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更新日 2026-07-26 節税・経費

経営セーフティ共済は個人事業主も使える|年240万円が全額経費、ただし出口で課税される

個人事業主が使える節税制度のなかで、1年に落とせる金額がいちばん大きいのがこれです。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)。月20万円、年240万円が全額必要経費になります。前納を使えば、初年度に最大480万円を経費にできます。

ただし——これは節税ではなく、課税の繰延べです。受け取るときに全額課税されます。ここを理解しないまま入ると、出口で困ります。

この記事の結論
– 掛金は月5,000円〜20万円。年240万円まで全額が必要経費(所得控除ではない)
前納が使える。年内に翌1年分をまとめて払えば、初年度は最大480万円
– 掛金総額の上限は800万円
40か月以上納付すれば解約手当金は100%戻る
解約手当金は事業所得の収入になる。だから節税ではなく繰延べ
2024年10月1日以後に解約すると、2年間は再加入しても経費にできない
– 個人は確定申告書に明細書の添付が必要。忘れると経費にならない
不動産所得だけの人は加入できない

どんな制度か

正式には「中小企業倒産防止共済制度」。独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。

本来の目的は連鎖倒産の防止です。取引先が倒産して売掛金が回収できなくなったとき、掛金総額の10倍(上限8,000万円)まで、無担保・無保証人・無利子で貸してもらえます。

その掛金が全額経費になるため、節税目的で使われることが非常に多い制度でもあります。

項目 内容
掛金 5,000円〜20万円(5,000円単位)。増額・減額できる
年間の上限 240万円
掛金総額の上限 800万円(到達後は積立てが止まる)
税務上の扱い 個人は事業所得の必要経費(法人は損金)
加入資格 引き続き1年以上事業を行っている中小企業者・個人事業主
前納 1年以内の前納は、その年の必要経費にできる

小規模企業共済・iDeCoとの決定的な違い

同じ「共済」でも、税務上の箱がまったく違います。

経営セーフティ共済 小規模企業共済 iDeCo
年間の上限 240万円 84万円 81.6万円
税務上の箱 必要経費 所得控除 所得控除
事業所得を減らすか 減らす 減らさない 減らさない
出口の課税 事業所得の収入 退職所得等(優遇あり) 退職所得等(優遇あり)
引き出し いつでも(40か月未満は減額) 廃業・退職時 60歳まで不可

いちばん重要なのは太字の行です。

小規模企業共済とiDeCoは所得控除なので、事業所得の金額そのものは変わりません。一方、経営セーフティ共済は必要経費なので、事業所得が直接減ります。

これが効いてくるのは次の場面です。

  • 個人事業税の計算(事業所得がもとになる)
  • 国民健康保険料の計算(総所得金額等がもとになる)
  • 保育料・各種の所得判定

事業所得を下げたいなら、経営セーフティ共済のほうが効きます。ただし出口の優遇は小規模企業共済のほうが上です。順番の考え方は小規模企業共済とiDeCo、どっちを先に・いくら掛ける?と合わせて読んでください。

最大の注意点:出口で課税される

解約したときに受け取る解約手当金は、事業所得の総収入金額になります。

これを知らずに入ると、こうなります。

加入中(5年) 解約した年
掛金 年240万円を経費に
解約手当金 1,200万円が収入
その年の所得 毎年240万円ずつ低い 1,200万円上乗せ

所得税は累進課税なので、1年に1,200万円が乗ると税率が跳ね上がります。毎年240万円ずつ落としていたときの税率(たとえば20%)より、受け取る年の税率(33〜40%)のほうが高くなれば、トータルで損です。

だから出口の設計が必須になります。

出口の作り方 内容
赤字の年に解約する 大きな設備投資、事業縮小など所得が落ちる年に合わせる
廃業する年に解約する 売上が減り、他の経費も出るタイミング
大きな経費が出る年に合わせる 修繕、車両の購入など
法人成りのタイミング 法人へ引き継げる場合がある(要件を中小機構で確認)
分割して受け取る 制度上は一括。掛金を減額して調整する

「40か月経ったから解約する」は最悪の選び方です。所得が高い年に解約すると、それまでの節税が全部戻ってきます。

解約手当金の返戻率

40か月が分岐点です。

掛金の納付月数 解約手当金
12か月未満 0円(掛け捨て)
12か月以上 40か月未満 掛金総額の80%以上100%未満(月数に応じて上昇)
40か月以上 100%

※これは自己都合による解約(任意解約)の場合です。増額・減額をした場合の計算は掛金区分ごとに行われます。

12か月未満で解約すると1円も戻りません。短期の節税目的では使えない制度です。

【重要】2024年10月から始まった「解約後2年ルール」

かつては「40か月で解約して全額受け取り、また入り直して経費にする」という使い方がありました。これは封じられました。

令和6年(2024年)10月1日以後に共済契約を解除した場合、その解除の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金は、必要経費(法人は損金)に算入できません。

法人・個人ともに同じ扱いです。解約したら2年間は「入り直しても経費にならない」ということです。

これにより、この制度は短期で回すものではなく、中期で持つものに性格が変わりました。加入するなら、最低でも40か月+出口の年までを見通して入ってください。

個人事業主が必ず引っかかる3つの落とし穴

① 明細書を添付しないと経費にならない

これがいちばん多いミスです。

確定申告書に「中小企業倒産防止共済掛金の必要経費算入に関する明細書」を添付しなければ、必要経費に算入できません。

会計ソフトで経費として仕訳しただけでは足りません。添付が要件です。忘れると、掛けたお金が丸ごと経費にならないという事故になります。

毎年、中小機構から送られてくる掛金の払込証明書を保管し、申告時に明細書を作成してください。

② 不動産所得だけの人は使えない

経営セーフティ共済は「事業」を営む中小企業者のための制度です。

不動産所得しかない人(アパート・駐車場の賃貸のみ)は、原則として加入対象になりません。また、加入できた場合でも、掛金を不動産所得の必要経費にすることはできません(事業所得の必要経費です)。

