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更新日 2026-07-26 経理と確定申告第37回

売上1000万円を超えそう。消費税の課税事業者になるタイミングと、その前にやること

事業が伸びて、年の売上が1,000万円に届きそう。うれしい反面、「消費税が来る」という話だけは聞いたことがある——という状態で相談に来る方が多い論点です。

不安の中身は、たいてい3つに分かれます。いつから納めるのか。いくら取られるのか。何をしておけばいいのか。

最初の答えははっきりしています。今年1,000万円を超えても、今年の消費税はかかりません。効いてくるのは2年後です。

この記事の結論
– 判定は前々年(基準期間)の課税売上高。2026年に超えたら2028年から課税事業者
– もうひとつ特定期間(前年1〜6月)の判定がある。ただし課税売上と給与の両方が1,000万円超のときだけ
– 免税事業者だった年の売上は税抜きにせず、そのままの金額で1,000万円を判定する
すでにインボイス登録している人は、もう課税事業者。1,000万円判定は納税額の計算方法に効く
1,000万円超で課税事業者になる年は「2割特例」が使えない——ここが最大の落とし穴
– 簡易課税を使いたいなら、適用したい年の前年12月31日までに届出

いつから課税事業者になるのか

消費税は「今年の売上が1,000万円を超えたから今年から」ではありません。2年前を見るという独特のルールで動きます。

用語 個人事業主の場合 判定
基準期間 前々年(1月〜12月) 課税売上高が1,000万円超なら、その年は課税事業者
特定期間 前年の1月1日〜6月30日 課税売上高が1,000万円超かつ給与等支払額も1,000万円超なら課税事業者

時系列にするとこうなります。

できごと
2026年 課税売上高が1,100万円になった(この年は免税のまま)
2027年 基準期間は2025年。まだ1,000万円以下なので免税
2028年 基準期間は2026年=1,100万円 → 課税事業者。この年の取引から消費税がかかる
2029年3月31日 2028年分の消費税を申告・納付

超えた年から実際に納めるまで、2年以上の猶予があるということです。この間に準備できます。

特定期間の判定は、上の表を1年前倒しにすることがある救済のない側の話ですが、課税売上高と給与等支払額の両方が1,000万円を超えたときだけ発動します。人を雇っていない個人事業主なら給与等支払額が小さいので、この判定で課税になることはまずありません。

判定に使う「課税売上高」の数え方

ここで間違えやすい点が2つあります。

1つめ。免税事業者だった期間の売上は、税抜きにしません。 課税事業者なら「税抜きの売上」で判定しますが、免税事業者は消費税を預かっていない扱いなので、受け取った金額そのままで1,000万円を判定します。1,080万円の入金があれば、1,000万円で割り戻さず1,080万円として数えます。「税抜きにすれば1,000万円以下だと思っていた」は通りません。

2つめ。すべての収入が入るわけではありません。

入るもの 入らないもの
商品の販売、サービスの提供、制作物の納品 給与(雇われて得たもの)
事業用資産の売却 受取利息、株式の配当
店舗・事務所・駐車場の賃料 住宅の家賃(非課税)
輸出免税の売上(海外向けも含める) 保険金、損害賠償金、補助金・助成金

住宅の家賃収入がある人は要注意です。住宅家賃は非課税なので判定に入りませんが、店舗や駐車場の賃料は入ります。不動産と事業を両方やっている場合、ここの仕分けで結論が変わります。

インボイス登録済みの人には、別の意味がある

インボイスに登録している人は、すでに課税事業者です。1,000万円を超えたかどうかで課税事業者になるかは変わりません。

ではこの判定は何に効くのか。納税額の計算方法です。

2割特例が使えるのは、「インボイス登録がなければ免税事業者だった人」だけです。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えて課税事業者になる年は、2割特例の対象から外れます

