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更新日 2026-07-26 節税・経費

開業初年度だけに効く節税を全部集めた|期限があるもの・その年しか使えないもの

開業1年目には、その年にしか使えないものと、期限を逃すと二度と取り返せないものが集中しています。

しかも、多くの人は1年目に「何が期限か」を知りません。気づくのは2年目の確定申告のときで、そのときにはもう手遅れです。

この記事は、1年目だけに効く節税を1枚にまとめたものです。まずここを全部つぶしてください。

この記事の結論
青色申告承認申請は開業から2か月以内。逃すと初年度は白色(65万円控除も繰越も無い)
開業費は任意償却。好きな年に好きな額を落とせる——赤字の1年目には落とさない
会社を辞めて開業した年は、給与所得と損益通算できる。源泉徴収された所得税が戻る
消費税は原則2年間免税(基準期間がないため)。ただしインボイス登録すると課税事業者になる
少額減価償却資産の年300万円は開業年月割
個人事業税の事業主控除290万円も開業年は月割
住民税・国保が安い年——所得を出しても社会保険料が増えない、いわば「先行者利益」の年
非自発的失業者の国保軽減は、会社都合退職なら大きい
予定納税がないので、翌年の資金繰りに注意

① 期限があるもの——先にこれをつぶす

手続き 期限 逃すとどうなるか
青色申告承認申請書 開業から2か月以内(1月15日以前の開業は3月15日) 初年度は白色。65万円控除・純損失の繰越・専従者給与が使えない
開業届 開業から1か月以内 罰則はないが、青色申告承認申請とセットで出す
青色事業専従者給与に関する届出書 開業から2か月以内 家族への給与が経費にならない
給与支払事務所等の開設届出書 開設から1か月以内 従業員・専従者に給与を払うなら必要
源泉所得税の納期の特例の承認申請書 随時(提出した翌月から適用) 源泉税を毎月納めることになる
都道府県への事業開始等申告書 都道府県の定めによる 個人事業税の手続き

いちばん重い期限は青色申告承認申請の2か月です。これを逃すと、初年度の節税手段がまとめて消えます。詳しくは青色申告承認申請の期限開業届と青色申告を出し忘れたらを参照してください。

② 開業費——「1年目に落とさない」が正解

開業前に使ったお金は、開業費という繰延資産にまとめられます。

項目 内容
何が入るか 開業のための調査費、打合せ費、名刺・チラシ、研修費、事務所の契約時費用など(開業費の範囲
償却方法 任意償却(好きな年に好きな額を経費にできる)
いつまで 期限なし。何年でも持ち越せる

減価償却は毎年強制ですが、開業費だけは自分で決められます。これが1年目の最大の武器です。

1年目が赤字なら、開業費は落とさないでください。赤字を増やしても、所得控除が消えるだけです。利益が出た年に落とすほうが、税率が高い分だけ効きます。

1年目(赤字) 3年目(黒字600万円)
1年目に全額落とす 赤字が増えるだけ
3年目に落とす 高い税率で効く

詳しくは開業費は任意償却で好きな年に落とせるを参照してください。

③ 会社を辞めて開業した年——源泉税が戻る

これが金額としては最も大きくなることがあります。

会社員だった年の途中で独立した場合、その年には給与所得があります。事業所得が赤字なら、給与所得と損益通算できます。

例:1〜6月の給与350万円、7月に開業、事業所得▲150万円
給与所得(給与所得控除後)約240万円
事業所得 ▲150万円
通算後の所得 約90万円
→ 給与から源泉徴収されていた所得税が還付される

