確定申告をしなかったらどうなる?無申告加算税・延滞税・青色の取消しと、税務署が把握する道すじ
「少額だから大丈夫」「一度も連絡が来ていないから見つかっていない」。無申告のまま年を越した人が、いちばんよく口にする言葉です。
申告をしないという選択は、税金を払わずに済ませる選択ではありません。申告しなかった期間は、本来の税金に無申告加算税と延滞税が上乗せされて後から請求される時間に変わります
この記事の結論
- 無申告加算税の割合は、いつ気づいて出したかで5%から30%まで動く
- 税務署から調査の事前通知が来る前に自主的に出せば5%で済む。調査を受けた後だと15%から30%
- 法定申告期限から1か月以内に自主的に出し、期限までに全額納めるなど一定の要件を満たせば無申告加算税はかからない
- 延滞税は日割りで増える。令和8年は納期限の翌日から2か月まで年2.8%、それ以後は年9.1%
- 隠したり装ったりして申告しなかったと判断されると、無申告加算税に代えて重加算税40%になる
- 青色申告は、帳簿を見せない場合や隠蔽・仮装があった場合にさかのぼって承認を取り消されることがある
- 期限に遅れるだけでも、青色申告特別控除は55万円・65万円から10万円に下がる
- あとから気づいたときは期限後申告・修正申告・更正の請求の3つ。更正の請求は法定申告期限から5年以内
1. 申告しないと、本税のほかに2種類の負担が積み上がる
日本の所得税は申告納税制度をとっています。納税者が自分で所得と税額を計算し、申告して納める仕組みです。申告がなければ、税務署は本来の税額を確定させる手続きを別に取ることになります。
その結果として発生するのが、本来の税金(本税)に加わる次の2つです。性質がまったく違うので、分けて考えてください。
| 種類 | 性質 |
|---|---|
| 無申告加算税 | 期限内に申告しなかったことに対する加算税。本税に一定の割合を掛けて計算する。時間ではなく「いつ出したか」で率が決まる |
| 延滞税 | 納付が遅れた期間に対する利息に相当するもの。法定納期限の翌日から納付の日までの日数に応じて自動的に課される |
延滞税は本税だけを対象に計算されます。加算税に対して延滞税がかかることはありません。
2. 無申告加算税は「いつ気づいて出したか」で5%から30%まで変わる
同じ無申告でも、税務署から声がかかる前に自分で出したのか、調査の事前通知を受けた後なのか、調査そのものを受けた後なのかで、割合が大きく変わります。
| 出したタイミング | 無申告加算税の割合 |
|---|---|
| 調査の事前通知の前に、自主的に期限後申告をした | 5% |
| 事前通知の後、調査による決定を予知する前に期限後申告をした | 50万円までの部分は10%/50万円超300万円までの部分は15%/300万円超の部分は25% |
| 調査を受けた後に期限後申告をした、または税務署から決定を受けた | 50万円までの部分は15%/50万円超300万円までの部分は20%/300万円超の部分は30% |
300万円超の区分(25%・30%)は、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの、つまり令和5年分以降について適用されます。旧来の上限は20%でしたが、高額な無申告に対する割合が引き上げられました。
さらに加算される場面が2つあります。
- 繰り返した場合の加算。 期限後申告をした年分の前年および前々年について無申告加算税や重加算税を課されたことがある、または課されるべきと認められるときは、本税に10%を乗じた額が上乗せされます
- 帳簿を出さなかった場合の加算。 調査で帳簿の提示または提出を求められて応じなかった場合や、帳簿への売上金額の記載が本来の金額の2分の1未満だった場合は10%、3分の2未満だった場合は5%が上乗せされます
3. 1か月以内なら、無申告加算税がかからない場合がある
期限に間に合わなかったとしても、すぐ手を打てば加算税を回避できる規定があります。次の要件をすべて満たす期限後申告には、無申告加算税はかかりません。
- その期限後申告が、法定申告期限から1か月以内に自主的に行われていること
- その期限後申告で納める税金の全額を、法定納期限までに納付していること(口座振替納付の手続をした場合は、期限後申告書を提出した日まで)
- 期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつこの不適用を受けたこともないこと
「間に合わなかったからもう遅い」と考えて放置すると、この1か月を逃します。3月15日を過ぎたことに気づいた時点でまだ4月なら、まずここを確認してください。
4. 延滞税は日割りで増え続ける
延滞税は、法定納期限の翌日から実際に納付する日までの日数に応じて自動的に課されます。原則の割合は納期限の翌日から2か月までが年7.3%、それ以後が年14.6%ですが、実際には特例基準割合による低い方の割合が適用されます。
| 期間 | 令和8年1月1日から令和8年12月31日までの割合 |
|---|---|
| 納期限の翌日から2か月を経過する日まで | 年2.8% |
| 納期限の翌日から2か月を経過した日以後 | 年9.1% |
令和4年1月1日から令和7年12月31日までの期間は、それぞれ年2.4%と年8.7%でした。この割合は毎年見直されるため、複数年にまたがる滞納では期間ごとに違う率で計算されます。
