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更新日 2026-08-07 経理と確定申告

決算書はいつ何を確定させる?個人事業主の1年を記帳・決算整理・決算書・申告書の4段階で追う

会計ソフトを入れたので、決算書はボタンひとつで出てくる。そう思っている人は少なくありません。

ソフトが出すのは、入力された数字の集計結果です。個人事業主の1年は「日々の記帳」「決算整理」「決算書」「申告書」の4段階で進み、税額を左右する判断のほとんどは決算整理に集まっています

この記事の結論

  • 1年の流れは記帳 → 決算整理 → 決算書 → 申告書の4段階。段階ごとに確定するものが違う
  • 日々の記帳で確定するのは取引の事実。日付・相手・金額・内容を、証拠書類とセットで残す
  • 12月31日を過ぎたら、まず現金と預金の残高を実物に合わせる。ここが合わないと決算整理に進めない
  • 決算整理の柱は棚卸・減価償却・未払と未収・家事按分の4つ
  • 決算書(青色申告決算書または収支内訳書)で確定するのは事業の所得金額まで
  • 所得控除と税額は決算書ではなく確定申告書で確定する。ここから先は事業の話ではなく個人の話
  • 所得税の申告期限は原則として翌年3月15日、個人事業者の消費税は3月31日で別枠
  • 帳簿と書類の保存までが1年の流れ。青色申告なら帳簿は7年が原則

1. 1年の流れは4段階。どこで何が決まるのか

個人事業主の会計期間は、暦年で固定されています。1月1日から12月31日までの取引をまとめて、翌年に申告します。法人のように決算期を選ぶことはできません。

その1年を、確定するものの単位で区切ると4段階になります。

段階 ここで確定するもの
日々の記帳(1月〜12月) 取引が「あった」という事実と、その金額・相手・内容
決算整理(年明け〜2月) 12月31日時点の残高と、その年に属する費用・収益の範囲
決算書(2月〜3月) 事業の所得金額(売上から必要経費と青色申告特別控除を引いた額)
申告書(3月15日まで) 所得控除を差し引いた課税所得と、納める(または戻る)税額

この順番は入れ替えられません。残高が合わないまま決算整理をしても、出てくる利益は根拠のない数字になります。逆にいえば、前の段階が終わっていれば次の段階はほとんど機械的に進みます。

なお、この記事は「何をどの順で確定させるか」の話です。できあがった申告書をどうやって税務署に出すか、どう納めるかは確定申告をe-Taxで出す手順にまとめています。

2. 日々の記帳で確定させるのは「取引の事実」

記帳は、利益を計算する作業ではありません。取引があったという事実を、あとから検証できる形で残す作業です。国税庁は、記帳すべき内容を「取引の年月日、売上先・仕入先その他の相手方の名称、金額、日々の売上げ・仕入れ・経費の金額等」と示しています。

事業所得、不動産所得または山林所得を生ずべき業務を行う人は、所得税の申告が必要ない場合であっても、記帳と帳簿等の保存の対象になります。白色申告であっても同じです。

ここで気をつけたいのは、記帳と証拠書類は別物だということです。帳簿に金額を打ち込んでも、領収書や請求書を捨ててしまえば、その取引を裏づけるものが残りません。銀行口座やクレジットカードを事業用とプライベート用で分けておくと、この段階の作業量がはっきり減ります。分け方の考え方は家賃・電気・ネット・スマホは何割経費にで扱っています。

記帳を12月まで放置すると、年明けの作業がすべて後ろにずれ込みます。月に1回だけ締める習慣をつけておくと、決算整理の時期に慌てずにすみます(個人事業主に月次決算は必要か)。

3. 年末に最初にやるのは、残高を実物に合わせること

年が明けたら、いきなり決算整理仕訳を切るのではなく、まず帳簿の残高が現実と一致しているかを確かめます。

  • 現金の残高が、実際の手元の金額と合っているか
  • 預金の残高が、12月31日時点の通帳やネットバンキングの残高と合っているか
  • 売掛金の残高が、まだ入金されていない請求書の合計と合っているか
  • 買掛金・未払金の残高が、まだ払っていない請求書の合計と合っているか
  • 借入金の残高が、金融機関の返済予定表と合っているか

ズレが出たら、原因をさかのぼって直します。よくあるのは、事業用口座から生活費を引き出した取引が経費として記帳されているケースと、同じ入金を二重に計上しているケースです。

青色申告で65万円の控除を狙う場合は、貸借対照表を添付します。この表が合わないという相談は毎年出ますが、多くは残高合わせの段階でつまずいています(65万円控除に必要な貸借対照表が合わない)。

