簡易課税のみなし仕入率、自分は何種?|6つの事業区分の判定と75%ルール
簡易課税を選ぶと、消費税の納税額は売上と事業区分だけで決まります。仕入や経費をいくら払ったかは関係ありません。
つまり、事業区分を1つ間違えると、納税額が丸ごと変わります。
第3種(70%)だと思っていたものが第4種(60%)だったら、納税額は1.33倍になります。逆に、第5種で申告していたものが第3種なら、払いすぎです。
そして最悪なのは——帳簿に区分を書いていないと、いちばん低いみなし仕入率で計算されることです。
この記事の結論
– みなし仕入率は6区分。卸売90% / 小売80% / 製造・建設70% / 飲食・その他60% / サービス50% / 不動産40%
– 判定は日本標準産業分類をベースに行う
– 第4種は「どれにも当たらないもの」の受け皿。飲食店業と事業用固定資産の売却が入る
– 区分を記載していないと、その課税期間で最も低い率になる
– 2種類以上ある場合は加重平均が原則。75%ルールの特例あり
– 卸売(第1種)と小売(第2種)の分かれ目は売る相手が事業者か消費者か
– 建設業は材料を自分で持てば第3種、人工出し(材料支給)は第4種
– 届出は適用したい課税期間の初日の前日まで。2年間は変更できない
この記事は事業区分の判定と計算に絞ります。「そもそも簡易課税を選ぶべきか」は消費税の計算方法の選び方を参照してください。
6つの事業区分
| 区分 | 事業 | みなし仕入率 |
|---|---|---|
| 第1種 | 卸売業(購入した商品を、性質・形状を変えずに事業者へ販売) | 90% |
| 第2種 | 小売業(同じく、消費者へ販売)+飲食料品の譲渡を行う農林水産業 | 80% |
| 第3種 | 農業・林業・漁業(飲食料品以外)、鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業 | 70% |
| 第4種 | 上記・下記のいずれにも当たらないもの(飲食店業、事業用固定資産の売却など) | 60% |
| 第5種 | 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く) | 50% |
| 第6種 | 不動産業 | 40% |
判定の順番
迷ったら、この順で当てはめてください。
- 商品を仕入れてそのまま売っているか → 事業者に売る=第1種/消費者に売る=第2種
- 農林水産業か → 飲食料品の譲渡は第2種、それ以外は第3種
- 作っているか・建てているか → 第3種
- 運輸・通信・金融・保険・サービスか → 第5種
- 不動産の売買・仲介・賃貸か → 第6種
- どれにも当たらない → 第4種
第4種は「余り」の区分です。飲食店業がここに入るのは、上のどれにも当てはまらないからです。
迷いやすいケース
| こういう仕事 | 区分 | 理由 |
|---|---|---|
| Webデザイン・ライター・コンサル・士業 | 第5種 | サービス業 |
| プログラマー(受託開発) | 第5種 | 情報サービス業 |
| 建設業の一人親方(材料を自分で調達) | 第3種 | 建設業 |
| 建設業の一人親方(材料は元請支給・人工出し) | 第4種 | 加工賃等を対価とする役務の提供 |
| 大工・電気工事(材料込みで請け負う) | 第3種 | 建設業 |
| 飲食店(店内飲食) | 第4種 | 飲食店業 |
| 飲食店のテイクアウト・宅配 | 第3種(製造小売として) | 自ら製造した飲食料品の販売 |
| 仕入れた弁当をそのまま消費者に販売 | 第2種 | 性質・形状を変えずに販売 |
| 美容室・整体・エステ | 第5種 | サービス業 |
| 美容室で販売するシャンプー(消費者へ) | 第2種 | 商品の販売 |
| 修理業(部品込み) | 第5種 | サービス業(修理は役務) |
| 印刷業 | 第3種 | 製造業 |
| アパート・駐車場の賃貸(課税分) | 第6種 | 不動産業 |
| 不動産仲介 | 第6種 | 不動産業 |
| 事業用の車・機械の売却 | 第4種 | 事業用固定資産の譲渡 |
| 加工賃を受け取る内職・下請 | 第4種 | 加工賃等を対価とする役務の提供 |
| ネットショップ(仕入れた商品を消費者へ) | 第2種 | 小売業 |
| ハンドメイド品をネットで販売 | 第3種 | 製造業(製造小売) |
同じ「美容室」でも、施術は第5種、店販商品は第2種です。区分をまたぐ売上がある人は、帳簿で分けて記録する必要があります。