注意したいのが、期限後申告の場合の「納期限」の考え方です。期限後申告や修正申告では、申告書を提出した日が納期限になります。提出したその日に納めれば、2か月経過後の高い割合に入る前に止められます。逆に、申告書だけ出して納税を先送りにすると、そこから2か月で年9.1%の区間に入ります。
5. 隠したと判断されると、重加算税40%に置き換わる
無申告加算税の代わりに課されるのが重加算税です。課税標準や税額の計算の基礎となるべき事実の全部または一部を隠蔽または仮装し、それに基づいて法定申告期限までに申告書を提出しなかったときは、無申告加算税に代えて本税に40%を乗じた重加算税が課されます(国税通則法68条2項)。
何が隠蔽・仮装に当たるかは、実際の調査事例から読み取れます。国税庁が公表している令和6事務年度の事例には、次のようなものが挙がっています。
- ゲーム機器やスマートフォンの転売収入を申告せず、売上に係る書類だけをすべて破棄していた(経費の書類は残していた)
- 複数の店舗を従業員名義で営業し、自分が経営者であることを表に出さないまま無申告だった
- 相続で取得した金地金を売却し、売却代金を親族名義の口座へ振り込んで自分の口座残高を減らしていた
いずれも重加算税が課されています。単に出し忘れていたのか、見つからないように動いたのかで、負担は倍以上変わります。
6. 青色申告は、承認そのものを取り消されることがある
青色申告の承認を受けている人については、次のいずれかに当たる事実があると、税務署長がその年までさかのぼって承認を取り消すことができます(所得税法150条1項)。取り消されると、その年分以後に提出した青色申告書は、青色申告書以外の申告書とみなされます。
- 帳簿書類の備付け、記録または保存が、財務省令で定めるところに従って行われていないこと
- 帳簿書類について、税務署長の指示に従わなかったこと
- 帳簿書類に取引の全部または一部を隠蔽・仮装して記載したこと、その他記載事項の真実性を疑うに足りる相当の理由があること
国税庁の事務運営指針は、この運用をさらに具体化しています。1号にいう「備付け、記録又は保存」には、税務職員に提示することが含まれるとされています。調査で再三求められたにもかかわらず正当な理由なく提示を拒んだ場合は、提示がされなかった年分のうち最も古い年分以後について承認を取り消す扱いです。
隠蔽・仮装については、更正等の後の所得金額のうち不正事実に基づく所得金額が50%を超えるとき(その金額が500万円に満たないときを除く)に取り消す、という基準が置かれています。
承認が取り消されれば、青色申告特別控除も、青色事業専従者給与も、純損失の3年間の繰越しも、まとめて使えなくなります。
7. 期限に遅れるだけでも、特別控除は10万円に下がる
隠蔽や仮装がなくても、期限を過ぎるだけで失うものがあります。青色申告特別控除の55万円は、貸借対照表・損益計算書などを添付した申告書をその年の確定申告期限(翌年3月15日)までに提出することが要件です。e-Taxまたは優良な電子帳簿の要件を満たして65万円を取る場合も、この期限要件は前提として付いてきます。
還付申告として提出する人であっても、55万円・65万円の適用を受けるには確定申告期限までの提出が必要です。1日遅れれば控除額は10万円になり、差額は45万円または55万円。所得税だけでなく住民税と国民健康保険料にも波及します。
8. 税務署はどこから把握しているか
「申告していないのだから、税務署には情報がないはず」という前提が、そもそも成り立ちません。申告書は、税務署が持っている情報の一部でしかないからです。
- 支払った側から届く資料。 給与の源泉徴収票や報酬の支払調書などの法定調書は、支払った側が税務署に提出します。受け取った側が申告していなくても、支払の事実は残ります
- 金融機関経由の資料。 国外送金等調書のように、一定額を超える資金の動きが税務署に届く仕組みがあります。実際、国外からの多額の受金を内容とする調書から国外不動産の賃料収入を把握した事例が公表されています
- インターネット取引の分析。 国税庁には電子商取引専門調査チームが置かれ、ネット取引に関する資料情報を収集・分析しています
- 事業者への情報照会。 国税局長は、特定取引の相手方となる事業者や取引の場を提供する事業者などに対し、対象者の範囲を定めて報告を求めることができます(国税通則法74条の7の2)
実際の調査結果も公表されています。令和6事務年度、所得税の無申告者に対する実地調査は4,812件行われ、1件当たりの申告漏れ所得金額は2,992万円でした。所得税の実地調査全体の1,486万円と比べて2倍です。1件当たりの追徴税額は524万円で、こちらも全体の299万円の1.8倍にあたります。消費税の無申告者に対する1件当たりの追徴税額も296万円と、過去最高を更新しました。
無申告は、期限内にきちんと申告している人との間に不公平を生みます。だからこそ、限られた調査の枠が優先的に振り向けられている領域だと読み取れます。
9. あとから気づいたときに使える3つの手続き
放置し続ける以外の道は用意されています。状況によって使う手続きが変わります。
| 状況 | 使う手続きと期限 |
|---|---|
| そもそも申告していなかった | 期限後申告。期限は定められていないので、気づいた時点でできるだけ早く提出する |
