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更新日 2026-07-26 節税・経費

事業用の車・機械を売ったとき|売却代金は売上ではなく譲渡所得(50万円特別控除)

事業で使っていた車を売って、その代金を「雑収入」として売上に入れていませんか。

それは違います。事業用の固定資産を売った代金は、事業所得ではなく譲渡所得です。

区分を間違えると、使えるはずの50万円の特別控除を捨てることになります。長く持っていた資産なら、さらに2分の1になります。処理を直すだけで税金が数万円変わることも珍しくありません。

この記事の結論
– 事業用の車・機械・器具備品を売った代金は譲渡所得(所得税法33条)。事業所得ではない
総合課税で、特別控除50万円が使える
– 取得の日から5年を超えて持っていたものは、控除後の金額が2分の1になる
– 取得費=未償却残高(帳簿価額)。売却時までの償却費を先に計上する
例外:10万円未満・一括償却資産・30万円未満の特例で経費にしたものの売却は事業所得
– 家事按分していた資産は、事業使用割合に応じた償却費相当額だけを取得費から引く
– 損が出たら他の所得と損益通算できる
– 課税事業者なら売却代金は課税売上(簡易課税では第4種
土地・建物の売却は分離課税で、この記事の計算とは別

なぜ事業所得ではないのか

事業所得は「事業から生じた所得」ですが、商品を売って得た利益道具を売って得た利益は性格が違います。

何を売ったか 所得区分
商品・製品(棚卸資産) 事業所得
事業で使っていた車・機械・パソコン(固定資産) 譲渡所得
事業用の土地・建物 分離課税の譲渡所得(別計算)
株式 分離課税の譲渡所得(別計算)

中古車販売店が車を売れば事業所得ですが、税理士が営業車を売れば譲渡所得です。同じ「車を売る」でも、それが商品か道具かで変わります。

計算のしかた

総合課税の譲渡所得は、次の式で計算します。

譲渡所得 = 収入金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除50万円

取得費は未償却残高(帳簿に残っている金額)です。買ったときの値段ではありません。

例:帳簿価額60万円の車を90万円で売った

項目 金額
収入金額(売却代金) 900,000円
取得費(未償却残高) ▲600,000円
譲渡費用(名義変更手数料など) ▲20,000円
差引 280,000円
特別控除50万円 ▲280,000円(所得を限度
譲渡所得 0円

50万円の特別控除は、譲渡益を限度に控除します。この例では譲渡益28万円がまるごと消えて、税金は0です。

もしこれを「雑収入90万円」として事業所得に入れていたら、90万円が丸ごと課税対象になっていました。所得税率20%なら、住民税・事業税を含めて30万円近い差になります。

5年を超えて持っていたら半分になる

区分 判定 計算
短期譲渡 取得の日から譲渡の日まで5年以内 特別控除後の全額が課税対象
長期譲渡 取得の日から譲渡の日まで5年超 特別控除後の金額の2分の1が課税対象

※特別控除50万円は、短期・長期を合わせて年間50万円が上限です。両方ある場合は短期から先に控除します。

売却する年の償却費を忘れない

売却した月までの減価償却費を、先に必要経費に計上します。

金額
年初の未償却残高 700,000円
8月まで(8か月分)の償却費 ▲100,000円 ← 事業所得の経費
譲渡所得の計算に使う取得費 600,000円

これを飛ばすと、経費が10万円減ってしまいます。

【重要】譲渡所得にならない資産がある

ここが実務でいちばん間違えるところです。

次の資産を売ったときは、譲渡所得ではなく事業所得(または雑所得)になります(所得税法施行令81条)。

資産 売却時の所得
使用可能期間1年未満または取得価額10万円未満で、必要経費にしたもの 事業所得
一括償却資産(10万円以上20万円未満で3年均等償却を選んだもの) 事業所得
少額減価償却資産の特例(30万円未満/令和8年4月以後は40万円未満)で経費にしたもの 事業所得

理由は明快で、取得したときに全額を経費にしているからです。売却代金に対応する取得費がすでに0なので、譲渡所得の枠組み(取得費を引く)に乗せる意味がありません。

つまり——

28万円のパソコンを特例で一括経費にした → 売ったら「雑収入」(事業所得)
80万円の機械を通常どおり減価償却した → 売ったら「譲渡所得」

同じ売却でも、買ったときにどう処理したかで結論が変わります。制度の使い分けは30万円未満なら一括で経費にできる特例を参照してください。

家事按分している資産を売ったら

自家用と兼用の車を売った場合、計算が1段階増えます。

取得費から引く「償却費相当額」は、事業に使っていた割合に応じた部分だけです。家事使用部分についても、その資産の減価の額(法定耐用年数の1.5倍の年数による旧定額法相当)を控除します。

例:200万円で買った車(事業割合60%)を5年後に80万円で売却
事業分の償却費累計(経費に入れた分)と、家事分の減価の額を、それぞれ取得価額から控除して取得費を求める
その取得費と売却代金の差額が譲渡所得(50万円特別控除・5年超なら1/2)

計算がやや面倒なので、車を売る年は明細を残してください。按分そのものの考え方は車を経費にするを参照してください。

なお、下取りも売却です。新車の購入代金から差し引かれていても、下取価額が売却代金になります。「値引き」として処理してはいけません。

損が出たときは損益通算できる

売却代金より帳簿価額のほうが大きい場合、譲渡損失が出ます。

総合課税の譲渡所得の損失は、他の所得と損益通算できます(所得税法69条)。事業所得・給与所得などから引けます。

ただし、「生活に通常必要でない資産」の損失は通算できません。個人事業の事業用資産は通常必要な資産なので、通算の対象です(別荘・ゴルフ会員権・貴金属などは対象外)。

