経理は何のためにやるのか。帳簿を渡す先は3つある
- 帳簿を渡す先は3つある税務署、銀行、自分の3つです。同じ1組の数字を、3者がそれぞれ違う目的で見ます。
- 税務署は、1年のもうけと税額を見る税務署に出すことだけが義務です。決算書と申告書の2枚を、翌年3月15日までに出します。
- 銀行は、返せる人かどうかを決算書で見る借りるときは決算書と申告書の控えを出します。税金を減らそうと利益を小さくすると、借りられる額も小さくなります。
- 自分は、毎月の数字で次の判断をするここがいちばん役に立ちます。売上・経費・残ったお金を毎月見ると、値上げや仕入れを自分の数字で決められます。
- 同じ帳簿が3つに使える。だから月ごとに締める3つとも材料は同じ帳簿です。締める間隔を1年から1か月に変えれば、残りの2つも手に入ります。
- まとめ
会計ソフトを開くたびに、これは税務署に出すためだけの作業だと感じている人は多いはずです。だから年が明けてから、1年分をまとめて片づけます。
ただ、出来上がった帳簿を受け取る相手は、税務署、銀行、自分の3つです。作る帳簿は1組なのに、3者がそれぞれ違う目的でそれを読みます。
この記事は、コース「経理と確定申告」0章の解説です。誰が・いつ・何を見るのかを先に3つとも知っておくと、毎月手を動かす理由が分かります。
帳簿を渡す先は3つある
税務署、銀行、自分の3つです。同じ1組の数字を、3者がそれぞれ違う目的で見ます。
- 1年のもうけを計算して、決算書と申告書という2枚の紙にして出します
- 3つのうちこれだけが義務です。税務調査で見られるのもこの帳簿
- 事業でお金を借りるとき、銀行や公庫が読むのはこの決算書
- 住宅ローンの審査も、部屋を借りるときの収入の証明も同じ2枚
- 何にいくら使って、いくら残ったのかが毎月見えます
- 値上げ・仕入れ・人を雇うときに迷いません。納税の資金も先に読めます
1つ目の税務署だけが義務です。ただ、そこだけを見て1年に1回まとめて片づけると、いちばん役に立つ3つ目が手に入りません。かかる手間はほとんど変わらないので、もったいない話です。
税務署は、1年のもうけと税額を見る
税務署に出すことだけが義務です。決算書と申告書の2枚を、翌年3月15日までに出します。
税務署には2枚を出します。事業の1年のもうけを計算した紙が青色申告決算書(白色申告なら収支内訳書)、その人の1年の税額を出す紙が確定申告書です。どちらも翌年3月15日までに出します(所得税法120条)。
| 何を | いつ | どの紙で |
|---|---|---|
| 事業の1年のもうけ | 翌年3月15日まで | 青色申告決算書(白色は収支内訳書) |
| その人ぜんぶの税額 | 翌年3月15日まで | 確定申告書 |
| 日々の取引の記録 | 提出しない | 帳簿と領収書。手元で保存し、調査のときに見せる |
3行目が大事です。帳簿そのものは税務署に出しません。帳簿を集計して作った2枚だけを税務署に出します。だから「税務署のために帳簿をつける」と思っていると、帳簿を自分のために使えないまま終わります。
2枚の役割の違いと、どこで数字がつながっているかは「青色申告決算書」と「確定申告書」は何が違う?で1枚ずつ見ています。そもそも自分に申告が必要かどうかは確定申告が必要な人・不要な人・したほうが得な人にまとめました。出さなかったときに何が起きるかは確定申告をしなかったらどうなる?で説明しています。
銀行は、返せる人かどうかを決算書で見る
借りるときは決算書と申告書の控えを出します。税金を減らそうと利益を小さくすると、借りられる額も小さくなります。
事業でお金を借りるとき、日本政策金融公庫や銀行は、最初に決算書と確定申告書の控えを求めます。ふつうは直近2期分か3期分をそろえて出します。個人事業主の場合、勤め先も給与明細もないので、銀行や公庫は、決算書で返せるかどうかを判断します。
住宅ローンの審査でも、賃貸の入居審査でも、収入の証明として同じ2枚を出します。事業の借入に限った話ではありません。
税金を減らそうとすると、ここで困ったことが起きます。
いま要らないものまで年内に買う
所得税と住民税は確かに減る
借りられる額が減り、必要なときに借りられない