会社員時代の源泉徴収票を必ず用意してください。年の途中で退職していれば年末調整も受けていないので、そもそも確定申告が必要です(会社員が開業届を出すとき)。

この効果は独立した年にしかありません。

④ 消費税——原則2年は免税

消費税の納税義務は2年前(基準期間)の課税売上高で判定します。開業1年目・2年目は基準期間が存在しないため、原則として免税事業者です。

判定
1年目 基準期間なし → 免税
2年目 基準期間なし → 免税(ただし特定期間の判定あり)
3年目 1年目の課税売上高が1,000万円超なら課税

※2年目は、1年目の上半期(特定期間)の課税売上高と給与等支払額がいずれも1,000万円超なら課税事業者になります。

ただし、インボイス登録をすると免税は使えません。登録した時点で課税事業者になります。取引先が課税事業者ばかりなら登録せざるを得ない場面も多いので、1年目に判断してくださいインボイス登録するべきか売上1,000万円と課税事業者)。

⑤ 「月割」になるもの——1年目は枠が小さい

開業年は事業を行った期間が1年に満たないため、枠が月割で縮む制度があります。

制度 通常 開業年(7月開業=6か月の例)
少額減価償却資産の特例の年間限度 300万円 150万円
個人事業税の事業主控除 290万円 145万円

少額減価償却資産の枠が半分になるのは見落としやすい点です。設備をまとめて入れる予定なら、開業年より翌年のほうが枠が大きいことになります(制度そのものは少額減価償却資産が40万円未満に)。

個人事業税の事業主控除も月割です。「290万円以下なら事業税は来ない」は通年の話で、開業年は基準が下がります個人事業税がかかる法定70業種)。

なお、減価償却費そのものも月割です。12月に買った資産は1か月分しか償却できません。

⑥ 逆転の発想——1年目は「所得を出しておく」年

節税の記事でこう書くのは矛盾に見えますが、事実なので書きます。

開業1年目は、住民税と国民健康保険料が「前年の所得」で決まります。つまり、1年目にいくら稼いでも、その年の住民税・国保料は増えません独立1年目、税金が一気に来る理由)。

1年目 2年目
住民税 前年(会社員時代)の所得で決まる 1年目の所得で決まる
国民健康保険料 前年の所得で決まる 1年目の所得で決まる

会社を辞めて所得が下がった人なら、1年目の住民税・国保料は安く済みます。この年に利益を出しても、社会保険料の負担はすぐには増えません。

そして、融資や住宅ローンを考えているなら、1年目から所得を出しておくこと自体に価値があります節税しすぎると詰む場面)。

1年目に無理な節税をするより、開業費を温存して所得を出し、2年目以降に落とす——これが合理的なことが多いのです。

⑦ 非自発的失業者の国保軽減

会社都合の退職(倒産・解雇・雇止め等)で退職した場合、国民健康保険料の所得割の算定で、前年の給与所得を30%として計算する軽減があります。

  • 雇用保険の離職理由コードで判定される
  • 退職日の翌日から翌年度末まで
  • 申請が必要(市区町村の国保窓口)

会社都合で辞めて独立した人は、必ず確認してください。金額が大きい制度です(非自発的失業者の国保軽減)。

この記事で扱う範囲について
この記事は開業1年目の所得税・消費税・個人事業税の取扱いを扱っています。国民健康保険・国民年金の切替手続、非自発的失業者軽減の適用可否、産前産後の免除は市区町村および年金事務所の所管で、軽減判定の基準額は自治体・年度によって異なります。雇用保険の基本手当(失業給付)を受けながら開業準備をする場合の取扱い、再就職手当の要否はハローワークの所管です。許認可が必要な事業の開業手続は各許認可庁(行政書士の業務)、法人設立の登記は司法書士の業務です。

1年目のチェックリスト

順番にやってください。

  1. 開業届を出す(1か月以内)
  2. 青色申告承認申請書を出す(2か月以内)——最優先
  3. 家族に給与を払うなら青色事業専従者給与に関する届出書(2か月以内)
  4. 都道府県へ事業開始等申告書を出す
  5. 会社都合で退職したなら国保の軽減申請
  6. 開業前の支出を集めて開業費にまとめる(領収書・クレカ明細・通帳)
  7. 前職の源泉徴収票を確保する(確定申告で使う)
  8. 事業用の口座とカードを分ける
  9. インボイス登録の要否を決める
  10. 会計ソフトを入れて、開業日から記帳を始める
  11. 12月に、開業費を落とすかどうかを決める(赤字なら落とさない)
  12. 2年目に来る住民税・国保料を取り置く

