選手 必要 5号
ホステス等の報酬 必要 6号
Webサイト制作・システム開発・プログラミング 原則不要
動画編集・撮影の外注 原則不要
経営コンサルティング(士業以外) 原則不要
運送・配送・清掃・事務代行 不要
物品の購入・仕入 不要
会場費・広告掲載料 不要

判断が割れるのはWeb制作です。プログラムの作成そのものは列挙されていないので原則不要ですが、その中身が「デザイン」であれば1号に該当します。ロゴやビジュアルの制作が主なら対象、機能実装が主なら対象外、という見方になります。

大事なのは契約書の名目ではなく実態です。請求書に「Webサイト制作費」と書いてあっても、内訳がデザイン料であれば対象になり得ます。迷ったら内訳を分けて請求してもらうのがいちばん確実です。

源泉徴収の仕組みそのものは源泉徴収とは?で解説しています。

Step4〜5:税率と計算

税率は10.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%)です。

1回の支払が100万円を超える場合、超えた部分だけ20.42%になります。

例:1回で120万円を支払う場合

区分 計算 税額
100万円まで 100万円 × 10.21% 102,100円
100万円を超える20万円 20万円 × 20.42% 40,840円
合計(源泉徴収税額) 142,940円
相手への支払額 120万円 − 142,940円 1,057,060円

司法書士・土地家屋調査士・海事代理士への報酬だけは計算が違い、1回の支払金額から1万円を差し引いた残額に10.21%をかけます。登記を頼んだときに出てくるので、覚えておくと役に立ちます。

消費税の扱いにも1つポイントがあります。請求書で報酬額と消費税額が明確に区分されていれば、消費税を除いた本体金額だけで源泉徴収税額を計算できます。区分されていなければ、税込金額が計算のもとになります。

つまり分けて書いてもらったほうが、相手の手取りが増えます。この論点は受け取る側から見た請求書の源泉徴収は「引いて」書く?消費税との計算順で詳しく整理しています。

納付——ここに落とし穴があります

源泉徴収した税金は、支払った月の翌月10日までに納付します。使うのは「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」(給与とは別の納付書です)。

問題は納期の特例です。給与について納期の特例(年2回まとめ)を受けている人は多いのですが、特例の対象になる報酬は限られています

支払の種類 納期の特例
給与・賞与 対象
退職手当 対象
弁護士・税理士・司法書士等の報酬(204条1項2号) 対象
原稿料・デザイン料・講演料(204条1項1号) 対象外 → 毎月10日納付
外交員報酬(4号) 対象外 → 毎月10日納付

税理士報酬は半年分まとめてよいのに、ライターへの原稿料は毎月納付——これを知らずに、原稿料の源泉税を半年ためてしまう例が本当に多いです。

ここは制度の作りとして分かりにくいところなので、外注を使い始めたら、まず自分が払う報酬が何号に当たるかを確認してください。

年が明けてからの手続き

支払調書と法定調書合計表を、翌年1月31日までに税務署へ提出します。

支払の種類 提出が必要になる目安
原稿料・デザイン料・講演料など 同一人への年間支払額が5万円超
弁護士・税理士等の報酬 同一人への年間支払額が5万円超

よくある誤解をひとつ。支払調書を支払先本人に交付する法的な義務はありません。 慣行として渡している会社が多いだけです。相手から「支払調書をください」と言われたら、渡しても構いませんが、義務ではないことは知っておいてください。

年末年始にやることの並びは12月に納品・1月に入金、この売上は今年?来年?もあわせて確認してください。

忘れていたときのリスク

源泉徴収を忘れた場合、納める義務があるのは支払った側です。ここが厳しいところで、相手から取り戻せるかどうかは民事の問題として別に処理することになります。

ペナルティ 内容
不納付加算税 納税の告知を受けた場合は10%、告知前に自主的に納付すれば5%
延滞税 法定納期限の翌日から納付日まで

気づいた時点で自主的に納付すれば軽くなります。指摘される前に動くことが、金額面でも印象面でも有利です。

外注費そのものを経費として計上できるかどうかは、また別の論点です(経費にできるもの・できないもの一覧)。

よくある質問(FAQ)

Q. 一人でやっていて義務がないのに、相手から「源泉徴収してほしい」と言われました。
義務がないので、引かずに全額支払って問題ありません。相手は確定申告で自分の税額を計算するだけなので、不利にもなりません。説明しにくければ、この記事のStep1を見せてください。

Q. 途中でアルバイトを雇いました。それ以前に払った報酬は?
源泉徴収義務が生じるのは、給与の支払をする者になってからです。それ以前の支払について、さかのぼって徴収する必要はありません。

Q. 海外在住のライターに原稿料を払いました。
非居住者への支払は別の規定(所得税法212条)が適用され、税率も原則20.42%と異なります。租税条約による軽減もあり得るので、金額が大きい場合は個別に確認してください。

Q. 相手が「インボイス登録している課税事業者」なら源泉徴収は不要ですか。
関係ありません。消費税(インボイス)と所得税(源泉徴収)は別の制度です。登録の有無で源泉徴収の要否は変わりません。

Q. 報酬を分割して払えば、100万円超の20.42%を避けられますか。
「1回の支払」ごとの判定なので形式的にはそうなりますが、実態のない分割は避けてください。契約に沿った支払時期であれば問題ありません。

Q. 税理士報酬にも源泉徴収が必要ですか。
必要です(あなたが源泉徴収義務者である場合)。税理士側の請求書は源泉徴収税額を差し引いた金額で発行されるのが通常です。費用の相場感は税理士費用の相場にまとめています。

Q. 引いた源泉税は、自分の帳簿でどう処理しますか。
外注費は総額で計上し、差し引いた分は「預り金」として負債に計上します。納付したときに預り金を消す形です。

まとめ

  • 給与を払っていない個人事業主に、報酬の源泉徴収義務はない。まずここを確認する
  • 相手が法人なら原則不要。個人への支払だけを判定する
  • 対象は204条に列挙された報酬。原稿料・デザイン料・講演料・士業報酬は対象、Web制作・システム開発・動画編集は原則対象外
  • 税率は10.21%、1回100万円超の部分は20.42%。司法書士等は1万円を引いてから計算
  • 請求書で消費税が区分されていれば本体だけで計算できる
  • 納付は翌月10日納期の特例が使えるのは士業等の報酬だけ。原稿料は毎月納付
  • 支払調書と法定調書合計表は1月31日まで。本人への交付義務はない
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法204条(報酬・料金等に係る源泉徴収義務。2項2号に義務が生じない者の定め)/205条(税率)/212条(非居住者等に対する源泉徴収)
  • 所得税法216条(源泉所得税の納期の特例)/217条
  • 所得税法225条(支払調書等の提出義務)
  • 国税通則法67条(不納付加算税)/60条(延滞税)
  • 国税庁「源泉徴収のあらまし」、タックスアンサー「報酬・料金等の源泉徴収事務」「原稿料や講演料等を支払ったとき」
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です

次に読む

👉 請求書の源泉徴収は「引いて」書く?消費税との計算順
👉 源泉徴収とは?
👉 初めて人を雇うときの手続き一覧
👉 家族に給料を払って節税したい:青色事業専従者給与
👉 確定申告の全体マップ

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