消費税の扱い

課税事業者の場合、事業用資産の売却は課税売上です。

方式 扱い
本則課税 売却代金(税抜)が課税売上
簡易課税 第4種事業(みなし仕入率60%)。本業の区分とは別に判定する
2割特例 課税売上に含めて計算
免税事業者 関係なし

簡易課税で第4種になるのは見落としやすい点です。サービス業(第5種)の人が機械を売っても、その売却は第5種ではなく第4種です。事業区分の判定は簡易課税のみなし仕入率を参照してください。

なお、土地の売却は非課税です。

この記事で扱う範囲について
この記事は総合課税の譲渡所得(車・機械・器具備品など)を扱っています。土地・建物の譲渡は分離課税で、税率も特別控除も別の制度です(居住用財産の3,000万円特別控除、長期・短期の税率区分など)。事業用不動産を売る場合は[不動産を持っている個人事業主の税金](/fudousan-kojin-jigyounushi/)および個別のご相談をご検討ください。自動車の名義変更・移転登録の手続は運輸支局(行政書士の業務)、売却価格の妥当性は市場の問題です。同族関係者へ著しく低い価額で譲渡した場合には、時価との差額が問題になることがあります。

仕訳の例

帳簿価額60万円の車を90万円で売った場合(消費税は税込経理・免税事業者を想定)。

借方 貸方
普通預金 900,000 車両運搬具 600,000
事業主借 300,000

ポイントは貸方が「売上」ではなく「事業主借」であることです。譲渡所得は事業所得の外にあるため、事業の損益計算書には入れません。確定申告書の譲渡所得欄で別途申告します。

損が出た場合は、借方が「事業主貸」になります。

よくある質問(FAQ)

Q. 会計ソフトが「固定資産売却益」で仕訳を作りました。そのままでいいですか。
損益計算書に売却益が入ってしまうと、事業所得が過大になります。決算で事業主借(事業主貸)へ振り替えて、事業所得から除いてください。そのうえで譲渡所得として申告します。

Q. 特別控除50万円は毎年使えますか。
使えます。年間で50万円が上限です。ですから、売る資産が複数あるなら年を分けると2回使えます。廃業年にまとめて処分すると1回しか使えません(事業をやめるときの税務)。

Q. 5年の判定はいつからいつまでですか。
取得の日から譲渡の日までです。「1月1日時点で5年」という土地建物の判定とは違います。中古で買った資産は、自分が取得した日から数えます(前の持ち主の期間は通算しません)。

Q. スクラップとして数千円で引き取られました。申告は必要ですか。
譲渡所得の計算はしますが、特別控除50万円の範囲で0になるのが通常です。ただし帳簿価額のほうが大きければ損失になり、損益通算できるので、計上する意味はあります。

Q. 売るのではなく、自分用に切り替えました。
家事転用は譲渡ではありません。その時点で所得は生じません。帳簿から外し、以後は減価償却も行いません。ただし将来売ったときの取得費計算に影響します。

Q. 廃棄したときは?
除却損として事業所得の必要経費です。譲渡所得ではありません(使っていない機械・パソコンを経費で落とす)。

Q. 中古で買った資産を売った場合、耐用年数はどうなりますか。
取得時に簡便法で短い耐用年数を使っていれば、その償却後の帳簿価額が取得費になります。短い年数で償却した分だけ帳簿価額が小さくなり、譲渡益が出やすくなります(中古資産の耐用年数)。

まとめ

  • 事業用の車・機械の売却代金は譲渡所得。売上(雑収入)ではない
  • 50万円の特別控除が使える。5年超なら控除後が2分の1
  • 取得費は未償却残高。売却月までの償却費を先に計上する
  • 10万円未満・一括償却資産・30万円未満の特例で経費にしたものは事業所得
  • 下取りも売却。値引きとして処理しない
  • 家事按分していた資産は、事業割合に応じた償却費相当額で計算
  • 損失は他の所得と損益通算できる
  • 課税事業者は課税売上。簡易課税では第4種
  • 仕訳は事業主借(事業主貸)で事業の損益から外す
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法33条(譲渡所得。棚卸資産その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得を除く)
  • 所得税法33条3項・4項(短期・長期の区分、特別控除額50万円)/同22条(長期譲渡所得の2分の1課税)
  • 所得税法施行令81条(譲渡所得の基因とならない棚卸資産に準ずる資産。使用可能期間1年未満または取得価額10万円未満で必要経費に算入したもの、一括償却資産、少額減価償却資産の特例の適用を受けたもの)
  • 所得税法38条2項・所得税法施行令85条(非業務用資産の減価の額。業務用と非業務用が併存する場合の取得費の計算)
  • 所得税法69条(損益通算)/同62条・所得税法施行令178条(生活に通常必要でない資産の損失)
  • 消費税法・消費税法施行令57条(簡易課税の事業区分。事業用固定資産の譲渡は第四種事業)
  • ※2026年時点の取扱いです。土地・建物の譲渡は分離課税で別の制度です

次に読む

👉 使っていない機械・パソコンを経費で落とす——除却損と有姿除却
👉 少額減価償却資産が30万円未満から40万円未満へ
👉 車を経費にする——家事按分と計上のしかた
👉 事業をやめるときの税務——廃業届から棚卸資産まで
👉 「経費を増やせば税金が減る」は半分ウソ

相談したいとき

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この記事の位置づけ

この記事は「3 高いものを買ったとき・売ったとき」の詳細です。

節税は、やる順番で結果が変わります——コース全体のどこにあたるかは、全体像のページで確認できます。

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