ホーム起業時の知識 › 請求書の入金チェックを月…
更新日 2026-07-25 起業時の知識第39回

請求書の入金チェックを月末5分で終わらせる型|売掛金の考え方と消込のやり方

請求書は出した。でも「あれ、A社の分は入ってきたっけ?」——メールの送信済みフォルダを検索して、通帳を見て、なんとなく大丈夫そうだから閉じる。取引先が3件までならそれで回りますが、5件を超えたあたりで必ず取りっぱぐれが起きます

原因は記憶力ではありません。「請求した」と「入金された」を別々に記録する場所がない、それだけです。

この記事では、売掛金という考え方を腹落ちさせたうえで、管理表の型と、月末5分で未入金だけを炙り出すルーティンをまとめます。エクセルでもスプレッドシートでも、今日から始められる形にしました。

この記事の結論
売掛金=請求書を出したがまだ入金されていない売上。売上の記録とお金の記録は別イベント
– 管理表は「請求書番号・請求日・取引先・請求額・支払期日・入金日・状態」の7列あれば足りる
– 月末は入金明細を見て入金日を埋めるだけ。支払期日を過ぎて入金日が空欄の行=未入金リスト
– 入金額が合わないのはほぼ振込手数料・源泉徴収・まとめ入金の3つ

まず「売掛金」を腹落ちさせる

簿記の言葉としては難しく見えますが、中身はとても素朴です。

売掛金=「もう仕事は終わって請求書も出したけれど、まだお金をもらっていない」金額。 これだけです。

個人事業主の売上は原則として発生主義で計上します。つまり、入金された日ではなく、仕事が終わって請求できる状態になった日が売上の日です。だから帳簿の上では、1つの取引に対して2本の線が引かれます。

場面 記録の形(借方 / 貸方) 意味
納品して請求書を出した 売掛金 / 売上高 「売上が立った。回収する権利ができた」
入金された 普通預金 / 売掛金 「権利がお金に変わった」
振込手数料が引かれていた 支払手数料 / 売掛金 差引き分を費用として処理
源泉徴収されていた 事業主貸(または仮払税金)/ 売掛金 先に納められた所得税分

ポイントは、入金の記録は「売上」ではなく「売掛金の消滅」だということ。ここを取り違えると、同じ売上を2回計上してしまいます(入金時にもう一度売上を立ててしまう典型的なミス)。

そして、この2本目の線が引かれていない行こそが未入金です。管理表は、この「2本目待ち」を見える場所に置くための道具にすぎません。

管理表は7列でいい

凝った表を作ると続きません。次の7列(+メモ)だけで十分です。

入れる内容 ポイント
請求書番号 2026-001 のような連番 欠番があると請求漏れが分かる。番号は請求書にも必ず印字
請求日 請求書を発行した日 売上を計上する月の判断に使う
取引先 社名・屋号 表記を統一(「株式会社」を略さない等)
件名 案件名 同じ取引先から複数案件が来ても区別できる
請求額(税込) 請求書の合計額 ここが入金額の照合基準
支払期日 相手の締め・支払サイトに合わせた日 これがないと遅れに気づけない
入金日 実際に入金された日(空欄=未入金) ここを埋める作業が「消込」
状態 未入金/入金済/一部入金 数式で自動判定してもよい

差額が出たときのために「差額メモ」列を足しておくと、あとで原因を追いやすくなります。

請求書そのものに何を書くかは請求書の記載項目にまとめました。インボイス(適格請求書)は記載事項が法定されているので、番号や税率の書き方はそちらを先に整えてください。

請求書番号は「連番」にする意味

番号は自由に決めてかまいませんが、年ごとの通し連番が最も事故に強いです。2026-0012026-002……と振っていくだけ。

連番のいいところは3つあります。

  1. 請求漏れが欠番として見える(管理表に001と003があって002がない=どこかに出し忘れ、または番号だけ飛ばした記録が残る)
  2. 二重請求を防げる(同じ案件に2つ番号が付いていればすぐ気づく)
  3. 相手からの問い合わせに即答できる(「7月の請求書」ではなく「2026-014の件」で会話できる)

