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更新日 2026-07-26 節税・経費

資格取得費・セミナー代・書籍代は経費になる?「新しい資格」がNGになる理由

「スキルアップも仕事のうちだから、資格の講座代は経費ですよね」

半分正解で、半分不正解です。書籍とセミナーはかなり通ります。資格取得費はほとんど通りません。

同じ「勉強のためのお金」なのに扱いが違うのは、税務が見ているのが「今の仕事を回すため」か「新しい仕事に就くため」かだからです。

この記事の結論
今の業務を回すための支出は経費(書籍・業界セミナー・法定講習・更新研修)
新しい資格・地位を得るための支出は原則アウト(試験の受験料・予備校・スクール)
– 資格はその人個人に一生ついて回るので、事業だけの支出とは言えない
開業前に払った研修費は「開業費」になり、好きな年に落とせる
– 従業員に資格を取らせる場合は、業務に必要か/本人の資格かで経費か給与かが変わる
– 迷ったら「その支出をやめたら、今の売上が減るか」で判断する

分かれ目はひとつだけ

判定の軸は「金額」でも「業務に関係あるか」でもありません。

今すでにやっている仕事のための支出か。それとも、これから別の仕事をするための支出か。

前者は必要経費。後者は家事費(あるいはその人自身への投資)として扱われます。

理由は、資格や学位がその人個人に一生帰属するからです。事業をやめても資格は残ります。転職しても残ります。事業だけのために消費されたお金とは言えない、という理屈です。

家事関連費の考え方は経費を考えるときに大切なことにまとめています。

一覧:経費になるもの・ならないもの

支出 判定 理由
業務に関係する書籍・専門書 新聞図書費
業界紙・有料メディアの購読 同上
業界セミナー・勉強会の参加費 今の業務のため
同業者団体・商工会議所の会費 諸会費
法定講習・更新研修 業務継続に必須
業務に必須の技能講習(フォークリフト、玉掛け、危険物、高所作業など) その作業ができないと仕事が回らない
ソフトの操作研修・技術研修 今の業務の遂行に必要
資格試験の受験料 新しい資格の取得
予備校・通信講座(簿記・宅建・行政書士・社労士など) 同上
専門学校・大学・大学院・MBA 学費は家事費
普通自動車運転免許の取得費 誰でも取る一般的な資格
大型・二種免許(運送業などで業務に直結) 業務に直接必要と説明できるかによる
語学スクール(一般的な英会話) 私生活にも役立つ
業務で必要な特定言語の研修(海外案件が現にある等) 案件との対応が示せるか

「△」は説明責任が重いという意味です。落ちる可能性はありますが、根拠の資料を残しておく必要があります。

費目全体の判定は経費にできるもの・できないもの一覧を参照してください。

なぜ「税理士試験の予備校代」は落ちないのか

税理士が言うと説得力があるかもしれないので、自分の業界の例で説明します。

税理士試験の予備校代は、税理士事務所を営んでいる人でも必要経費になりません。すでに資格を持っているので受験しないから——ではなく、仮に受験するとしても、新しい資格を得るための支出だからです。

同じ理屈で、

  • 不動産業をやりながら宅建を取る → 受験料・講座代は経費にならない
  • 記帳代行をやりながら簿記2級を取る → 同じく経費にならない
  • 建設業をやりながら施工管理技士を取る → 同じく経費にならない

一方で、すでに持っている資格を維持するための費用は経費になります

種類 判定
資格を取る(受験料・講座)
資格を維持する(登録免許税・年会費・更新研修・法定講習)

宅建士の法定講習、建築士の定期講習、医師・看護師の更新研修などは、受けないと業務ができなくなるので必要経費です。

開業前に払った分は「開業費」になる

ここが実務上いちばん使える論点です。

開業前に支払った、事業を始めるために必要な費用は「開業費」として繰延資産に計上できます。そして開業費は任意償却——好きな年に、好きな額だけ経費にできます。

開業準備のためのセミナー参加費・書籍代・視察費用などは、ここに入る余地があります。

支出のタイミング 扱い
開業後に払った業務関連の研修費 その年の必要経費(研修費)
開業前に払った準備のための費用 開業費(好きな年に落とせる)
開業前でも資格取得のための受験料 どちらにもならない(家事費)

