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更新日 2026-08-07 消費税とインボイス

消費税の全体像──売上を4つに分け、納める立場かを判定し、3つの計算方法から選ぶ

消費税は、所得税や法人税とは別の理屈で動きます。もうけにかかる税金ではないので、赤字の年でも納付が生じます。

しかも、同じ売上でも納める額は変わります。どの計算方法を選ぶかで変わり、その選ぶ権利は届出書を1枚出し忘れるだけで消えます。

個々の論点に入る前に、全体がどうつながっているのかを1本にまとめます。

この記事の結論

  • 納めるのは「預かった税 − 払った税」。この引くほうが仕入税額控除で、実務の大半はここに集まる
  • 売上は課税・非課税・免税・不課税の4つに分かれる。ここを間違えると、納税義務の判定も控除額もずれる
  • 納める立場かどうかは、原則2年前(基準期間)の課税売上高1,000万円で決まる。ただしインボイス登録をしていれば、売上に関係なく課税事業者
  • 納める額の出し方は本則課税・簡易課税・特例の3つ。簡易課税は使いたい課税期間が始まる前日までに届出が要る
  • 払った税を引くには帳簿とインボイスの保存が要る。ただし少額特例・帳簿のみ保存など、要らない場面もある
  • 申告と納付は個人が翌年3月31日、法人は課税期間の末日の翌日から2か月以内。所得税の3月15日とは別の期限
  • 前年の税額が大きいと中間申告が来る。前払いなので、年間の総額は変わらない
  • この税目でいちばん高くつくのは、計算間違いではなく届出書の出し忘れ

1. 消費税は「預かった税 − 払った税」

消費税を負担するのは消費者で、納めるのは事業者です。事業者は各段階で預かった税から払った税を引いた差額を納め、これを繰り返すことで、最終的に消費者が負担した分だけが国に入ります。

この「払った分を引く」しくみが仕入税額控除です。消費税の実務は、ほとんどがここをめぐる話だと考えて差し支えありません。

税率は2段階あります。

区分 合計 国税(消費税) 対象
標準税率 10% 7.8% 原則すべての取引
軽減税率 8% 6.24% 酒類・外食を除く飲食料品、週2回以上発行される定期購読の新聞

申告書で計算に使うのは国税部分です。地方消費税は国税額に22/78を掛けて出すので、実務では「7.8%で計算して、最後に22/78を足す」と考えれば足ります。

そしてもう1つ、資金繰りの話があります。消費税は預かっているお金です。利益が出ていなくても売上があれば発生するので、売上が入金された時点で消費税相当額を別口座に移しておく——これだけで納付月の事故はかなり防げます。

2. 売上を4つに分ける

消費税がかかる取引は、4つの要件をすべて満たすものです。国内で/事業者が事業として/対価を得て/資産の譲渡・貸付け・役務の提供を行うこと。1つでも欠ければ、そもそも課税の対象外になります。

そのうえで、政策上・性質上の理由から非課税とされるものが法律に列挙されています。整理すると、売上は次の4つに分かれます。

区分 売上の税 対応する仕入れの税
課税 商品売上、報酬、事務所・店舗の家賃、駐車場収入 かかる 引ける
非課税 土地の譲渡・貸付け、住宅の貸付け、預貯金の利子、有価証券の譲渡、社会保険医療 かからない 引けない
免税(輸出) 輸出売上、国際輸送 0% 引ける
不課税 給与、受取配当金、保険金、損害賠償金、補助金・助成金、寄附金 かからない 引けない

「収入だから消費税がかかる」ではありません。補助金も保険金も不課税です。逆に、住宅の家賃は非課税、店舗や駐車場の賃料は課税と、同じ不動産収入でも分かれます。

非課税と不課税の違いは、あとで課税売上割合に効いてきます。非課税売上げは割合を下げ、不課税収入は割合を動かしません。この差が本則課税の控除額を左右します(課税売上割合が95%を切ると何が起きるか)。