取引先が増えてきたら 2026-A社-001 のように相手コードを挟む手もありますが、まずは単純な通し連番で始めるのが挫折しにくいです。

月末5分ルーティン:3ステップ

やることは、入金明細と管理表を突き合わせて入金日を埋める、それだけです。

  1. ネットバンクの入金明細を1ヶ月分表示する(事業用口座を分けていれば、ここに事業の入金だけが並びます。まだ分けていない人は事業用口座を分けるから)
  2. 明細の1行ごとに、管理表の該当行に入金日を入れる。金額が請求額と一致していれば状態を「入金済」に
  3. 支払期日を過ぎているのに入金日が空欄の行を抽出する。これが未入金リスト

フィルタで「入金日が空欄」かつ「支払期日が今日より前」を絞るだけなので、慣れれば本当に数分です。大事なのは所要時間ではなく、月に1回、必ず未入金がゼロ件かどうかを確認する時点をつくること

「毎月末」が難しければ、入金日が集中する日の翌営業日(月末締め翌月末払いの取引先が多いなら毎月1日など)に固定するとリズムが作りやすくなります。

「1円合わない」「金額が少ない」の正体

照合していると必ず出てくるのが、請求額と入金額のズレです。原因はほぼこの3つに絞れます。

ズレの正体 見分け方 処理の考え方
振込手数料の差引き 数百円だけ少ない 差額は支払手数料として費用計上(またはあらかじめ「手数料は貴社負担」を取り決めておく)
源泉徴収 報酬額の10.21%前後が少ない 差引かれた分は先に納めた所得税。確定申告で精算する(源泉徴収と請求書の書き方
複数請求のまとめ入金 1件の入金額がどの請求額とも合わない 複数行の合計と一致するか確認。管理表では該当行すべてに同じ入金日を入れる
消費税の端数 1円だけ違う 相手側の端数処理と噛み合っていない可能性(インボイスの端数処理

原稿料・デザイン料・講演料などは源泉徴収の対象になるため、「入金額=売上」ではありません。ここを入金額だけで記帳していくと、売上が過少になり、源泉税の還付も受けられません。

未入金を見つけたときの進め方

慌てて催促する前に、自分側の確認を先に。順番を間違えると関係を傷めます。

  1. 請求書が本当に届いているか(メールが迷惑メール判定・宛先が担当者の個人アドレスで止まっている、はよくあります)
  2. 支払サイトの認識が合っているか(「月末締め翌月末払い」だと思っていたら「翌々月10日払い」だった、など)
  3. 請求書の記載に不備がないか(相手の経理で止まっているケース。特にインボイス登録番号や振込先の記載漏れ)
  4. ここまで問題なければ、事務連絡として事実だけを伝える(「2026-014のご入金が確認できておりません。行き違いでしたら失礼いたします」)
この記事で扱う範囲について
本記事は自分の売上と入金を管理する経理の話です。支払ってもらえない債権の取り立て(内容証明の代理作成、交渉の代理、支払督促・訴訟などの法的手続き)は弁護士・司法書士の領域で、報酬を得て代理することは弁護士法72条に触れます。なお売掛金は原則として権利を行使できると知った時から5年で時効にかかります(民法166条1項)。長期の未回収は放置せず、早い段階で専門家に相談してください。

会計ソフトに任せると何が変わるか

管理表を手で作らなくても、会計ソフトの請求書機能を使えば同じことが自動でできます。

  • 請求書を発行するとそのまま売掛金として帳簿に載る(二重入力が消える)
  • 銀行口座を連携しておくと、入金明細と売掛金を自動で消込候補として並べてくれる
  • 「未入金の一覧」がボタン一つで出る