そして最重要——事業用の車や機械を売った代金は第4種です。本業がサービス業(第5種)でも、設備を売ったらその部分は第4種になります。ここは高い確率で漏れます。
区分を書かないと、いちばん低い率になる
帳簿等に事業の種類を記載していない売上は、その課税期間の事業のうち最も低いみなし仕入率が適用されます。
| 例:卸売(90%)と小売(80%)を営んでいる |
|---|
| 区分を記載していない売上 → 80%(低いほう)で計算 |
第1種(90%)と第6種(40%)の両方がある人が区分を書いていなければ、全部40%になります。納税額は跳ね上がります。
簡易課税を選ぶなら、売上を区分して記帳することが前提です。会計ソフトの税区分設定で、簡易課税の事業区分を売上ごとに設定してください。
2種類以上あるときの計算
原則:加重平均
みなし仕入率 =
(第1種の消費税額×90% + 第2種×80% + 第3種×70% + 第4種×60% + 第5種×50% + 第6種×40%)
÷ 全体の売上に係る消費税額
特例①:1種類で75%以上
1つの事業の課税売上高が全体の75%以上なら、その事業のみなし仕入率を全体に適用できます。
| 例:第5種(サービス)が80%、第2種(物販)が20% |
|---|
| 全体に第5種の50%を適用できる(原則の加重平均よりは不利なので、有利なほうを選ぶ) |
※有利・不利は組み合わせによります。原則計算と比べて有利なほうを選べます。
特例②:3種類以上あって、2種類で75%以上
3種類以上の事業があり、そのうち2種類の課税売上高の合計が75%以上の場合、
その2種類のうち、みなし仕入率の高いほうの事業はそのままの率を使い、
それ以外の事業は、2種類のうち低いほうの率を使う
という計算ができます。
計算は複雑なので、会計ソフトか税理士に計算させるのが現実的です。ただし区分の判定だけは自分でやる必要があります。ソフトは区分を推測してくれません。
選ぶときの手続き
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 基準期間(2年前)の課税売上高が5,000万円以下 |
| 届出 | 消費税簡易課税制度選択届出書を、適用したい課税期間の初日の前日までに提出(個人なら前年12月31日まで) |
| 継続 | 2年間は本則課税に戻れない |
| やめるとき | 消費税簡易課税制度選択不適用届出書を、やめたい課税期間の初日の前日までに |
「今年の申告で簡易課税にしよう」はできません。前年末までに届出が要ります。ここが最大の落とし穴です。
なお、基準期間の課税売上高が5,000万円を超えた年は、届出を出していても自動的に本則課税になります(届出の効力自体は残ります)。
2割特例・3割特例との関係
| 特例 | 内容 |
|---|---|
| 2割特例 | インボイス登録で免税事業者から課税事業者になった人が、納税額を売上税額の2割にできる。令和8年9月30日までの日の属する課税期間で終了(2割特例) |
| 【新設】3割特例 | 2割特例の終了後、個人事業者について、納税額を売上税額の3割にできる措置。令和9年分・令和10年分の2年間(令和8年度税制改正) |
3割特例は個人事業者が対象です。第5種(サービス業・50%=納税は売上税額の50%)の人にとって、3割特例は簡易課税より有利になります。
一方、第1種(90%=納税は10%)や第2種(80%=納税は20%)の人は、簡易課税のほうが有利です。
特例が終わる年に向けて、簡易課税の届出をいつ出すかを逆算しておいてください。特例の適用後に簡易課税を選ぶ場合の届出時期には別の取扱いがあるため、国税庁のQ&Aで確認するか、個別にご相談ください。
この記事は簡易課税制度の事業区分の判定と計算を扱っています。事業区分の判定は日本標準産業分類を基礎に、取引の実態(材料の負担、加工の程度、販売先が事業者か消費者か)で個別に判断されるもので、最終的な判断は所轄税務署によります。判断に迷う取引がある場合は、事前に確認してください。この記事は2026年(令和8年)7月時点の制度に基づきます。2割特例の終了と3割特例の創設は令和8年度税制改正によるもので、適用関係の細部は国税庁「令和8年度税制改正特集」および消費税の各Q&Aで最新の内容をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 事業区分を間違えて申告していました。