3. 自分は納める立場か

次に、自分が納税義務者かどうかです。上から順に見ていきます。

  1. インボイス発行事業者として登録しているか → していれば課税事業者。売上の大小は関係ない
  2. 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるか → 超えれば課税事業者
  3. 特定期間の課税売上高(または給与等支払額)が1,000万円を超えるか → 超えれば課税事業者
  4. 課税事業者選択届出書を出しているか → 出していれば課税事業者
  5. 新設法人・特定新規設立法人に当たるか(資本金1,000万円以上など) → 当たれば課税事業者
  6. 相続・合併・分割の特例、高額特定資産の3年しばりに当たるか → 当たれば課税事業者

どれにも当たらなければ免税事業者です。基準期間と特定期間は、こう数えます。

用語 個人事業者 法人
基準期間 その年の前々年 その事業年度の前々事業年度
特定期間 前年の1月1日〜6月30日 原則として前事業年度開始の日以後6か月

ここで間違えやすいのが2つあります。1つは、免税事業者だった期間の売上は税抜きにせず、受け取った金額そのままで1,000万円を判定すること。もう1つは、特定期間の判定は課税売上高に代えて給与等支払額で行えることです。人を雇っていなければ、給与基準で免税を保てます。

そして最も誤解が多いのがここです。登録している限り、売上がどれだけ下がっても免税事業者には戻りません。戻りたければ届出書を出すしかなく、しかも1枚では足りないことがあります(登録をやめても、自動で免税事業者には戻らない)。

4. 納める額の出し方は3つ

課税事業者になったら、次は計算方法です。

方式 納付税額 事前の届出
本則課税 売上税額 − 実際に払った税額 不要
簡易課税 売上税額 −(売上税額 × みなし仕入率) 必要(基準期間の課税売上高5,000万円以下)
2割特例・3割特例 売上税額 × 20%(3割特例は30%) 不要(申告書に付記するだけ)

簡易課税のみなし仕入率は、業種で6つに分かれます。

事業区分 主な業種とみなし仕入率
第1種 卸売業 90%
第2種 小売業、飲食料品の譲渡に係る農林水産業 80%
第3種 農林水産業(第2種以外)、鉱業、建設業、製造業など 70%
第4種 飲食店業など、ほかの区分に当たらないもの 60%
第5種 運輸通信業、金融保険業、サービス業 50%
第6種 不動産業 40%

2割特例は、納付税額が売上税額の2割になる措置です。実質のみなし仕入率は80%——つまり第2種と同率なので、卸売業でない限り、2割特例のほうが有利になりやすいという関係になります。

ただし2割特例は終わります。対象は令和8年9月30日を含む課税期間までで、そのあと個人事業者には3割特例(令和9年分・令和10年分)が用意されましたが、法人には用意されていません2割特例が終わる──個人は3割特例へ、法人は特例なしへ)。

簡易課税を使うなら、原則として使いたい課税期間が始まる前日までに届出が要ります。個人なら前年12月31日です。決算を締めてから有利なほうを選ぶことはできません簡易課税の届出は「前年12月31日まで」が原則)。

例外は設備投資の年です。払った税が預かった税を上回れば本則課税で還付になりますが、簡易課税を選んでいると還付は受けられません。大きな投資の予定があるなら、簡易課税の届出を出さずにおくのが定石です。

5. 引くための条件——帳簿とインボイス

本則課税で払った税を引くには、原則として帳簿と、相手が交付したインボイスの両方を保存していることが必要です。インボイスは請求書の書式の問題ではなく、控除できるかどうかの条件だと考えてください。

とはいえ、すべての支払いにインボイスが要るわけではありません。

場面 扱い
税込1万円未満の課税仕入れ(少額特例) インボイスの保存が要らない。令和11年9月30日まで
3万円未満の公共交通機関、自動販売機、入場券、出張旅費など 帳簿の保存だけで引ける。摘要欄に何と書くかが決まっている
家賃のように請求書が出ない取引 契約書と通帳の組み合わせで足りる。契約書の巻き直しは要らない
登録していない相手からの仕入れ 経過措置で一部だけ引ける。割合は段階的に下がる

