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更新日 2026-07-26 節税・経費

小規模企業共済・iDeCoの「出口」|受け取るときいくら税金がかかる(10年ルール・19年ルール)

小規模企業共済もiDeCoも、掛けるときの節税ばかりが語られます。年間84万円、81.6万円が全額所得控除——たしかに強力です。

でも、この2つはいつか必ず受け取ります。そして受け取るときには課税されます

出口の設計を知らずに入ると、「20年積んだのに、受け取り方を間違えて数十万円多く払った」ということが起きます。しかも受け取ってからでは何もできません

さらに2026年(令和8年)1月から、iDeCoと退職金の間隔ルールが「5年」から「10年」に延びました。従来の常識が通用しなくなっています。

この記事の結論
– 小規模企業共済は受け取る理由で税金が変わる。廃業なら退職所得(もっとも有利)
65歳未満の任意解約一時所得。退職所得より不利になりやすい
240か月(20年)未満の任意解約は元本割れ。12か月未満は掛け捨て
– iDeCoは一時金=退職所得年金=公的年金等の雑所得、併用もできる
– 退職所得は(収入 − 退職所得控除)× 1/2 の分離課税。とても優遇されている
【改正】令和8年1月1日以後、iDeCo一時金を先に受け取ると、その後9年以内の退職手当等は退職所得控除が調整される(従来は4年)
– 退職金を先に受け取ってからiDeCoを受け取る場合は、従来どおり19年
– 死亡による受取りは所得税ではなく相続税(500万円×法定相続人の非課税枠)

掛ける段階の判断(どちらを先に、いくら)は小規模企業共済とiDeCo、どっちを先に・いくら掛ける?にあります。この記事は出口だけを扱います。

小規模企業共済——受け取る「理由」で変わる

小規模企業共済は、受け取る事由によって金額も税金も変わります

種類 主な事由 金額 税務上の扱い(一括の場合)
共済金A 個人事業の廃業、死亡 もっとも高い 退職所得
共済金B 65歳以上180か月以上掛けた(老齢給付) 高い 退職所得
準共済金 法人成りして、その法人の役員にならなかった等 退職所得
解約手当金(任意解約) 自己都合でやめる 低い(240か月未満は元本割れ 65歳以上=退職所得/65歳未満=一時所得
解約手当金(機構解約) 掛金を12か月以上滞納 低い 一時所得

いちばん有利なのは共済金A(廃業)です。同じ金額を積んでいても、任意解約とは受取額そのものが違います。

65歳未満の任意解約は「一時所得」

ここが最大の注意点です。

退職所得 一時所得
控除 退職所得控除(20年で800万円、30年で1,500万円) 特別控除50万円
課税 (収入 − 控除)× 1/2 (収入 − 支出 − 50万円)× 1/2
課税方式 分離課税(他の所得と合算しない) 総合課税(他の所得と合算する)

一時所得は総合課税なので、事業所得と合算されて累進税率がかかります。事業が黒字の年に任意解約すると、税率が跳ね上がります

しかも一時所得では「支出した金額」を引けますが、掛金は所得控除としてすでに使っているため、原則として控除できません。

「お金が要るから解約する」は、税務上いちばん損な出口です。

分割で受け取ると雑所得

共済金は、一定の要件(共済金の額、年齢)を満たせば分割受取りまたは一括と分割の併用が選べます。

受取方法 所得区分
一括 退職所得
分割(10年・15年) 公的年金等の雑所得
併用 それぞれの区分

分割は公的年金等控除が使えますが、公的年金と合算されるため、年金額によっては有利にならないことがあります。

死亡した場合は相続税

被共済者が亡くなって遺族が共済金Aを受け取る場合、所得税ではなく相続税の対象です(みなし相続財産)。

死亡退職金の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)が使えます。相続対策として意識されることもある部分です。

iDeCo——一時金か、年金か、併用か

受取方法 所得区分 控除
一時金(一括) 退職所得 退職所得控除
年金(分割) 公的年金等の雑所得 公的年金等控除
併用 それぞれ それぞれ

受給開始は60歳から75歳の間で選べます(加入期間が10年未満だと開始年齢が繰り下がります)。

一時金のほうが有利になることが多いのは、退職所得控除が大きく、しかも1/2課税・分離課税だからです。ただし他の退職手当等との重複調整(後述)で控除が削られると、この前提が崩れます。