過大に納めていたなら更正の請求(原則5年以内)、過少なら修正申告です。区分の誤りは税務調査でよく指摘されます。気づいた時点で対応してください。
Q. 帳簿への区分の書き方は?
売上の記帳時に「第3種」「第5種」など事業の種類が分かる記載をします。請求書の控えや納品書で区分が判定できるようにしておく方法もあります。会計ソフトなら売上科目や税区分を分けるのが簡単です。
Q. 一人親方です。材料を自分で買う工事と、材料支給の工事が両方あります。
工事ごとに区分します。材料持ちは第3種、人工出し(加工賃等を対価とする役務の提供)は第4種です。請求書で材料費と工賃を分けているかが判定の手がかりになります。
Q. テイクアウトは第3種でいいのですか。
自ら製造した飲食料品を持ち帰り用に販売する部分は、製造小売として第3種とされます。一方、店内飲食は飲食店業として第4種です。仕入れた商品をそのまま売るなら第2種です。取引の実態で分かれるので、判断に迷う場合は事前に確認してください。
Q. 簡易課税なのに、仕入の請求書を保存する必要はありますか。
消費税の計算上は不要ですが、所得税の必要経費として必要です。また、区分の判定根拠としても使います。捨てないでください。
Q. 中間申告はどうなりますか。
簡易課税でも、前年の納税額が一定額を超えれば中間申告が必要です(消費税の中間申告)。
Q. 簡易課税でも貸倒れの控除は使えますか。
使えます。売掛金が貸倒れになった場合の消費税額の控除は、簡易課税でも適用されます。
Q. 端数処理はどうしますか。
消費税の端数処理は、インボイスの記載事項として1つの請求書につき税率ごとに1回、というルールがあります(インボイスの端数処理)。
まとめ
- 簡易課税の税額は売上と事業区分だけで決まる
- 6区分:卸売90 / 小売80 / 製造・建設70 / 飲食・その他60 / サービス50 / 不動産40
- 第4種は受け皿。飲食店業と事業用固定資産の売却が入る
- 区分を書かないと、いちばん低い率にされる
- 卸売と小売の分かれ目は売る相手が事業者か消費者か
- 建設業は材料持ち=第3種、人工出し=第4種
- 2種類以上あれば加重平均が原則。75%ルールの特例で有利なほうを選べる
- 届出は前年12月31日まで。2年間は戻れない
- 2割特例は令和8年9月30日までの課税期間で終了、個人は令和9・10年分に3割特例
- 消費税法37条(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例。基準期間における課税売上高5,000万円以下)
- 消費税法施行令57条(事業の種類の区分およびみなし仕入率。第一種90%・第二種80%・第三種70%・第四種60%・第五種50%・第六種40%)
- 消費税法施行令57条4項(事業の種類ごとの区分をしていない場合は、最も低いみなし仕入率を適用)
- 消費税法施行令57条3項(2種類以上の事業を営む場合の特例。1種類で75%以上、3種類以上のうち2種類で75%以上)
- 消費税法基本通達13-2-1〜13-2-9(事業区分の判定。日本標準産業分類を基礎とする。加工賃等を対価とする役務の提供は第四種。事業用固定資産の譲渡は第四種)
- 消費税法30条・消費税法施行令ほか(簡易課税制度選択届出書・不適用届出書の提出期限、2年間の継続適用)
- 平成28年改正法附則51条の2(2割特例。令和8年9月30日までの日の属する各課税期間)
- 令和8年度税制改正(3割特例の創設。インボイス発行事業者の登録により免税事業者から課税事業者となった個人事業者の令和9年分・令和10年分について、納付税額を課税標準額に対する消費税額の3割とすることができる)。国税庁「令和8年度税制改正特集」
- ※2026年時点の内容です。改正事項は必ず国税庁の最新情報でご確認ください
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