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更新日 2026-08-07 節税・経費

攻めの節税──広告費・人材・設備。税金で持っていかれる前に、売上を増やす費用に回す

決算が近づいて利益が出ているとわかったとき、多くの社長が最初に考えるのは「何か買って落とせないか」です。

しかし買い物による節税は、たいてい将来の損金を前借りしているだけです。減価償却も、共済も、保険も、いつか戻ってきます(繰り延べただけの節税は、いつ税金が戻ってくるのか)。

もう1つの選択肢があります。翌期以降の売上を増やす支出に回すこと。広告、採用と教育、設備。これらは投資として回収できれば、税負担が下がったうえに事業が伸びます。「攻めの節税」と呼ばれるのはこれです。

ただし、勘違いしてはいけない点が1つあります。現金が出ていく以上、戻ってくるのは税率をかけた分だけです。

この記事の結論

  • 法人の実効税率はおおむね30%前後。1万円使って減る税金は3,000円で、7,000円は本当に出ていく
  • だから攻めの節税は「税効果が主」ではなく、投資として回収できるかが主。税効果はおまけ
  • 広告費は支出時の損金。ただし前払いした広告料は短期前払費用にできないことが多い
  • 採用・教育は支出時の損金。加えて賃上げ促進税制は税額から直接引ける
  • 設備投資は原則として減価償却だが、投資促進税制・経営強化税制で特別償却か税額控除を選べる
  • 税額を本当に減らすのは税額控除だけ。特別償却と即時償却は繰延べ
  • 税額控除は調整前法人税額の20%が上限。赤字の年は使えない

1. 「守り」と「攻め」を分ける

決算対策には4つの型しかありません(決算対策には4つの型しかない)。そのうち総額が本当に減るのは税額控除だけで、あとは繰延べか、所得区分の転換か、期ズレの正常化です。

この整理の上で「攻めの節税」を定義すると、こうなります。

守りの節税 攻めの節税
目的 今期の税額を下げる 翌期以降の売上を増やす
代表例 保険、共済、即時償却、決算賞与 広告、採用、教育、設備、研究開発
効果の測り方 今期の税額の減少 投資利益率(回収できたか)
税効果 多くは繰延べ 支出時損金+税額控除が乗ることがある
判断の順番 出口を決めてから入る 回収できるかを先に判断し、税は後で見る

攻めの節税でいちばん大事なのは、判断の順番です。「税金を減らしたいから広告を打つ」ではなく、「広告を打つと決めた。ついでに今期の損金になる」。順番を逆にすると、効かない広告に70%の現金を捨てることになります。

2. 広告費

広告宣伝費は、原則として役務の提供を受けた時の損金です。契約日や支払日ではありません。

押さえるのは3点です。

(1)前払いした広告料は、短期前払費用にできないことが多い

法人税基本通達2-2-14は、支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係る前払費用を、継続適用を条件に支払時の損金とすることを認めています。家賃、保険料、顧問料などが典型です。

しかし国税庁の質疑応答事例では、この取扱いの対象は時の経過に応じて等質・等量のサービスが提供されるものとされています。雑誌や媒体への広告掲載料の前払いは、これに当たらないと整理されるのが実務です。

つまり「決算前に来期の広告費を年払いして落とす」は、通りにくい。個人事業の短期前払費用については 12月に年払いへ切り替えて経費を前倒しする にまとめてあります。

(2)制作したものが資産になることがある

看板、店舗のサイン、ウェブサイトの制作費のうちプログラムの部分は、金額と内容によって固定資産(構築物・器具備品・ソフトウェア)になります。単純に広告宣伝費として落ちるとは限りません。

判定は取得価額の話に戻ります(「いくらで買ったことになるのか」で、その資産の一生が決まる少額資産の線は3本ある)。

(3)交際費との境目を意識する

不特定多数に対する宣伝的効果を意図するものが広告宣伝費、特定の取引先への接待・贈答が交際費です(交際費か、会議費か、福利厚生費か)。同じ「販促費」でも、扱いは変わります。

3. 採用と教育

求人広告費、人材紹介手数料、研修費、資格取得費用。これらはいずれも支出時の損金です。

法人が有利なのは、役員自身の研修・資格取得費も出せることです。所得税基本通達36-29の2は、職務に直接必要な技術・知識を習得させ、免許・資格を取得させるための費用を、適正な範囲で非課税としています。個人事業主が「新しい資格の取得費は経費にならない」と言われるのとは、線の引かれ方が違います。

そして人件費については、税額から直接引ける制度があります。

賃上げ促進税制(中小企業向け)は、雇用者給与等支給額が前年度より

  • 1.5%以上増 → 増加額の15%を税額控除
  • 2.5%以上増30%
  • くるみん・えるぼし等の認定があればさらに5%上乗せ

中小企業向けの判定は「雇用者給与等支給額」=給与総額で行い、継続雇用者ベースではありません。人が増えただけでも要件を満たします。控除しきれない額は5年繰り越せます。