事業所得と不動産所得の両方がある人は、事業所得側で処理します。

③ 借りると掛金が減る

共済金の貸付けを受けると、借入額の10分の1に相当する額が掛金総額から控除されます(=その分の掛金の権利を失います)。

無利子ですが、実質的には10%のコストがかかっているのと同じです。「無利子だから得」と単純には言えません。

この記事で扱う範囲について
経営セーフティ共済の加入資格の可否・必要書類・掛金の変更手続き・共済金の貸付条件・「倒産」に該当するかの判断は、独立行政法人 中小企業基盤整備機構および委託先の金融機関・商工会議所等の所管です。この記事は「掛金と解約手当金の税務上の取扱い」を扱っています。加入前に必ず中小機構の最新の案内を確認してください。なお、取引先が倒産していない場合(夜逃げなど)は共済金の貸付けの対象外とされるなど、貸付けには制度上の要件があります。

使うべき人・使わないほうがいい人

向いている 向いていない
利益が安定して出ている(所得税率20%以上) 開業して間もない・利益が不安定
出口(解約する年)を設計できる 数年以内に大きな支出予定がある
手元資金に余裕がある 資金繰りがぎりぎり
事業所得を下げたい理由がある(国保・保育料等) 1年で解約するつもり
取引先の与信リスクが現にある 不動産所得のみ

「利益が出たから、とりあえず240万円」は危険です。240万円は現金として出ていきます。納税資金まで使い切ってしまうと、翌年の所得税・住民税・国保で詰みます(稼いだお金、いくら残せば税金で困らない?個人事業主に「後から来る税金」は全部いつ・いくら来る?)。

よくある質問(FAQ)

Q. 前納は本当にその年の経費になりますか。
1年以内の前納であれば、支払った年の必要経費になります。12月に翌年1年分(240万円)をまとめて払えば、その年に240万円+当年分の掛金を計上できます。ただし継続して同じ処理をすることが前提です。毎年やり方を変えるのは認められません。

Q. 掛金を減額できますか。
できます。5,000円単位で減額・増額が可能です。ただし減額すると、その掛金区分ごとに納付月数の管理が分かれるため、解約手当金の計算が複雑になります。

Q. 掛金の支払いを止められますか。
掛金総額が800万円に達すれば自動的に積立てが止まります。それ以前に払えなくなった場合は、掛止め(一定の要件のもと)や解約を検討することになります。

Q. 法人成りしたら引き継げますか。
一定の要件のもとで、個人事業から法人への契約の承継が認められる場合があります。承継できれば、解約手当金を受け取らずに済むので出口の課税を先送りできます。手続きと要件は中小機構に確認してください。法人化の判断そのものは法人化は年収いくらから得?を参照してください。

Q. 節税になっていないなら、入る意味はありますか。
あります。①出口を低い税率の年に持ってこられれば税率差のぶんだけ得、②その間の資金を取引先の倒産に備えた保険として持てる、③事業所得が下がることで国保料や保育料が下がる——この3つです。ただし①は設計が前提です。

Q. 解約手当金にかかる税金を減らす方法はありますか。
その年の所得を下げることです。大きな設備投資、赤字の年、廃業の年に合わせるのが基本です。受け取ってから対策する方法はありません。解約する年を選ぶ、が唯一の対策です。

Q. 40か月経ちましたが、まだ解約しないほうがいいですか。
解約する理由(出口の年に該当する)がないなら、続けたほうが有利です。2024年10月以降は、解約すると2年間は再加入しても経費にできません。「一度解約してリセット」はもうできないと考えてください。

まとめ

  • 掛金は年240万円まで全額必要経費。前納を使えば初年度は最大480万円
  • 上限は掛金総額800万円40か月以上で解約手当金100%
  • 12か月未満の解約は0円。短期では使えない
  • 小規模企業共済・iDeCoと違い、事業所得を直接減らす(国保・保育料にも効く)
  • 解約手当金は事業所得の収入。節税ではなく課税の繰延べ
  • 出口の年を設計してから入る。所得が高い年に解約すると全部戻る
  • 2024年10月1日以後の解約は、2年間は再加入しても経費にできない
  • 明細書の添付が要件。忘れると経費にならない
  • 不動産所得だけの人は使えない
この記事の主な根拠(出典)

  • 租税特別措置法28条1項2号(中小企業倒産防止共済法の共済契約に係る掛金の必要経費算入の特例)/同施行令(明細書の添付要件)
  • 令和6年度税制改正(令和6年10月1日以後に共済契約を解除した場合、その解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する掛金について本特例を適用しない)
  • 中小企業倒産防止共済法(掛金月額5,000円〜20万円、掛金総額800万円、共済金の貸付限度=掛金総額の10倍かつ8,000万円、貸付けを受けた場合の掛金総額からの控除)
  • 所得税基本通達37-30の2(短期前払費用。前納掛金の取扱いの前提となる考え方)
  • 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済」制度案内
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です。掛金の上限・返戻率・貸付条件は改正されることがあります。加入前に中小機構の最新の案内を確認してください

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この記事の位置づけ

この記事は「5 お金を出す節税は、出口まで見てから」の詳細です。

節税は、やる順番で結果が変わります——コース全体のどこにあたるかは、全体像のページで確認できます。

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