4. 決算整理の柱は4つ

残高が合ったら、決算整理に入ります。決算整理とは、支払った時期や入金した時期ではなく「その年に属するかどうか」で費用と収益を並べ直す作業です。なぜこの作業が必要になるのかは毎日記帳しているのに、なぜ年末に決算整理が必要なのかにゆずり、ここでは何をやるかを4つに整理します。

やること 何を確定させるか
棚卸 12月31日時点で売れ残っている在庫を数え、売上原価を確定させる
減価償却 高額な資産の取得価額のうち、その年の必要経費になる部分を確定させる
未払と未収 払っていない費用・もらっていない収入のうち、その年に属する分を確定させる
家事按分 家賃や通信費などの支出のうち、業務に必要な部分を区分して確定させる

棚卸

仕入れた商品は、仕入れた年にすべて経費になるわけではありません。事業所得の必要経費に入るのは売上原価であり、売れ残った在庫はその年の経費から外れます。だから12月31日時点の在庫を数えて棚卸表を作る必要があります。物販やハンドメイドの具体的な出し方は在庫は経費にならないで扱っています。

在庫をいくらで評価するかには複数の方法があり、方法を選ぶ場合は届出書を出します。新たに事業を開始した年などに提出する場合の期限は、その年分の確定申告期限までです。届け出ていない場合は法定の方法で計算します。

減価償却

建物、機械装置、器具備品、車両運搬具などは、買った年に全額が経費になるのではなく、使用可能期間にわたって分割して必要経費にしていきます。金額による区分は次のとおりです。

  • 使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のもの … 業務の用に供した年に全額を必要経費にする
  • 取得価額が10万円以上20万円未満のもの … 一定の要件のもとで一括し、合計額の3分の1ずつを3年間の各年の必要経費にできる(一括償却資産)
  • それ以上のもの … 法定耐用年数にわたって償却する

このほか青色申告者には、少額の減価償却資産をまとめて必要経費にできる特例があります。ただし金額の基準と適用期限は改正で動くので、使う年の基準を確認してください(少額減価償却資産の金額基準)。

未払と未収

必要経費になるのは、その年において債務の確定した金額です。国税庁は債務の確定を次の3つで示しています。

  • その年の12月31日までに債務が成立していること
  • その年の12月31日までに、その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
  • その年の12月31日までに金額が合理的に算定できること

つまり、12月に受けたサービスの請求書が1月に届いて1月に払った場合でも、その費用は12月の年に属します。逆に、来年分の家賃を12月に前払いしても、原則としてその年の経費にはなりません。

家事按分

自宅兼事務所の家賃、電気代、スマートフォン代のように、家事上と業務上の両方にかかわる費用を家事関連費といいます。このうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られます。

ここで問われるのは割合そのものよりも、その割合を出した根拠が残っているかどうかです。使用面積、業務日数、通話明細といった数え方を決めて、メモに残しておきます(家事按分の根拠の残し方)。

5. 決算書で確定するのは「事業の所得金額」まで

決算整理まで終われば、決算書はその集計結果です。青色申告者は青色申告決算書、白色申告者は収支内訳書を作ります。

ここで確定するのは、売上から必要経費と青色申告特別控除を差し引いた事業の所得金額までです。医療費控除も社会保険料控除も、扶養控除も、この書類には出てきません。決算書は「事業がいくら儲かったか」を示す書類だからです。

青色申告特別控除は、記帳の方法と申告のしかたによって金額が変わります。正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で記帳し、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して期限内に提出することが、55万円と65万円に共通する土台です。65万円にするには、これに加えてe-Taxによる電子申告か、優良な電子帳簿の要件を満たした保存と届出のどちらかが必要になります(青色申告「65万・55万・10万」の分かれ道)。

6. 申告書で確定するのは「税額」。消費税は別の申告

決算書で出た事業の所得金額を、確定申告書に書き移します。ここからは個人の話です。事業の所得に給与や不動産などの所得を合算し、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除、基礎控除といった所得控除を差し引いて課税所得を出し、税率をかけて税額を計算します。

2枚の書類がどうつながっているかは青色申告決算書と確定申告書は何が違うかで分解しています。所得控除の集め方は控除チェックリストが便利です。

忘れやすいのが消費税です。課税事業者になっている人は、所得税とは別に消費税の確定申告書を作ります。期限も別で、所得税より後ろにずれます(インボイス登録したら消費税も申告)。

7. 期限から逆算した時期の目安

所得税の確定申告の期間は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日までです。期限が土曜日・日曜日・祝日にあたるときは、その翌日が期限になります。実際、令和7年分の申告・納付期限は令和8年3月16日(月)でした。