注意:教育訓練費の上乗せは令和8年度改正で廃止されました。「最大45%」という説明は、令和8年3月31日までに開始した事業年度の話です。詳細は 給与総額が1.5%増えていれば取りに行ける を参照してください。

4. 設備投資

設備は原則として減価償却ですが、中小企業には2つの制度があります。

中小企業投資促進税制 中小企業経営強化税制
根拠 措置法42条の6 措置法42条の12の4
事前手続 不要 経営力向上計画の認定が先に要る
特別償却 30% 即時償却(100%)
税額控除 7%(資本金3,000万円以下のみ 7%(3,000万円以下は10%)
対象の注意 器具備品は対象外。工具は測定工具・検査工具のみ 類型ごとに要件が違う

どちらも、税額控除は2つ合計で調整前法人税額の20%が上限、控除しきれない分は1年繰越です。

見落としやすい改正が2つあります。令和8年4月1日以後に取得する工具・器具備品は40万円以上が要件になりました。また経営強化税制は令和7年度改正でC類型(デジタル化設備)が廃止され、新類型「経営規模拡大設備」が新設されています。制度の中身は 設備を買って税金を減らす2つの制度 にまとめました。

5. 特別償却と税額控除、どちらを選ぶか

同じ制度でも、選び方で意味がまったく違います。

特別償却・即時償却 税額控除
何が起きるか 早く損金にする 税額から直接引く
総額 変わらない(繰延べ) 本当に減る
赤字の年 効果なし(欠損金が増えるだけ) 使えない(税額がないため)
償却費 先に取るので翌期以降が減る 翌期以降も通常どおり償却できる

総額が減るのは税額控除だけです。即時償却は「買った年に全額落ちた」という見た目のインパクトが大きいのですが、5年で見れば損金の合計は同じです。

選び方の目安:

  • 利益が毎年安定している会社は、税額控除のほうが有利になりやすい
  • 今期だけ突出して利益が出ている会社は、即時償却で山を削る意味がある
  • 赤字または税額が小さい会社は、税額控除を選んでも使い切れない

6. 収益不動産を買うという選択について

「利益が出たら収益不動産を買って減価償却で落とす」という話をよく聞きます。

税務の事実だけ書きます。

つまり減価償却による効果は繰延べであり、出口の売却まで含めて計算しないと損得は分かりません。物件そのものの収益性と借入条件の判断は税務の外の話なので、この記事では扱いません。個別の投資判断については、税理士としての助言の範囲を超えます。

7. 現場でやること

  1. 決算の3か月前に着地見込みを出す。利益が見えないと攻めの判断ができない
  2. 来期以降やると決めていた投資を前倒しできないか見る。やらないものを税のために作らない
  3. 設備を買うなら、計画認定が要る制度かどうかを先に確認する。経営強化税制は認定が後追いできない
  4. 給与総額が前年度を超えているか確認する。超えていれば賃上げ促進税制を検討
  5. 特別償却か税額控除かを、来期以降の利益見込みで決める
  6. 前払いの広告費は短期前払費用にできない前提で予算を組む

まとめ

  • 実効税率は約30%。1万円使って戻るのは3,000円、7,000円は出ていく
  • だから攻めの節税は回収できるかが主、税効果はおまけ。順番を逆にしない
  • 広告費は役務の提供を受けた時の損金。前払いは短期前払費用にできないことが多い
  • 制作物が資産になることがある。看板・サイン・ソフトウェア
  • 採用と教育は支出時損金。法人は役員自身の研修・資格取得費も出せる
  • 賃上げ促進税制は給与総額で判定。1.5%増で15%、2.5%増で30%、認定で+5%。教育訓練費の上乗せは令和8年度改正で廃止
  • 設備投資は投資促進税制(認定不要)と経営強化税制(認定が先)
  • 税額を本当に減らすのは税額控除だけ。上限は調整前法人税額の20%

この記事の主な根拠(出典)

  • 法人税法22条3項(損金の額に算入すべき金額)
  • 法人税基本通達2-2-14(短期の前払費用)/国税庁 質疑応答事例「前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用)」
  • 租税特別措置法42条の6(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除)/42条の12の4(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合)/42条の12の5(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)
  • 所得税基本通達36-29の2(技術の習得等をさせるために支給する金品)
  • 国税庁「令和8年度/令和7年度 法人税関係法令の改正の概要」
  • ※特別償却・税額控除の要件と適用期限は毎年改正されます
  • ※出典の各ページは2026年8月7日に確認しました。制度は改正されることがあります

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