この線引きを知らないと、現場の手間が何倍にも膨らみます(1万円未満の領収書にインボイスは要らない電車代・自販機・出張旅費はインボイスが要らない)。

登録していない相手への支払いは、令和8年10月1日から70%しか引けなくなります。引けなかった分は消えるのではなく、その取引の金額そのものに含めます2026年10月から、免税事業者への支払いは「7割しか引けない」)。

6. いつ申告して、いつ納めるか

区分 期限
個人事業者 翌年3月31日(所得税の3月15日とは違う)
法人 課税期間の末日の翌日から2か月以内
法人の延長 届出で1か月延長できる。法人税の申告期限延長の特例を受けている法人に限る

個人事業者が振替納税を使っている場合、口座からの引落しは4月下旬です。3月31日に現金が出ていくわけではありません。

そして、前年の税額が大きいと中間申告が来ます。

前年の消費税額(国税分) 中間申告の回数
48万円以下 なし(任意の中間申告はできる)
48万円超 〜 400万円以下 年1回
400万円超 〜 4,800万円以下 年3回
4,800万円超 年11回

中間申告は来年ぶんの前払いなので、年間で納める総額は変わりません。変わるのは払うタイミングだけです(消費税の「中間申告」の通知が来た)。

7. つまずくのは、たいてい期限

ここまでが消費税の骨組みです。最後に、どこで事故が起きるかを書いておきます。

計算を間違えて損をする人より、届出書を出し忘れて損をする人のほうが多い。簡易課税を使いたければ期間が始まる前に出す。登録をやめたければ期限までに出す。どちらも、1日過ぎればその期間はもう動かせません。

しかも期限は年末に集中していて、休日でも翌日に延びません消費税の届出書カレンダー)。

逆に、昔出した届出書が生きていることもあります。設備投資の還付を受けるつもりが、何年も前に出した簡易課税の届出が効いていて受けられない——これは実際に起きます(昔出した簡易課税の届出書は、まだ生きている)。

どこから手をつけるかは、次の順です。

  1. 自分が課税事業者か免税事業者かを確かめる(基準期間・特定期間・登録の有無)
  2. 売上を4つに仕分ける。非課税売上げがあるなら課税売上割合を計算する
  3. 本則・簡易・特例のどれで納めるかを決め、届出の期限をカレンダーに入れる
  4. 払った税を引くための保存の形を整える(帳簿の摘要欄、家賃の通知書、経過措置の記載)
  5. 中間申告の有無と、納付月の資金を確認する

各論は消費税とインボイスの全体像(コースの案内)から、順に読めるようにしてあります。

範囲注記:この記事は消費税のしくみ全体の見取り図です。個々の要件・特例には細かい例外があり、実際の判断は取引の実態によって変わります。適用にあたっては所轄税務署または関与税理士に確認してください。この記事は2026年8月時点の制度に基づきます。

まとめ

  • 納めるのは預かった税 − 払った税。引くほうが仕入税額控除で、実務の大半はここ
  • 売上は課税・非課税・免税・不課税の4つ。免税(輸出)は0%だが仕入れの税は引ける
  • 納税義務は基準期間1,000万円が原則。登録していれば売上に関係なく課税事業者
  • 計算方法は本則・簡易課税・特例の3つ。簡易課税は期間が始まる前日までの届出
  • 2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間まで。個人は3割特例へ、法人は特例なし
  • 控除には帳簿とインボイスの保存。少額特例・帳簿のみ保存など、要らない場面もある
  • 申告は個人3月31日・法人2か月以内。前年の税額が大きければ中間申告が来る
  • 最も高くつくのは届出書の出し忘れ

この記事の主な根拠(出典)

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