退職所得控除の計算

勤続年数(加入年数) 退職所得控除額
20年以下 40万円 × 年数(80万円に満たないときは80万円)
20年超 800万円 + 70万円 ×(年数 − 20年)

※1年未満の端数は切り上げ。障害が原因で退職した場合は100万円加算

そして、

退職所得 =(収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2

この所得に対して分離課税で税率がかかります。

例:30年掛けて2,000万円受け取る

項目 金額
退職所得控除 800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円
課税される退職所得 (2,000万 − 1,500万)× 1/2 = 250万円
所得税・住民税(概算) 約40万円前後

2,000万円受け取って税金が約40万円。非常に優遇されています。掛けるときにも所得控除を受けているので、往復で得をする設計です。

※令和4年分以後、勤続年数5年以下の退職手当等(役員以外)については、控除後の金額のうち300万円を超える部分に1/2課税が適用されません。短期の受取りには注意が必要です。

【重要な改正】10年ルールと19年ルール

複数の「退職手当等」を受け取ると、重複する期間の退職所得控除が削られます。iDeCo・小規模企業共済・会社の退職金は、どれも退職手当等です。

この「どこまで遡って見るか」が、令和8年1月1日から変わりました

今回受け取るもの 前に受け取ったもの 遡って見る期間
退職金・小規模企業共済など iDeCoの老齢一時金令和8年1月1日以後に受けたもの) 前年以前9年内【改正・従来は4年】
退職金・小規模企業共済など iDeCoの老齢一時金(令和8年1月1日に受けたもの)、その他の退職手当等 前年以前4年内
iDeCoの老齢一時金 他の退職手当等 前年以前19年内(変更なし)

言い換えると——

  • 「iDeCoを先に受け取って、5年空けてから退職金」という設計はもう使えません。10年空ける必要があります(令和8年1月1日以後にiDeCoを受け取る場合)。
  • 「退職金を先に受け取って、その後iDeCo」は、もともと19年空ける必要があり、こちらは変わっていません。

期間内に前の受取りがあると、重複する勤続(加入)期間に対応する退職所得控除が差し引かれます。控除がゼロに近くなることもあります。

個人事業主にとっての意味

会社員から独立した人は、次の3つを持っている可能性があります。

  1. 会社の退職金(もう受け取った)
  2. iDeCo(加入中)
  3. 小規模企業共済(加入中)

この3つの受取り順と間隔が、そのまま税額を左右します。受け取る数年前から設計してください。受け取ってからでは調整できません。

この記事で扱う範囲について
この記事は受け取るときの所得税・住民税の一般的な取扱いを扱っています。重複期間の調整(いわゆる10年ルール・19年ルール)は、受け取る順序・年齢・加入期間・過去の退職手当等の有無によって計算が変わる、税務のなかでも複雑な部分です。実際に受け取る前に、必ず国税庁の最新の案内で確認するか、個別にご相談ください。共済金の受取事由に該当するか、金額はいくらか、分割受取りが選べるかは、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(小規模企業共済)および国民年金基金連合会・運営管理機関(iDeCo)の所管です。iDeCoの運用商品の選択・変更については、この記事では扱いません(投資助言は行っていません)。

出口の設計——3つの原則

① 「廃業」という事由を無駄にしない

小規模企業共済の共済金Aは、廃業したときにしか出ません。任意解約とは金額も課税も違います。事業をやめるなら、そのタイミングで受け取ってください(事業をやめるときの税務)。

法人成りする場合も、個人事業の廃止として共済金Aまたは準共済金の対象になり得ます。手続きの順序で結論が変わるので、法人化の前に確認してください(個人と法人、どちらが得?)。

② 受け取る年の他の所得を落とす

退職所得は分離課税なので他の所得と合算されませんが、一時所得・雑所得は総合課税です。65歳未満の任意解約や分割受取りを選ぶなら、所得が低い年に合わせるほうが有利です。

経営セーフティ共済の解約手当金は事業所得なので、同じ年にぶつけると最悪です。出口の年は分けてください(経営セーフティ共済)。

③ 間隔を先に決める

前述のとおり、受取りの順序と間隔で退職所得控除が変わります。60歳・65歳・70歳のどこで何を受け取るかを、紙に書いて並べてください

よくある質問(FAQ)