つまり、請求書の発行場所と帳簿を一本にするのが最短ルートです。ソフト選びは会計ソフト比較、記帳の始め方は確定申告の流れ(記帳から)を参考にしてください。

ただし、自動消込は金額が一致した場合に強い仕組みです。振込手数料の差引きや源泉徴収がある取引は、結局は人が見て判断することになります。だからこそ、上の「ズレの正体」を理解しておく価値があります。

よくある質問(FAQ)

Q. 入金された日に売上を計上する方法(現金主義)でもいいのでは?
青色申告者で前々年分の事業所得等が300万円以下の人は、届出をすれば現金主義で計算できます(所得税法67条)。ただしこの特例を選ぶと青色申告特別控除は10万円になります。65万円を取りたいなら発生主義で記帳する必要があるので、結局は売掛金の管理が前提になります。

Q. 12月に請求して1月に入金された売上は、どちらの年?
請求した年(12月)の売上です。12月31日時点で入金がなければ、その分は売掛金として貸借対照表に残ります。年末はここを必ず洗い出してください。年をまたぐ売掛金の見落としは、税務調査でも指摘されやすい定番の論点です。

Q. 結局回収できなかった売上は、経費(貸倒損失)にできますか?
できる場合がありますが、要件はかなり厳格です。相手の法的整理などで債権が切り捨てられた場合(法律上の貸倒れ)、資産状況から全額回収不能と明らかな場合(事実上の貸倒れ)、取引停止から1年以上経過などの形式基準(所得税基本通達51-11〜51-13)に当てはまるかで判断します。「連絡が取れないから」だけでは足りません。個別の判断は税理士に相談してください。

Q. 請求書の控えはいつまで保存が必要?
個人事業主の場合、帳簿は7年、請求書などの書類は原則5年です。ただし消費税の課税事業者は、仕入税額控除のために7年保存が必要になるものがあります。迷うなら7年でそろえておくのが安全です。メールで受け取った請求書はデータのまま保存する必要がある点も忘れずに。

Q. 一部だけ入金されたときは?
状態を「一部入金」にして、残額を管理表に残します。帳簿では入金額分だけ売掛金を減らし、残りは売掛金として残る形です。相手の分割払いの都合なのか、値引き交渉のつもりなのかは、必ず言葉で確認しておきましょう。

まとめ

  • 売掛金=請求済みで未入金の売上。売上の線と入金の線は別に引く
  • 管理表は7列。請求書番号は年ごとの連番にすると漏れと二重請求が見える
  • 月末は入金明細から入金日を埋める→期日超過の空欄を見る、これだけ
  • ズレは振込手数料・源泉徴収・まとめ入金を疑う。入金額をそのまま売上にしない
  • 取り立ての代理は専門家の領域。時効5年を意識して早めに動く
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法36条(収入金額の計算/権利確定による計上)
  • 所得税法67条(小規模事業者の現金主義による所得計算の特例)
  • 所得税基本通達51-11〜51-13(貸倒損失の判定)
  • 民法166条1項(債権の消滅時効/原則5年)
  • 弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
  • 国税庁タックスアンサー「記帳や帳簿等保存・青色申告」「報酬・料金等の源泉徴収」
  • ※2026年時点の制度に基づく

次に読む

👉 請求書に書くべき項目とインボイスの記載事項
👉 請求書の消費税が1円ズレる?端数処理は税率ごとに1回だけ
👉 源泉徴収される報酬、請求書はどう書く?
👉 事業用の口座を分けるべき理由と分け方
👉 freee・マネフォ・弥生、結局どれ?会計ソフト比較

相談したいとき

👉 税理士の宍倉に相談する(LINE)

FOLLOW & CONSULT

新しい記事はLINEでお知らせ

個別のご相談は、事務所サイトの単発相談で承っています。

LINEで友だち追加個別相談について(事務所サイト)