同じ決算書で、税金を減らすほど、借りられる額は小さくなります。どちらを取るかは、この先どのくらいの資金が要るかで決まります。数年先から逆算する考え方は節税しすぎると詰む場面で扱っています。
紙で出しても、控えに税務署の日付印は押されません。令和7年1月から、申告書等の控えへ収受日付印を押すことは行われなくなりました。提出済みだと示す必要があるなら、e-Taxで送って受信通知(メール詳細)を残しておくのが確実です。
自分は、毎月の数字で次の判断をする
ここがいちばん役に立ちます。売上・経費・残ったお金を毎月見ると、値上げや仕入れを自分の数字で決められます。
値上げしていいか、この仕入れが重すぎないか、人を雇って回るか、来年の納税にいくら要るか。こうした判断の材料は、全部すでに帳簿の中にあります。取り出すには、月に1回、区切りをつけるだけです。
- 先月分の入力を終わらせる事業用の口座とカードを会計ソフトにつないでいれば、費目が合っているかを確認するだけで大半が埋まります。現金払いなど一部だけ、手で入れます。
- 月末の残高を通帳と合わせる帳簿の預金残高と通帳の残高が一致すれば、その月の記録はすべて揃っています。ずれたまま次の月へ進まないようにします。
- 3つの数字を見る先月の売上、先月の経費、そして手元に残ったお金。この3つで足ります。前の月と並べると、増えているか減っているかが分かります。
この3ステップは、慣れれば月に十数分で終わります。逆に1年に1回まとめてやると、この3つの数字は翌年の2月に出てきます。値上げを決めたかった去年の夏の判断には、もう間に合いません。1年に1回の経理では、過ぎたことを確かめるだけになります。
毎月の入力をどこまでやるかは日々の記帳は何を・いつ・どこまで入力する?にあります。締めの手順そのものは個人事業主に「月次決算」は必要?で説明しています。残ったお金から納税分をよけておく決め方は稼いだお金、いくら残せば税金で困らない?で扱いました。
同じ帳簿が3つに使える。だから月ごとに締める
3つとも材料は同じ帳簿です。締める間隔を1年から1か月に変えれば、残りの2つも手に入ります。
税務署に出す決算書を作る過程で、銀行に見せる決算書も、自分が読む毎月の数字も、同時にできあがります。ここまでの3つは、同じ作業から生まれます。
税務署のために作った紙が、そのまま銀行への説明書きになり、自分の判断材料になります。年に1回でも毎月でも、入力する取引の量は同じです。区切りをどこに入れるかだけが違います。
最低限、事業用の口座とカードを生活用と分けて、会計ソフトにつなぎます。月に1回、先月分の入力を終えて残高を合わせます。そのとき、売上・経費・残ったお金の3つを見ます。
会計ソフトをどう選んで最初に何を設定するかは、コースの3章「会計ソフトを用意し、最初の設定をすませる」で順番に進めます。選び方そのものはfreee・マネーフォワード・弥生、結局どれ?にまとめました。
まとめ
- 帳簿を渡す先は税務署・銀行・自分の3つです。作る帳簿は1組で、読む目的だけが違います
- 義務なのは税務署の1つだけ。渡すのは決算書と申告書の2枚で、締切は翌年3月15日
- 帳簿そのものは提出しない。手元で保存して、調査のときに見せるもの
- 借入・住宅ローン・入居審査で読まれるのは決算書と申告書の控えです。利益を小さくしすぎると借りられる額も小さくなります
- 令和7年1月から、控えに収受日付印は押されない。提出を示すならe-Taxの受信通知を残します
- いちばん役に立つのは3つ目です。売上・経費・残ったお金を毎月見ると、値上げや仕入れをその場で決められます
- 1年に1回だと数字が出るのは翌年2月。過ぎたことしか分からない
- 手間は変わりません。締める間隔を1年から1か月に変えるだけで、3つとも手に入ります
この記事の主な根拠(出典)
- 所得税法120条(確定申告。翌年2月16日から3月15日までに申告書を提出する)
- 所得税法施行規則65条(青色申告書に添付する貸借対照表・損益計算書)
- 国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」
- ※出典の各ページは2026年9月3日に確認しました。制度は改正されることがあります
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