よくある質問(FAQ)

Q. 開業前に買ったパソコン(20万円)は開業費に入れますか。
入りません。10万円以上の資産は固定資産として計上し、減価償却します。開業費は「開業のために特別に支出した費用」で、資産の取得代金や仕入代金は含みません。開業日に事業に使い始めたものとして償却を開始します。

Q. 開業日はいつにすればいいですか。
実態に合わせます。ただし、開業日が青色申告承認申請の期限(2か月)の起算点になり、事業主控除290万円の月割にも影響します。年の後半に開業すると事業税の枠が小さくなる点は意識してください。

Q. 1年目が赤字です。申告しなくていいですか。
必ず申告してください。青色なら赤字を3年間繰り越せますし、給与所得があれば源泉税が戻ります赤字の年こそ申告する)。申告しないと、これが全部消えます。

Q. 開業費はいくらまで入れられますか。
金額の上限はありません。ただし事業との関連が説明できることが前提です。開業のかなり前(何年も前)の支出や、私的な支出は入れられません。

Q. 1年目からふるさと納税をしてもいいですか。
所得が確定していない段階では限度額が読めません。年末近くに、その年の利益の見込みが立ってから行うのが安全です。超えた分は自己負担になります。

Q. 会社員のときのiDeCoは続けられますか。
続けられます。第2号被保険者から第1号被保険者へ種別が変わるので、運営管理機関への届出が必要です。掛金の上限も変わります(第1号は月6.8万円が上限、国民年金基金等と合算)。

Q. 消費税は登録しないほうが得ですか。
一概には言えません。取引先が課税事業者中心なら、登録しないと取引に影響することがあります。逆に消費者向けの事業なら、登録しないほうが有利なことが多いです。判断軸はインボイス登録するべきかにまとめています。

まとめ

  • 青色申告承認申請は開業から2か月。ここを逃すと初年度の節税は総崩れ
  • 開業費は任意償却赤字の1年目には落とさない
  • 会社を辞めた年は給与と損益通算源泉徴収された所得税が戻る
  • 消費税は原則2年免税。ただしインボイス登録すると課税事業者
  • 少額減価償却300万円事業主控除290万円開業年は月割
  • 1年目は住民税・国保が前年ベースで安い——所得を出しても負担が増えない年
  • 会社都合退職なら非自発的失業者の国保軽減を必ず申請
  • 2年目に来る税金を取り置いておく
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法144条(青色申告の承認の申請。業務を開始した日から2か月以内)/同229条(開業等の届出)/同57条2項(青色事業専従者給与に関する届出)
  • 所得税法2条1項20号・50条、所得税法施行令7条1項1号・137条(繰延資産としての開業費と任意償却)
  • 所得税法69条(損益通算)/同70条(純損失の繰越控除)
  • 消費税法9条(基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者の納税義務の免除)/同9条の2(特定期間による判定)/同57条の2(適格請求書発行事業者の登録)
  • 租税特別措置法28条の2(中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例。年間限度額300万円は事業を行った月数で按分)
  • 地方税法72条の49の14(個人事業税の事業主控除290万円。事業を行った月数で按分)
  • 国民健康保険法施行令(非自発的失業者に係る保険料の算定の特例。給与所得を100分の30として算定)
  • ※2026年時点の制度です。少額減価償却資産の取得価額の基準は令和8年4月1日以後の取得から40万円未満に引き上げられています

次に読む

👉 開業費は任意償却で好きな年に落とせる
👉 青色申告承認申請の期限——2か月を過ぎたら
👉 独立1年目、国保・住民税・年金が一気に来て詰む理由
👉 非自発的失業者の国保軽減
👉 節税しすぎると詰む場面——融資・住宅ローン・控除の切り捨て

相談したいとき

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この記事の位置づけ

この記事は「+ 1年目・赤字の年・やめるとき」の詳細です。

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