手続き 期限
所得税および復興特別所得税の申告・納付 原則として翌年3月15日
個人事業者の消費税および地方消費税の申告・納付 原則として翌年3月31日
棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出 その年分の確定申告期限まで

この期限から逆算すると、作業の目安はこうなります。1月のうちに12月分までの記帳を終える。1月中旬から2月上旬で残高合わせと決算整理を終える。2月中に決算書と申告書を作る。3月上旬に提出する。3月に入ってから記帳を始めると、決算整理を検討する時間が残りません。

期限に遅れると、納める税金のほかに無申告加算税と延滞税がかかります。金額は、税務署の調査の連絡が来る前に自分から出したかどうかで変わります(加算税早見表)。

8. 作り終わったあとに残す帳簿と書類

提出したら終わりではありません。帳簿と書類の保存までが1年の流れです。青色申告の場合の保存期間は次のとおりです。

保存するもの 期間
仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など 7年
決算関係書類(損益計算書、貸借対照表、棚卸表など) 7年
現金預金取引等関係書類(領収書、小切手控、預金通帳、借用証など) 7年(前々年分の事業所得および不動産所得の金額が300万円以下の人は5年)
その他の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など) 5年

消費税の課税事業者が仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等や、インボイス発行事業者として交付した適格請求書の写しは、上にかかわらず7年間の保存が必要です。何年保存かの早見表は領収書・帳簿は何年とっておくかにまとめています。

請求書や領収書を電子データで受け取った場合は、そのデータを一定の要件で保存します。紙に印刷して保存すればよいという扱いではありません(電子帳簿保存法で個人事業主が最低限やること)。

よくある質問(FAQ)

Q. 会計ソフトを使えば決算整理も自動でやってくれますか

棚卸の数量、減価償却の耐用年数、家事按分の割合は、事業主が入力しないとソフトは判断できません。ソフトが自動化してくれるのは、明細の取り込みと集計、決算書の様式への転記です。決算整理は判断が要る部分なので、ここだけは手を動かすことになります。

Q. 赤字でも決算書と申告書を作る必要はありますか

青色申告なら、事業から生じた純損失を翌年以後3年間にわたって各年の所得金額から差し引けます。ただしこれは赤字が出た年分の申告書を出していることが前提です。赤字だから出さなくてよいと考えて放置すると、翌年黒字になったときに差し引けなくなります(赤字の年こそ申告する)。

Q. 12月に買ったパソコンは、その年の経費になりますか

取得価額が10万円未満なら、業務の用に供した年に全額が必要経費になります。10万円以上なら減価償却の対象で、12月に使い始めた場合は年の途中から使った月数分だけがその年の経費です。買った日ではなく使い始めた日が基準になる点に注意してください。

Q. 決算書は税務署に提出しますが、帳簿も提出するのですか

帳簿は提出せず、手元で保存します。ただし税務調査で提示・提出を求められたときに出せない状態だと、加算税が加重される取扱いがあります。保存は義務であって任意の整理整頓ではありません。

Q. どこまで自分でやって、どこから税理士に頼むべきですか

記帳と残高合わせまでを自分でやり、決算整理から相談するという分け方が現実的です。決算整理は判断が集中する場所であり、ここを間違えると決算書も申告書もつられて狂います。費用感は税理士に払う費用の相場を参考にしてください。

まとめ

  • 1年を4段階に分けて考える。記帳、決算整理、決算書、申告書の順で、確定するものが変わっていく
  • 記帳では取引の事実だけを固める。日付・相手・金額・内容を、領収書や請求書とセットで残す
  • 年明けの最初の作業は残高合わせ。現金・預金・売掛金・買掛金・借入金を実物と突き合わせてから、決算整理に進む
  • 決算整理は棚卸・減価償却・未払と未収・家事按分の4つを順に片づける。ここが税額を左右する
  • 決算書で止まるのは事業の所得金額まで。所得控除と税額は確定申告書で確定させる
  • 期限は所得税が原則3月15日、個人事業者の消費税が3月31日。1月に記帳を終え、2月に決算整理と書類作成を終える形で逆算する
  • 提出後は保存まで。青色申告なら帳簿と決算関係書類は7年、請求書などその他の書類は5年が原則

この記事の主な根拠(出典)

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この記事の位置づけ

この記事は「2 仕訳が決算書になるまで」の詳細です。

確定申告は、2種類の書類を作る作業です——コース全体のどこにあたるかは、全体像のページで確認できます。

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