3行目に注意してください。開業費に入れれば何でも落ちるわけではありません。もともと経費性がないものは、開業前でも経費になりません。

開業費の範囲は開業費はどこまでOK?いつまで遡れる?、落とし方は開業費は「好きな年に一気に経費化」できるにまとめています。

従業員に取らせる場合

人を雇っている場合は、話が変わります。事業主本人の資格取得費は落ちないのに、従業員のものは落ちることがあります。

ケース 扱い
業務上必要な技能講習を受けさせる(フォークリフト等) 経費(研修費)。給与課税なし
業務命令で受けさせる法定研修 経費。給与課税なし
本人の希望で個人的な資格を取らせる(費用を負担) 給与として課税される
会社が全額出して国家資格を取らせ、本人に帰属する 給与とみなされる余地が大きい

判断の軸は「その資格が業務の遂行に直接必要か」と「本人に一身専属的に帰属するか」です。給与と判定されると源泉徴収が必要になります(初めて人を雇うときの手続き一覧)。

書籍・セミナーで気をつけること

通りやすい費目ですが、無条件ではありません。

書籍

  • 業務に関係する本は問題ありません
  • 小説・趣味の本・自己啓発書は、業務との関連を説明できなければ落ちません
  • Kindleなどの電子書籍も同じ。購入履歴(電子取引データ)の保存が必要です

セミナー・オンラインサロン・コンサル

  • 参加費だけでなく、内容が分かる資料(申込画面、案内、レジュメ)を残します
  • 高額なコンサル・スクールは、受けた内容と事業の関係を説明できる状態にしておきます
  • 懇親会費が含まれる場合、その部分は交際費として整理しておくと説明しやすくなります

旅費を伴う場合

よくある質問(FAQ)

Q. 経費にならない資格取得費は、どこにも入れられませんか。
所得税では控除できません。給与所得者であれば特定支出控除に「資格取得費」の枠がありますが(所得税法57条の2)、事業所得には同じ制度がありません。教育訓練給付金など、税制以外の支援制度を確認してください。

Q. 資格を取ったあと、その資格で仕事を増やしました。それでもだめですか。
だめです。判定は支出した時点で行います。「結果として役に立った」は要件になりません。

Q. 開業前に取った資格の講座代を、開業費に入れてもいいですか。
おすすめしません。開業費は「事業を始めるために特別に支出した費用」ですが、個人に帰属する資格の取得費はそもそも経費性がないため、開業費に入れても否認の対象になります。

Q. 同じセミナーに家族と2人で参加しました。
事業に従事していない家族の分は経費になりません。青色事業専従者として実際に働いている家族であれば、業務に必要な研修として経費にできる余地があります。

Q. オンラインサロンの月会費はどうですか。
業務に関する情報収集・人脈形成として説明できるなら経費になり得ます。ただし趣味性の高いサロン参加実態がないサロンは落ちません。参加ログやアーカイブ視聴の記録を残してください。

Q. 資格の登録料・年会費は経費ですか。
はい。すでに持っている資格を業務のために維持する費用(登録免許税、登録手数料、会費、賠償責任保険料など)は必要経費です。

Q. 書籍代が年間30万円あります。多すぎますか。
金額そのものが問題になることは少ないですが、売上規模との釣り合い内容は見られます。何を買ったか分かるレシート(品名入り)を残しておいてください。

まとめ

  • 判定軸は「今の仕事を回すため」か「新しい仕事に就くため」か
  • 書籍・業界セミナー・法定講習・更新研修・技能講習・団体会費は経費
  • 受験料・予備校・スクール・大学院は原則アウト。資格は個人に一生帰属するから
  • 資格を「取る」費用は✗、「維持する」費用は○
  • 開業前の準備費用は開業費として任意償却できる(ただし経費性のないものは除く)
  • 従業員に取らせる場合は「業務に直接必要か」で経費/給与が分かれる
  • 書籍は品名入りのレシート、セミナーは内容が分かる資料を残す
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法37条1項(必要経費)/45条1項1号(家事上の経費)/57条の2(給与所得者の特定支出控除・資格取得費。事業所得には適用がない)/204条(報酬の源泉徴収)
  • 所得税法施行令96条(家事関連費)/7条1項1号(繰延資産=開業費)/137条3項(繰延資産の任意償却)
  • 所得税基本通達2-29(繰延資産の範囲)/36-29の2(使用者が負担する研修費用等)
  • 国税庁タックスアンサー「やさしい必要経費の知識」「給与所得者の特定支出控除」
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です

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