| 申告はしたが、納める税金が少なすぎた | 修正申告。事前通知の前に自主的に出せば過少申告加算税はかからない |
| 申告はしたが、納める税金が多すぎた、または還付される税金が少なすぎた | 更正の請求。原則として法定申告期限から5年以内 |
還付だけを受けるための申告(還付申告)は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。源泉徴収されたまま申告していない年があるなら、こちらは納税ではなく還付の話です。
赤字だった年についても、放っておかないでください。青色申告をしていれば、その年の純損失を翌年以後3年間繰り越して所得から控除できます。前年も青色申告をしていた場合は、前年の所得に繰り戻して所得税の還付を受ける道もあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 申告していない年が何年もあります。どこから手をつければいいですか。
調査の事前通知が来る前に自主的に出せば、無申告加算税は5%で済みます。通知が来てからでは10%以上、調査後なら15%以上です。年分ごとに資料をそろえてから全部まとめて出そうとすると、その間に通知が来る可能性があります。所轄の税務署に相談したうえで、着手の順番を決めてください。
Q. 期限を1週間過ぎただけです。何かペナルティはありますか。
法定申告期限から1か月以内に自主的に提出し、納める税金の全額を法定納期限までに納付していて、過去5年間に無申告加算税や重加算税を課されたことがなければ、無申告加算税はかかりません。ただし青色申告特別控除は10万円に下がります。
Q. 延滞税は最大で年14.6%と聞きました。
年14.6%は法律上の原則の割合です。実際には特例基準割合を使った低い方が適用され、令和8年は納期限の翌日から2か月までが年2.8%、それ以後が年9.1%です。割合は毎年見直されます。
Q. 無申告だと青色申告は必ず取り消されますか。
期限に遅れたこと自体が取消事由になるわけではありません。取消しは、帳簿書類の備付け・記録・保存が要件どおりでない場合、税務署長の指示に従わない場合、帳簿書類に隠蔽・仮装があった場合に行われます。調査で帳簿の提示を再三求められて正当な理由なく拒むと、この1つ目に当たると扱われます。
Q. 払えそうにない金額になりそうです。
申告と納付は別の手続きです。納付が難しいことは、申告を遅らせる理由にはなりません。申告を遅らせると加算税と延滞税がさらに積み上がります。まず申告書を出し、納付については所轄の税務署に相談してください。
まとめ
- 気づいた時点ですぐ出す。 事前通知の前なら無申告加算税は5%、調査後なら最大30%まで上がる
- 期限から1か月以内なら、加算税ゼロの道がある。 全額納付と過去5年の実績が条件
- 申告書を出した日に納める。 期限後申告では提出日が納期限。2か月を過ぎると延滞税が年2.8%から年9.1%に切り替わる
- 書類を捨てない、名義を借りない。 隠蔽・仮装と判断されれば重加算税40%に置き換わる
- 調査では帳簿を出す。 提示を正当な理由なく拒むと、青色申告の承認がさかのぼって取り消される
- 期限内提出そのものが控除の条件だと覚える。 遅れれば青色申告特別控除は10万円
- 払いすぎ・出し忘れも同じ窓口で直せる。 更正の請求は法定申告期限から5年、還付申告は翌年1月1日から5年
- 赤字の年こそ申告しておく。 青色申告なら純損失を3年間繰り越せる。前年が青色なら繰戻し還付も選べる
この記事の主な根拠(出典)
- 国税庁 タックスアンサー No.2024 確定申告を忘れたとき(無申告加算税5%・10/15/25%・15/20/30%、繰り返しと帳簿不提示の加算、1か月以内の不適用要件)
- 国税庁 タックスアンサー No.9205 延滞税について(令和8年の年2.8%・年9.1%、期限後申告の納期限は提出日、加算税には延滞税がかからないこと)
- 国税庁 タックスアンサー No.2026 確定申告を間違えたとき(修正申告と過少申告加算税、更正の請求は法定申告期限から5年)
- 国税庁 タックスアンサー No.2030 還付申告(翌年1月1日から5年)
- 国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除(55万円・65万円は確定申告期限までの提出が要件)
- 国税庁 タックスアンサー No.2070 青色申告制度(純損失の繰越し3年と繰戻し還付)
- 国税庁 個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)(帳簿書類の提示拒否、不正事実に係る所得金額が50%超の基準)
- 国税庁 令和6事務年度における所得税及び消費税調査等の状況(無申告者調査4,812件、1件当たり申告漏れ所得2,992万円・追徴税額524万円、消費税296万円、調査事例)
- e-Gov法令検索 国税通則法(66条 無申告加算税、68条2項 無申告の重加算税40%、74条の7の2 特定事業者等への報告の求め)
- e-Gov法令検索 所得税法(150条 青色申告の承認の取消し)
- ※出典の各ページは2026年8月7日に確認しました。制度は改正されることがあります
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