2割特例は「預かった消費税の2割だけ納める」という強力な軽減措置です(インボイス登録したら消費税も申告?2割特例での申告)。これが使えなくなると、納税額が一気に増える可能性があります。

具体例で見ます。課税売上1,100万円(税抜1,000万円、預かった消費税100万円)、課税仕入が300万円(うち消費税約27万円)というケース。

計算方法 納税額の目安 使えるか
2割特例 100万円 × 20% = 20万円 1,000万円超の年は使えない
簡易課税(第5種サービス業・みなし仕入率50%) 100万円 × (1−50%) = 50万円 前年末までの届出が必要
本則課税 100万円 − 27万円 = 約73万円 届出不要(インボイスの保存が必要)

同じ売上でも20万円と73万円では、事業の手残りがまったく違います。何もしなければ本則課税になるので、放置がいちばん高くつく構図です。

なお2割特例は2026年9月30日を含む課税期間までの措置なので、個人事業者にとっては2026年分が最後の適用年です(2026年時点)。1,000万円を超えていない人も、来年からは選択肢が2つに減ります。

簡易課税の届出は「前年12月31日まで」

いちばん実務的に重要なのがこの期限です。

消費税簡易課税制度選択届出書は、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに出す必要があります。個人事業主なら前年の12月31日です。2028年分から簡易課税を使いたいなら、2027年12月31日まで

条件 内容
適用要件 基準期間の課税売上高が5,000万円以下
届出期限 適用したい年の前年12月31日まで
継続義務 2年間は本則に戻せない
計算 預かった消費税 × (1 − みなし仕入率)。業種で40〜90%

「決算を締めてから有利なほうを選ぶ」ことはできません。先に決めて、先に出すしかない制度です。だから、1,000万円を超えた年の年末に一度シミュレーションしておく——これが2年の猶予の使い道です。

ひとつ経過措置があります。2割特例を適用した年の翌年中に簡易課税選択届出書を提出すれば、その提出した年から適用できます。2026年分で2割特例を使った人は、2027年中に出せば2027年分から簡易課税に入れます。この救済は2割特例を使った人限定です。

本則と簡易のどちらが有利かは、経費に占める課税仕入の割合で決まります(2割特例・簡易課税・本則、どれで消費税を計算する?)。外注が多い事業は本則、人件費や自分の労力が中心の事業は簡易が有利になりやすい、というのが大まかな傾向です。

課税事業者になる前にやる5つのこと

超えた年から実際に納めるまでの約2年を、こう使います。

  1. 超えた事実を記録しておく。「2026年の課税売上高=○○円 → 2028年から課税」と1行メモを残す。2年後の自分は必ず忘れています
  2. 前年12月までに計算方法を決める。本則・簡易のシミュレーションを1回やる。届出期限は待ってくれません
  3. 本則を選ぶなら、仕入先のインボイス対応を確認する。登録番号のない相手からの仕入は、原則として仕入税額控除ができません
  4. 価格を見直す。消費税は「預かって納める」建前ですが、免税のときは手元に残っていたものです。実質的な値下げになる分をどうするか、取引先との交渉時期を決めておく
  5. 納税用のお金を分ける。預かった消費税は自分のお金ではありません。所得税・住民税と合わせた積立の考え方は稼いだお金、いくら残せば税金で困らない?にまとめています

とくに5つめは効きます。消費税の納期限は3月31日(所得税より2週間遅い)。所得税・住民税・国保・個人事業税と重なる時期に、もう一本大きな支払いが増えます。

中間申告という「途中の請求」

課税事業者になって納税額が一定を超えると、翌年から中間申告が始まります。前年の消費税額(国税分)に応じて回数が決まります。

前年の消費税額(国税分) 中間申告の回数
48万円以下 なし(任意の中間申告制度あり)
48万円超〜400万円以下 年1回
400万円超〜4,800万円以下 年3回
4,800万円超 年11回