Q. 小規模企業共済を20年以上掛けています。まだ現役ですが、受け取れますか。
65歳以上で180か月以上掛けていれば、廃業しなくても共済金B(老齢給付)として受け取れます。65歳未満なら任意解約しかなく、一時所得になります。

Q. 元本割れするのは何年までですか。
任意解約による解約手当金は、掛金納付月数が240か月(20年)未満だと元本割れします。12か月未満は0円です。ただし共済金A・Bや準共済金は、事由に該当すれば掛金以上になります。

Q. 途中で掛金を減額しました。不利になりますか。
掛金区分ごとに納付月数が管理されるため、計算が複雑になります。減額した分の期間は、減額後の金額で数えられる点に注意してください。

Q. iDeCoは一時金と年金、どちらが得ですか。
一般には一時金が有利です。退職所得控除が大きく、1/2課税・分離課税だからです。ただし他の退職手当等との重複調整で控除が削られる場合、年金(公的年金等の雑所得)のほうが有利になることがあります。金額と時期が決まった段階で試算してください。

Q. 掛金を払った分は、受け取るときに差し引けますか。
できません。掛金はすでに小規模企業共済等掛金控除として所得控除を受けています。二重には引けません。一時所得の「支出した金額」としても、原則として控除できません。

Q. 受け取るときに手続きは要りますか。
一時金を受け取る際は「退職所得の受給に関する申告書」を提出します。これを出さないと一律20.42%の源泉徴収になり、確定申告で取り戻す手間が生じます。必ず提出してください。

Q. iDeCoの一時金を先に受け取り、10年後に小規模企業共済を受け取れば控除が復活しますか。
令和8年1月1日以後に受けたiDeCo一時金については、前年以前9年内が調整対象なので、10年以上空ければ調整されません。ただし年齢・加入期間の条件があり、実際に空けられるかは別問題です。受取り可能年齢から逆算して設計してください。

Q. 掛けすぎで所得控除を使い切れていません。
所得控除は繰り越せないので、その年の所得が小さいと消えます。所得が低い年は掛金を減額するのも合理的です(節税しすぎると詰む場面)。

まとめ

  • 小規模企業共済は受け取る事由で金額も課税も変わる。廃業(共済金A)がもっとも有利
  • 65歳未満の任意解約は一時所得(総合課税)。所得が高い年にやると損
  • 240か月未満の任意解約は元本割れ、12か月未満は0円
  • iDeCoは一時金=退職所得年金=雑所得。一般には一時金が有利
  • 退職所得は(収入 − 退職所得控除)× 1/2分離課税。20年超は800万円+70万円×超過年数
  • 【令和8年1月1日〜】iDeCo一時金を先に受け取ると、その後9年以内の退職手当等は控除が調整される(従来は4年)
  • 退職金が先→iDeCoが後は19年(変更なし)
  • 死亡による受取りは相続税(500万円×法定相続人の非課税枠)
  • 「退職所得の受給に関する申告書」を必ず出す
  • 受け取る数年前から順序と間隔を設計する
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法30条・31条(退職所得、退職手当等とみなす一時金)/同施行令72条3項(小規模企業共済契約に基づく一時金等を退職手当等とみなす)
  • 所得税法施行令69条・70条(退職所得控除額の計算、前に支払を受けた退職手当等がある場合の勤続期間の重複排除)
  • 令和7年度税制改正(所得税法等の一部を改正する法律・令和7年法律第13号)。確定拠出年金の老齢給付金として支給される一時金を受けている場合の遡及期間を「前年以前4年内」から「前年以前9年内」に延長。令和8年1月1日以後に支払を受ける退職手当等について適用。令和8年1月1日前に受けた一時金は従来どおり4年内
  • 所得税法30条5項(勤続年数5年以下の退職手当等に係る2分の1課税の制限。300万円超の部分)
  • 所得税法34条(一時所得。特別控除50万円、2分の1課税、総合課税)
  • 相続税法3条1項2号・12条1項6号(死亡退職金のみなし相続財産、500万円×法定相続人の数の非課税限度額)
  • 小規模企業共済法(共済金A・B、準共済金、解約手当金の区分。65歳以上の任意解約による解約手当金は退職所得)
  • 国税庁 タックスアンサー No.1420/No.2732/No.2735、令和8年分 源泉徴収のあらまし
  • ※2026年時点の制度です。受け取る前に必ず最新の取扱いを確認してください

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この記事は「5 お金を出す節税は、出口まで見てから」の詳細です。

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