所得税の予定納税と同じく、前払いです。2年目以降は「3月に確定分、途中に中間分」という資金繰りになると考えておいてください。

法人化で「免税に戻る」は今も使えるのか

かつては、売上1,000万円を超えたタイミングで法人化すると、新設法人には基準期間がないため設立から2期は免税——という組み立てが定番でした(資本金1,000万円未満の場合)。

現在もこの仕組み自体は残っていますが、インボイス登録をするなら意味がありません。登録した時点で課税事業者になるからです。取引先が事業者中心で、インボイスを求められる立場なら、免税リセットは選べません。

法人化を売上の水準で考えるときの全体像は売上いくらから法人化がトク?「800万・1000万の壁」の正体を参照してください。消費税だけで法人化を決めない、というのが要点です。

よくある質問(FAQ)

Q. 今年1,000万円を超えました。今年の分の消費税を納めますか。
納めません。今年が基準期間になるのは2年後です。ただし特定期間(前年1〜6月)の課税売上高と給与等支払額がどちらも1,000万円を超えていた場合は、1年前倒しで課税事業者になります。

Q. 届出書はいつ出しますか。
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えたことが分かった時点で、消費税課税事業者届出書(基準期間用)を速やかに提出します。出し忘れても課税事業者になる事実は変わらないので、「出していないから免税」ではありません

Q. 1,000万円を1回超えただけで、翌年は下がりました。
判定は年ごとに行います。2026年が1,100万円で2027年が900万円なら、2028年は課税事業者、2029年は免税事業者に戻ります。行ったり来たりします

Q. 免税に戻った年に、インボイスの登録はどうなりますか。
登録を続けている限り課税事業者のままです。登録をやめる(取消しを求める)には届出が必要で、効力の発生時期にも決まりがあります。取引先への影響が大きいので、インボイスに登録すべき?判断フローで立場を整理してから決めてください。

Q. 開業1年目・2年目はどうなりますか。
基準期間そのものが存在しないので、原則として免税です(特定期間の判定と、インボイス登録をした場合を除く)。

Q. 消費税は経費になりますか。
税込経理をしている場合、納付した消費税は租税公課として必要経費になります。税抜経理なら預り金の精算なので経費にはなりません。どちらの経理方法を選ぶかは、課税事業者になる年に決めます。

Q. 売上に消費税を上乗せして請求していませんでした。それでも納めるのですか。
納めます。消費税は「請求書に書いたかどうか」ではなく取引が課税取引かどうかで課されます。上乗せしていなければ、受け取った金額の中に消費税が含まれているものとして計算されます。課税事業者になる前に、価格の見直しが必要なのはこのためです。

まとめ

  • 判定は前々年(基準期間)。2026年に1,000万円を超えたら2028年から課税事業者
  • 特定期間(前年1〜6月)は課税売上と給与の両方が1,000万円超のときだけ効く
  • 免税だった年の売上は税抜きにしない。受け取った金額そのままで判定する
  • 1,000万円超で課税事業者になる年は2割特例が使えない。何もしないと本則課税になる
  • 簡易課税の届出は前年12月31日まで。決算後に選び直すことはできない
  • 猶予の2年で、計算方法の決定・仕入先の確認・価格の見直し・納税資金の分離を済ませる
この記事の主な根拠(出典)

  • 消費税法9条(小規模事業者に係る納税義務の免除)/9条の2(特定期間による判定)/37条(簡易課税制度)/42条・43条(中間申告)
  • 消費税法57条(課税事業者届出等)、同施行令20条(簡易課税制度選択届出の時期)
  • 所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)附則51条の2ほか(いわゆる2割特例・適用対象期間および簡易課税選択の特例)
  • 国税庁タックスアンサー「納税義務の免除」「特定期間の判定」「簡易課税制度」「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)」
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です。2割特例は2026年9月30日を含む課税期間までの措置で、個人事業者は2026年分が最後の適用年です

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